うまくすると薪の消費量が半分になる薪ストーブの焚き方

今の時期だとカエデの樹液をを煮詰めたり、台所にお湯を供給したり、大活躍中の薪ストーブなのですが、薪の燃やし方にはちょっとしたコツがあって、それを知ると、消費する薪の量を半分くらい節約できたりします。
また、薪ストーブだけでなく、キャンプなどで使うカマドでの煮炊きでも同様。燃費も良くなるし、火持ちも良くなります。ぜひ、試してみてください。

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ところで、自動車のエンジンの場合「エンジンの燃焼効率がいい」ということ「エンジンがかかりやすい」ということは、相い反する関係にあります。
一般に燃焼室がコンパクトで圧縮比が高い方が、燃焼効率では優れているのですが、圧縮比の高いエンジンは寒い朝、あるいはバッテリーが弱っていたりするとセルモーターが回りにくくエンジンがかかりにくかったりします。

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⇧左手で圧縮を抜くためのデコンプレバーを握りながら、右手のヒジを固定して体重を載せ、圧縮の高く、かかりにくい天ぷら廃油ディーゼルのクランク棒を回す娘。


で、エンジンの燃焼と似たことが薪ストーブの燃焼にも言えそうなのです。
学校のキャンプ教室などで教わる焚き火への火をつけ方は、まず、キャンプファイヤーの用に薪を組み、その一番下に丸めた新聞紙を置き、その周囲に焚き付け用の細い枝をのせ、一番下の新聞紙に火をつけるという方法ではないでしょうか?
この方法、(風のある野外でも)火が付きやすいというメリットはあるのですが、残念ながら、このつけ方だと不完全燃焼を起こしている部分が多く、燃焼効率も悪いので燃費も悪く、薪の持つエネルギーを十分に活かすことのできていない着火方法なのでした。

燃費の良い薪の燃やし方の基本は「上から下へ」です。これは韓国の自作ストーブの大見せびらかし大会「私はストーブだ!」の講演でソンウォンさんから教えていただきました。点火の方法に少しコツが必要ですが、これだと燃費もよく、煙も少なく、火持ちも良くなります。
正確に言うと、「上から下へ」ではなく「排気口側に近い方から火を付け、だんだんと吸気口側に延焼させていく」ということになります。
「排気側に近い方に火を付け、火が徐々に吸気口側に移動していく」と聞いてピンときた方がいたとしたらそれは鋭い! そう、ロケットストーブのあの燃やし方と一緒なのでした。


文章だけだと分かりにくいので、わが家で毎朝やっている作業を写真とともに順番に解説させていただきます。


■薪の持つエネルギーを最大限引き出す薪の組み方と火の付け方■

まず、前日の残りであるオキを灰の中から救出します。薪を置くのに邪魔にならないところに移動します。

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⇧これをやらないと下から火がついてしまうのと、これをやればマッチやライターは必要ありません。

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次に、ストーブの燃焼室内に、まず太めの薪を並べます。

そしてさらにその上に、一段目よりも少し細い薪を載せます。

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⇧縦横交互に積んでいますが、二段目も一段目と揃えて横に並べてもかまいません。

 

さらにその上に、細めの枝を重ねます。

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⇧一番下に太い薪、その後だんだん上に載せるソダを細くしていきます。

 

最初によけておいたオキを組んだ薪の一番上に載せます。オキがない場合は、スターターを使って火をつけます(後述)。

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⇧オキは分散させず、なるべくまとめておくと熾り(おこり)やすくなります。

 

オキが熾るまでの間、ガラスの掃除をします。濡らしたウエスに灰をつけ、とりあえずは濡れた灰をガラス面全体に分散させるように置き、その後、それをコンパウンドのようにして少し力を入れてこすります(この方法はウチのお隣でやはり薪ストーブを焚く小説家、樋口明雄さんに教えていただきました)。

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⇧濡れた灰は強アルカリなので、頑固な汚れも比較的簡単に落ちます。

最後の仕上げは新聞紙。

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⇧新聞紙に印刷されているインクの成分が油を分解し、ガラスにツヤを与える、と言われています。

 
そうこうするうちに、上に載せたオキが熾(お)きて来るので、そのタイミングでひと息、火吹き竹で風を送ると、ゴーという音共に炎が立ちあがります。

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⇧火吹き竹は節を抜き、出口側の節に3ミリ程度の穴をあけます。これも原理はベルヌーイ。細くても流速のある空気の動きがあると、その周囲の空気も引き込まれ、大量の空気を送るこむことができるのです(フイゴやウチワの比ではないので、木炭を熾すときなどもぜひ使ってみてください)。出口が絞られているので、ひと吹きで長い時間、風を送ることができるし、頭も痛くなりません。

 

こんな感じで火が安定したOK。 

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⇧しばらくは吸気口を全開にして、燃やします。

 オキが残っていたとはいえ、ストーブ本体は冷えているので、燃焼室が高温になるまではエア全開で燃やします。

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⇧ウチは煙突のパイプに温度計を設置していて、煙突の温度が100度Cになるまで全開で焚きます。

ストーブ本体が温まり、排気管の温度が100度を超えたら、吸入口を絞ります。

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⇧ウチのストーブは、燃焼室の上に、小さな穴がたくさん空いたパイプが仕込まれていて、そこから二次燃焼用の空気が供給され、吸気口を全閉にしても、高温のパイプで加熱された二次空気が薪から霧化したガスと混ざり、燃焼してくれます。

二次燃焼のシステムがないストーブの場合は、ストーブ本体&燃焼室の温度が下がらないくらいに燃焼をコントロールし、吸気口の開度を調整してください。

二次燃焼システムがあるストーブの場合は、燃焼室の温度が高温になっていれば、その後は、一次空気の吸気口をかなり絞った状態でもストーブは温度を保ったまま、燃焼してくれます。

 

ポイントは、下の方に太めの薪を組み、上にいくに従って細くしていき、できるだけ上(排気口に近い位置)から燃やす、ということ。

下から焚いてしまうと、上にのっている薪は加熱され、それによってバイオガス(燃焼ガス)を出すけれども、それを燃えることができずに排気されてしまい、煙道で冷えれば煙突内壁でタールになってしまい、薪から気化したせっかくのバイオガスを未燃焼のまま排出してしまうことになってしまっている、ということだと思います。

また、二次燃焼システムのある薪ストーブでは、できるだけ二次燃焼用の空気の吐出口近くに着火用の炎を用意してあげることもポイントのように思います。そのためには二次燃焼付近にときどき、火持ちの良い薪を火種として一本、供給してあげるといい感じで二次燃焼してくれます。

長時間燃やしたいという場合は、下の太い薪に燃え移る前に、タキツケか、それよりも少し太いくらいの燃えやすい枝を追加すると、下の太い薪から出るバイオガスも燃焼しつつ燃えるので、タキツケほどの細い枝なのに火持ちがしたりします。

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⇧二次燃焼はガスが燃えるので、青白い炎で燃えます。パイプに二次燃焼用空気口があいているのが分かるでしょうか?

■オキがない場合のスターターを使った火の付け方■
この焚き方で焚くと、火持ちがよく、たいてい朝までオキが残っているので、スターターをほとんど使わないのですが、それでも留守にしていたときなど、火が完全に落ちてしまうこともあります。
そんなときに備えて、スターターをつくっておくことをオススメします。スターターの材料は新聞紙や段ボール紙でもいいのですが、火持ちの良いスターターを用意しておくと、時間的な余裕ができて容易に着火することができます。

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⇧ウチで使っているスターターは、チェーンソーのカス(自動カンナの短いカンナクズでもOK)に、天ぷら廃油と少量の灯油を染み込ませたもの。天ぷら廃油を添加することで火持ちがよく、灯油臭さも少なくて便利です。これを缶に入れておいて使っています。

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⇧お気に入りのSOTOのライターで点火。

スターターに火が付いたら、火の上に細い枝を重ねていき、火を大きくしていきます。

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⇧この際、慌ててたくさん細枝をくべると、空気の入りが悪くなってしまうので、火の様子を見ながら、火の上に重ねていきます。
火が安定したら、燃焼室の温度が上がるまで、吸気口は全開で焚き、温度が十分にあがり、一次空気を全開で入れなくても薪が加熱されてガスが発生し、それが燃えるようになればOKです。

今年は特に暖かい冬だった、ということもあるけれども、おかげで薪はかなり節約できました。この焚き方を始めた年は、その前年の半分くらいの消費量で済んだのですが、今年はそれよりもかなり少ないので、3分の1くらいだったかもしれません。

燃焼効率がいいからか、ススやタールの溜まりも少なく、煙突掃除もここ3年くらいしていません。薪ストーブを使わる方は、ぜひ試してみてください。

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