「①稲の栽培備忘録(毎年情報追加のこと) 浸種から催芽まで タネもみを何グラム水に浸けるか?」の続きです。最初から読みたい方はこちらをクリックして下さい。
量は少しなのですが、広島の秦さんからいただいたハッピーチルドレンという名前のバスマティ系香米を栽培しています。
ハッピーチルドレンは秦さんが、つくった品種。まだ形質固定がしっかりされていないので、千歯扱きを使って穂についているモミの状態を見ながら脱粒をしました。
ハッピーチルドレンは福岡正信さんのハッピーヒルと、香り米の交雑種。ハッピーヒルの子どもたちということで「ハッピーチルドレン」と名付けられたのでした。
広島から白州に渡ってきて、4~5世代目だと思うのですが、収穫したお米はこんな感じです。長粒系、短粒系、色の濃いもの薄いもの、いろいろな形質のお米が混ざっていてこのまま食べても美味しいのですが、品種固定をするため、穂を選んで播種しています。
これらすべてがハッピーチルドレンなわけですが、ウチではその中から、色の濃いきつね色をしたものを選り分けています。
(広島の秦さんは、どのタイプを残しているのだろう? もしかしたら広島のハッピーチルドレンと山梨のハッピーチルドレンとは違ったものになっている可能性があります)。
手前が子孫を残す方の穂。奥は美味しくいただきます。
その後、温湯消毒。
種モミをお湯に漬けることで、いもち病、ばか苗病、立枯れ細菌病などの種菌を殺すことができると言われています。農薬を使うよりも効率もいい、との説も。
種モミを入れたときに急激に温度が下がらないように、大鍋をかまどにセットし、温湯消毒を行いました。
一般に60度で10分、58度では15分などと言われていますが、今回は平均して59度くらいだったので、12分くらい漬けこみました。ただしモチ米(ココノエモチ)は、温湯に弱いとのことなので10分できりあげました。
このとき注意したいのは温度計の精度。
温度計は意外と誤差が大きく(特にバイメタルや放射温度計)、最低でも二種類の温度計をセットし、併用するのが良さそうです。
温湯消毒が終わったら、次は水に種モミを浸け込みます。10度以上、13度未満の温度の水に7日~9日間、浸種します。このあたりのデータについて詳しくはこちらを参考にしてください。
いつもは玄関に置いているのですが、今年は暖かく13度近くあったので、半地下の作業場で浸種を行いました。
4月16日、7日間の浸種を終え、催芽に移りました。
催芽というのは、種モミに暖かな温度刺激を与えることで、発芽に向けて一斉に目を覚まさせる作業。手植えのときは半月から一ヶ月くらいかかって植えていたので、成長の早いものから植えることができたのですが、田植え機での田植えでは、一日で田植えが終わってしまうので、芽の出方を揃えておく必要があるのです。
催芽は、コールマンのクーラーボックスの中に熱帯魚用のヒーターをセットし行いました。水温を30~32度に保ち、20時間行うとちょうどいい状態になるといいます。いまどきの熱帯魚用ヒータは1500円くらいのものでも、サーモスタッド付きで温度設定ができて優秀です。
30度前後のぬるま湯に20時間前後浸けると、種モミは鳩胸状に膨らみ、ほんの僅か、白い芽(たぶん根)が出てきます。
白い根が0.5ミリくらい見えたら播種のベストタイミング。そのため20時間後が夜中にならないようにタイミングを見計らって催芽を始める必要があります。
●2021年4月22日追記
12度近辺8日間の浸種を終えたので、きょうから催芽に入りました。
午後17時30分から催芽を開始。20時間後は翌日の午後13時30分頃になるように調整。
例年通りコールマンのスチールベルトを使い、熱帯魚用のサーモスイッチ付きヒーターで水温を30~32度の間に管理しました。
無線式の温度計のセットし、スチールベルトをいちいち開けなくても内部の水温を知ることができるようにセット。
熱帯魚用のサーモスイッチ付きヒーターの設定は30度では高すぎで、24度くらいでちょうどいい感じ。ときどき、種モミをもちあげ、酸素補給&ヒーターからの距離が均一になるように調整しています。
催芽が終わったら苗箱に土を入れ、冠水した後、タネを蒔きます。
この日は、ミツバチの採蜜などとも重なり、大忙し。
今年は苗箱で22枚、播種しました。ウチは自給用のため1反ちょっとで、一箇所あたりの植え付け本数も少ないので、苗箱の枚数は少ないのですが本格的な農家は数百枚播種、などというところもあります。
その後、床暖房のある、母の家に苗箱を移動。苗箱と苗箱の間にスペーサーとして木をはさみながら積み重ねて加温します。
下からは床暖房、上からは電気アンカ+サーモスタットの組み合わせで加温しました。
キャンプ用の断熱シートで覆い、温度をできるだけ一定にして出芽を促します。25度~30度くらいがいいとのことで、適温を保つことができると2日半(60時間)くらいで1センチ程度目が顔を出すと言われています。今年は、なぜかなかなか温度が上がらず、最初の日は20度弱で少し低めでした。
そして3日後、上の箱はまだあまり芽がでていませんが、下の方はかなり出ていたので、これで終了。
土も市販のものやガケ土、コンポストで作った自作倍淀などいろいろに変えて実験をしています。上の写真では右が市販の床土で左は自作品。
ちょっと失敗だったのは、途中で、上下を組み替えることをサボったこと。上の方はまだまばらなのですが、下の方はかなりしっかり出芽していました。
これくらいに出揃ったら、積み重ねを解除し、苗箱を地上に並べます。去年までは路地にビニールトンネルだったのですが、昨年、ビニールハウスをいただいたので、今年からはハウスの中で育苗。
それまでは暗闇で育ていたので、一気に、強い光に当てると生育障害がでることがあるとのことで、圃場にあった緑のメッシュを掛けることにしました。
ということで、やっとどうにか、出芽までたどりつくことができました。ほっ。
でも実は去年は、このあと、苗を強い日差しで焼いてしまい、大失敗しているので、このあとも気を抜けないのですが……。
ということで、お米づくりは、手間はかかるけれども、なんとか身のまわりにあるものを駆使すればお金はあまりかかかりません。2年目からは、タネも買う必要はなく、前年に収穫したお米がそのまま来年のタネになります。
家族が1年間食べる分のお米+醸す分のお米、それに豆があってそれらをうまく醸せば、ご飯とお味噌汁をいただくことができるのです。
そしてなにより、お米づくりは楽しい! 日本の地方はいま、高齢化が進んでいて休耕田や耕作放棄地が増えています。いまは「大変」なときですが、大変は「大きく変わる」とき。自分が食べるお米を自分でつくるこの楽しさをもっとたくさんの人が味わうことができるような世の中になると、いいなぁ。
お米づくりに関して、この先の作業は、また少し季節が進んだらアップしたいと思います。
■プール育苗■
2020年頃からハウス内でプール育苗をしています。
水位:苗が水没しない程度に床土の上まで水をいれます。こうすることで苗立枯病やもみ枯細菌病などの発生も減らすことができます。ホップの研究者でもある岩舘康哉さんのツイッターより