アイミーブ突然死・駆動用バッテリーの交換・その2「部品取り車からバッテリーを降ろす」からの続きです。
こんなことはあんまり書きたくないことなんだけど面倒臭い世の中になってしまったので書いておきます。アイミーブの駆動用電池は電圧330V、しかも放電効率に優れたリチウム電池なので、大電流をドカンと流すことができます。また、電気は目に見えません。そんなわけで、ここで紹介する作業は、誤った作業をすると感電死することがあるような作業です(とはいえ、チェーンソーを使った伐採や薪づくりなどにも同じことが言えるわけですが)。
地球の生態系はいま瀕死の状態にあります。でも、SNSが発展したおかげで、政府や大企業などの大きな組織に依らない個人の取り組みが地球環境の改善に大きく貢献する可能性もあるように思っています。
いま地球上には膨大な数の自動車が動いています。環境負荷の小さな暮らし方を模索する上で個人レベルでも、中古のソーラーパネルを使い、中古の電気自動車を走らせることができたとしたら、ことによると良い方向への大きな変化のキッカケになるかも知れません。そんな思いから、電気自動車に使われていて廃棄されることになってしまった廃バッテリーの有効利用の方法を考えたいと思いました。
そんなわけで、このブログに書かれていることにたとえ誤りがあり、それに起因する事故が起きても、申し訳ありませんが責任は取れません。この先を読み進むにあたっては、そのことを了承いただいた上でお願いします。
またこのブログは、わたなべ個人による偏見に満ちたブログです。上記のことに了承できない方、誹謗中傷を日々の暮らしのはけ口にしている方は、申し訳ありませんが、この先は読まないでください。
以上、自分のことを自分で判断して生きる、という暮らし方をしている人たちにとっては、とてもつまらないことを書いてしまいました、スミマセン。
■これまでの経緯(概略)■
86歳の母が愛車としていた電気軽自動車(アイミーブ)のバッテリー残量が、前日までは満充電近くだったのに、翌朝、突然ゼロになってしまっていたのでした。
ディーラーに電話をしたら、すぐにこちらに持ってきて下さいとのことだったので、レッカー車を手配して家から30㎞離れたディーラーに運び込んだところ、駆動用バッテリーのセルに異常があり駆動用バッテリーの交換が必要とのこと。バッテリーの保証期間を過ぎてしまっているので交換は有償で、駆動用バッテリー代や工賃などを含め費用は概算で110万円になります、とのことでした。前日までなんの支障もなく動いていたクルマが、ある朝、動かなくなってしまい、その修理代に110万円かかります、というのはなかなか納得のいかないことでもあり、40万円で購入した中古車だったこともあって、このクルマの修理に110万円を掛けるということは我が家の逼迫する家計からはできないことでした。とはいえ、環境負荷の小さな自動車ということで購入した電気自動車が製造されてからわずか10年ちょっとである日突然廃車になってしまうというのは、本来の存在意義からすると本末転倒、地球に優しいということとは逆の結果になってしまいます。
いろいろ考えた末、同じ型式の事故車から駆動用バッテリーを(友達に手伝ってもらって)降ろし、それをディーラーに持ち込み、それに載せ換えてもらうことにしたのでした。おかげで費用は1回分の載せ換え工賃(と手伝ってくれた友達への薄謝)だけ、ディーラーに払ったのは7万5000円弱(中古駆動用バッテリーの費用を除く)で収まりました(そのあたりの詳しい経緯は「アイミーブ突然死」や「事故車からバッテリーを降ろす」を参考にして下さい。
こうしたケースの場合、壊れた方の駆動用バッテリーは廃棄にお金がかかる、とのことだったので、それを引き取らせてもらい、なんとか有効に使う方法がないものか考えてみることにしました。ちなみにバッテリーが保証期間内で、無償で交換してもらった場合は、バッテリーは譲り受けることはできないとのことでした(検査や検証をしているということなのかもしれません)。
故障した電気自動車の駆動用バッテリー(リチウムイオンバッテリー)の使い方には、いくつかの方法があると思います。
ひとつは、故障箇所を発見し、それを直して電気自動車用のリビルトバッテリーとして再使用する方法。これにはその電気自動車を作ったメーカーの協力が必要です。最初に考えたのはこの方法で、治験車として詳しいレポートを提供するので技術的なところなどをサポートしてもらえないかと、三菱自動車の加藤隆雄CEOに直訴したのですが、断られてしまいました。
もうひとつは、駆動用バッテリー本体内部の各セルを取り出し、それを家庭用などの太陽光発電充電用電池として使用する方法です。
電気自動車用の駆動用バッテリーは高性能なので、家庭用の太陽光発電のオフグリッド電源の蓄電用として使えそうなのです。
あるいはもうひとつの方法として、太陽光で発電した電気を一度、電気自動車の駆動用廃バッテリーに蓄えることで、太陽光発電を使った電気自動車の充電システムをつくるということもできそうです。
というのも、電気自動車の充電には、最低でも600W以上の安定した充電電流が必要で、いまわが家で行っている太陽光パネルから(パワコンの停電モードを使って)直接充電する方法だと、太陽に雲が一瞬でもかかった際、電源が切れてしまいます。30秒後に自動リセットできるようにはなったのですが、それでも効率的とは言えず、時間もかなりかかってしまうのでした。その点、サブバッテリーによるアシストがあれば、晴れ時々曇りの日にも途中で途切れることなく効率よく充電が可能だったりするはずです。
いまや、この手の技術の先進国である中国では、個人使用を前提としたBMS(リチウムBatteryをManagementするとためのSystem、その頭文字でBMS)やハイブリッドインバーター(太陽光で発電した電気の使っていない余剰分をリチウム電池に蓄え活用するなどの多機能を備えた機器)などが数多く製造されていて、地球の生態系を大切に思い、環境負荷をできるだけ少なく暮らしたいという世界中の人々の間で静かな(しかしかなり熱い)視線が送られているのでした。
そんなわけで故障してしまったと言われるアイミーブの駆動用電池を分解し、それがこうした用途で使えないものか、探ってみることにしました。
■駆動用電池ユニットの分解■
分解に当たっては、ウスイタケノブさんに協力をいただきました。タケノブさんは、各種コンバートEVや機能に関してはほぼオリジナルのジャメ・コンタント・オマージュなどを手掛けた電気自動車設計の専門家です。それとウチの娘(電気工事士)にも手伝ってもらいました。タケノブさん、お忙しい中、ありがとうございました。
以下、写真のキャプションで説明していきます。
⇧これがアイミーブ(初期型・初度登録2010年6月)の駆動用バッテリーユニット。
車体からバッテリーユニットを降ろすまでの工程はこちらを参考にして下さい。
⇧まずは、ケースの上フタを止めている(スパナサイズ10mmの)ボルトを外します。防水性を高めるため、短いピッチでたくさんのボルトを使って固定されています。
⇧フタをはがそうとしたら、この部分もくっついているようだったので、サービスプラグ周囲のプレートも外します。固定しているネジ4本を外すと外れました。
⇧サービスプラグ外周のプレートを外す前に、念のため、高圧コードの電圧を測定し、リレーが切れていることを確認しました。
⇧これがサービスプラグの端子。330Vのちょうど真ん中あたりを切断する構造になっているものと思われます。
⇧サービスプラグのプレートを外したら、空冷用のファンなどはケースのフタに取り付けたままの状態で、フタを外すことができました。防水のため、ケースのフランジ面には硬化しないタイプの(つまりベトベトの)ブチルゴームが使われていました。これを余分なところにつけないように注意して外す必要がある、ということにはずしてから気が付きました。そのためにこの後の作業では、なにかにつけ工具も手袋もブチルが付着して難儀しました。
⇧ケースのフタが外れるとこんな感じ。これまでイジってきたサビだらけのクルマからすると、内部はまるで新品のよう。サビはもちろん、ホコリさえもない状態でした。温度があがるとファンで電池を冷やす構造ですが、ファンの吸気口にはエアクリーナーが取り付けられていて、そのためにホコリも入らなかったものと思われます。
⇧フタの外れた駆動用バッテリーを上から見るとこんな感じです。水色のものがLEV50と呼ばれるGSユアサのリチウムイオンバッテリー。真中付近に、大型のヒューズと大型のリレースイッチがあるので、そのあたりから高圧電源の入出力をしている模様。
⇧8つの電池が一列に並んでいますがCMU(セル監視装置)やBMU(CMUからのデータを使ってバッテリーを監視するユニット)などは4つをひとつの単位に行われていました。白いプラスチックの中に帯状の高圧コード(正確には帯状の金属)が入っていて、白いプラスチックの上ブタを外したときには周囲に触って短絡させてしまわないように注意が必要です。
⇧真ん中あたりのカバーを外すと中から電磁石駆動の大きなリレースイッチがでてきました。電磁石は補機バッテリー(12V)で駆動するものと推測され、キーを捻り緑色の「READY」の状態になったときはこの部分のリレーがオンになったということと予想されます。また、充電ジャックをつないだ際もこの部分でスイッチオンの状態になると思われます。
⇧細いコードがたくさん束ねられたハーネスがたくさんあり、これらが各バッテリー(セル)を監視するためのコード(と思わます)。まずはこれらを外します。
⇧昔のクルマと違い、カプラーにはツメがあってそのツメを押し込むなどするとカプラーを外すことができます。
⇧テスターで電圧を測り、バッテリーの配列を確認するタケノブ師匠。
⇧バッテリー上の白いプラスチックの上フタを外すと中から金属製板状の配線があらわれます。これを外さないとバッテリー端子を外すことができないのですが、むき出しだと危険だからカバーがあるわけでこのあたり慎重な作業が必要です。
⇧端子部分にもカバーがあり、極性が記載されています。こじると外れます。
⇧外す端子の順番を確認した上で、絶縁手袋をはめ、作業に取り掛かる電気工事士のご両人。百戦錬磨のタケノブ氏に対して、学科試験はギリギリだった若き電気工事士。
⇧バッテリーの取り外しは、可能であれば、電圧が半分、半分、半分になるように行うのが(危険性を考えると)理想的だけど、ギリギリのスペースに目一杯詰め込まれた市販電気自動車の駆動用バッテリーでは、取り外せる順番は決まっていて、外せるところから外すことになりました。
⇧タケノブさんが使っていた特殊工具であるトリムファスナーリムーバー。カニのツメのような形状のプライヤーで、内装クリップの下に滑り込ませた後、握るとクリップのツメを縮めることができるというスグレモノ。後日、amazonで見つけポチってしまいました。
⇧学科試験はギリギリだったけど、技能試験は余裕だったとのたまうもうひとりの電気工事士は、視力と器用さという若さを武器にマイナスドライバー1本で果敢に外していきます。
⇧午後から初めて、日が暮れるまでにはなんとか、12ユニット(8セル×10+4セル×2)88個バッテリーをはユニットから外すことができました。
このあとは、「不良バッテリーを探すための電圧測定」(←今度、雨が降ったら書きます)に続きます。