前回の蜂群崩壊症候群以上のミツバチの大減少が米国で起こってしまっているようです。
以下は、その記事を読んでみての、ニホンミツバチ愛好者としての、私見です。
セイヨウミツバチに関してはゲノム解析がかなり進んでいて、コロニー減少の原因が分かれば、それに関連する遺伝子を特定し、遺伝子操作(あるいは交配)による品種改良が可能な時代になっています。
今や家畜のような存在であり、受粉昆虫(ポリネーター)として役割が確立され、経済の一翼を担っているので、セイヨウミツバチがそうした操作を阻止するのは難しいことのように思われます。
一方、トウヨウミツバチの亜種であるニホンミツバチも100コロニー以上の個体で、全ゲノム解析が行われています。
ゲノム解析により、中央北部(山梨、長野はここにはいります)、中央南部(岐阜以南)、南部(主に九州)の3つの地理的変異種に分けることができ、ヘギイタダニに耐性のある遺伝子の特定などが行われつつあります。
そんなわけで、趣味で和蜂の養蜂を行う人が増えていますが、ゲンジボタル同様(いや全ての野生生物においてですが)できるだけ遠距離の移動は控えていただきたいです。
本来であれば、野生生物の遺伝子の進化(時間変化)は、淘汰による変化がベースであるべきで、ヒトがメントールや蟻酸などの薬物をつかって人為的にアカリンダニを忌避することは、淘汰による変化で耐性のある遺伝子群が増えることを妨害してしまっていることになってしまうようにも思います。
ただし、薬物などを使って維持されたコロニーからは女王やオス蜂を自然群との混生の可能性がある蜂柱に飛び立たせない処置をしているのであればかまいません。
ニホンミツバチは在来種であることから、自然群も存在するわけで、セイヨウミツバチのようにゲノム操作をしてしまったり、人為的に薬物を投与したり、砂糖水などの給餌をし、セイヨウミツバチのように家畜化してしまっていいのか?
そのあたりは、目先のコロニーの存亡に囚われすぎず、ニホンミツバチは、在来の野生種ながらもヒトとの共生を果たしている奇跡的ともいえる稀少なハチと考えてもらえたらありがたい……、と思っています。
●遺伝子変異のスピードについて追記●
我々ヒトは、生まれてから数年以上経過しないと子どもを産むことができません。現代は晩婚化や少子化で、世代交代による遺伝子変化のスピードはもっと遅くなっています。
一方ミツバチたちは、一回の結婚飛行で複数のオスの精子を受け入れることが可能だったりします。その上、1シーズンに1万個以上(洋蜂の場合は20万個以上)の卵を産みます。さらにその卵から孵る多くの個体はメスで、それらのメスは緊急時には無性生殖でも次の世代の成虫を生み出すことができたりします。しかも無性生殖の場合に生まれてくる成虫はすべてオスであり、近親交配により遺伝子の多様性が損なわれない仕組みが構築されています。
遺伝子変異のスピードということでいうと、非常に優れたシステムの中で、環境変化などへの遺伝子レベルでの追従性を保っていたりします。
一方ヒトは、環境変化に対して、脳を発達させることで対処してきました。なのでこのあたり生理的に理解しにくい部分があるようにも思われます。
虫の場合は、遺伝子の多様性や淘汰による遺伝子変異のスピードで環境の変化に対応していたりするので、ヒトと共生する野生種に関しても、家畜でなく自然の生態系の中に遺伝子を紛れ込ませる以上は、そのあたりのことを考慮に入れて飼育する必要があるように思っています。