育苗作業はどこまで手を抜いても大丈夫か? そのあたりの検証も兼ねた、ぐうたら備忘録、「水稲の育苗の備忘録1」からの続きです。
備忘録1では、種モミの温湯消毒から浸種までを紹介しました。備忘録2では、クーラーボックスを使った催芽などを紹介させていただきます。
↑発芽の促進と時期を揃えるためにタネモミを浸種します。規定の時間ちかく浸種を行うと、モミは少し透明になり、白い胚の位置が分かるようになってきます(浸種の時間や方法など詳細については備忘録1を参照してください)。
規定時間の浸種が終わったら「催芽」という作業に入ります。これも発芽の時期を一定に揃えるために行う作業で、32度の温水に15〜20時間程度漬け込みます。
お湯の温度をできるだけ一定に保つため、ウチでは保温ボックス(=クーラーボックス=Colemanのかなり古いスチールベルト)を使用しています。
↑保温ボックスに35度前後のお湯(モミを入れると温度が下がるので少し高めがいいように思います)を入れ、そこに浸水しておいたモミを漬け込み、時々水温を見ながら32度をキープする、というのが去年までの「催芽」の方法でした。
そして今年からは新兵器が登場。
↑サーモスイッチ付きの熱帯魚用ヒーターです。amazonで1600円でした。
↑熱帯魚用のサーモスイッチ内蔵ヒーターは、設定温度が26度に固定されているものが多いのですが、これはアジャスタブルなサーモスイッチ付き。最大34度まで目盛りが付いています。
↑ヒーターは100Wですが、クーラーボックスだとあまり温度は下がらず、ヒーターがオンである時間はかなり短いようで、電気料金に換算すると催芽の終了までヒーターの電気代は10円にも満たない金額でした。
↑催芽に要した時間はどのくらいか?というと、デジタル写真のデータを調べてみたら、上の写真を撮ったのが2017年4月13日の8時20分。そしてその上の写真を撮ったのが2017年4月12日の11時01分。作業をしてから写真を撮るまで、数分のズレがあるとしてして、32度近辺だと約20時間ほどで上記のような状態になるようです。
催芽完了の目安は種モミを見てみて、芽が1ミリ程度出た状態がベターで、芽が1ミリ異常出てしまい根も出てしまうと出過ぎ、と言われています。
催芽と並行して、種モミを播くための育苗箱や床土を用意しておきます。
■育苗箱(苗箱)■
水稲用の育苗箱には、稚苗用(主に機械植え用)と中苗用(手植えや特殊な機械用)の二種類があります。
↑写真の上が中苗用、そして下が稚苗用。いずれもひとつ100円前後で、コメリや農協系のお店で手に入ります。昔は苗をつくったけれども、いまは苗を買っているという兼業農家の方も多く、使わなくなった苗箱の処分に困っていたりして、うまくするとたくさんいただける場合もあります。
↑中苗用(写真の左側)は、箱の底の穴が大きく数が多いのが特徴。稚苗用(写真の右側)は底の穴が小さく穴の数も中苗用にくらべて疎だったりします。
■床土(とこつち)■
育苗箱などで苗を育てるための土を床土といいます。床土は自分で作ってもいいのだろうけど、苗箱によって自作品を少し交えつつも、苗作りの失敗が怖いので多くの方は市販の床土を使っているようです。市販の床土には、肥料の入っているものと入っていないものがあるのですが、虫草農園では肥料の入っているものを使用しています。
よく園芸書などに「水はけが良く、なおかつ水持ちのいい土壌……云々」と書かれていたりするのですが、「そんな土あるわけない!」と思っていたのですが、市販の床土はまさにその典型。粒子状で水はけが良いけれどもひとつひとつの粒子は水持ちがいいという理想的だったりします。その一方で自分で作った土は水はけが悪いのに乾きやすく、そのあたりにも床土自作の研究の余地があります。
■土入れ■
苗箱には土を入れる前に苗箱の底に紙を敷きます。古新聞でもいいのだけれど、苗箱のサイズにカットされた専用紙があり、それを使用しています。専用紙は500枚で600円前後、毎年、新聞紙を20枚このサイズに切ることの25年分と考えてしまい……市販品の誘惑に負けてしまいました。底に紙を敷くことで、苗箱から苗をロールのようにしてマット状に取り出すことができます。
紙を敷いたらその上に、床土を敷き詰めます。苗箱のフチよりも10〜12ミリ低い位置まで土を入れ、その上にタネモミを播きます(苗箱の深さは30ミリだから深さ約18ミリの土を入れるということになります)。専用の定規板(下の写真の赤い板)が売っていてこれを使うととても便利。
■必要な床土の量■
床土の量は、今回測ってみたら20kg入りの床土1袋で(覆土まで含め)5箱の苗箱に土を充填することができました。目安は1袋で5箱。たとえば20箱作るには、20kg入りの床土4袋が必要ということになります。
■たねまき■
催芽させたタネモミを土の上にまくことを播種(はしゅ)と呼びます。
苗箱の種類が異なるのと同時に、育てる苗が稚苗(ちびょう=主に機械植え)か、中苗(ちゅうびょう=主に手植え)かで、苗箱ひと箱にタネまきするタネの量も異なります。
↑こちらは稚苗。催芽モミ(水を軽く切った状態)で稚苗は140g〜180gが基準値。今年(2017年)は140〜150gで武川米(農林48号=通称ヨンパチ)を播種しました。
↑こちらは中苗。苗箱ひと箱あたり100g〜120gが基準値と言われています。こどもたちと手植えするように、長粒の香り米であるハッピーチルドレンと、コシヒカリを播種。写真はハッピーチルドレンです。
■追記 乾燥したモミの状態のお米を8日くらい浸種すると、うるち米の場合、1.3~1.4倍になる模様(2017年実測)。
よって、苗箱1枚あたり、稚苗の場合で催芽モミ145g(ウチは植えるのを遅めにするので少なめ)だと、催芽モミ145g÷1.35=乾燥モミ107g
中苗の場合だと、水を吸った催芽モミ110g(中間値)÷1.35=乾燥モミ81g
たとえば、2019年のコシヒカリは、乾燥モミを1600g浸種したので、箱は1600g÷107g/箱≒15箱 ということで試してみようと思います。
タネまきをするときには、こんな感じのカップがあると便利。
↑ヒラタケなどのオガ菌が入っていたポットを斜めに切ったもの。箱に土を入れたり、覆土を掛けたりする際ときにも便利だったりします。
■覆土■
たねまきが終わったら、タネが隠れる程度に上から軽く土をかけます。タネの上にかける土のことを覆土といいます。
↑覆土は、肥料分の入っていない土でいい(がいい)と言われていますが、ウチではたねまきする量が少ないので覆土も、市販の床土をそのまま使っています。
■出芽育苗■
タネまきが終わったら、次に出芽という作業を行います。規模の大きなプロの方たちは、育苗期と呼ばれる専用の加温器を使って出芽させることが多いようです。
でも、わが家のような自給的な田んぼの場合は箱の量が少ないので、家の中に取り込み、薪ストーブの前に苗箱を重ね、保温のためにキャンプシートなどを被せて管理しています。
また、屋外でビニールトンネルの中で出芽まで育苗する人もいるようです。
長くなってしまったのでこの先の育苗に関しては「水稲の育苗の備忘録3」に続きます。