丸亀製麺でかけうどんを食べるのにも、クレジットカードを使うという徹底ぶりで必死に貯めたマイレージを大量に使い、娘がひとり、インドに出かけて行きました。前と後ろにバックパックを背負って。
最初の難関はたぶんインドに着いたその日の宿。
初日くらいは……ということで、デリーの下町、チャンドニーチョーク近くの安宿を予約したみたいなのですが、デリーの到着が深夜の12時過ぎ。それからイミグレ抜けるわけだから空港の外に出るのは、まさにミッドナイトエクスプレスの世界。
深夜のデリーでは、へたなタクシードライバーを捕まえてしまうといろいろ連れまわされ、朝になってもホテルに着かないことがある、とのウワサがあり、宿に迎えを出してくれるようにお願いしていたみたいでした。そしてそのホテルのマネージャーからのメッセージが傑作なのです。
迎えのタクシードライバーにあなたの名前を書いたプラカードを持って待っているようにさせるけど、そのプラカードを掲げた瞬間に、そのプラカードをコピーした偽者のタクシードライバーがたくさん出現するからあなたの名前の書かれたプラカードを持っていたとしても、そのドライバーを決して信じてはならない!
それらのタクシードライバーは、Hotel Talaは工事中だとか、Talaはきょうは満員だから代わりのホテルに案内するだとか、Talaはきのう火事で焼けた、などといろいろ言うだろうけど、それらを決して信じてはいけない……。しかもタクシーに乗って走り出すまでそのことを切り出さない場合が多いらしい。
そこで、彼女、秘策として「合言葉」を決めたのでした。
I like peace.
I'll ask him.
What is my favorite thing?
Please answer that it is 「Peace」.
でも、ホテルのマネージャーは何人かいるようで、そのメールを受け取ったマネージャーによって、なぜか合言葉の理解が違っているのです。結局、ホテルが派遣したタクシードライバーであっても必ずしも信じられない、ということを彼らは言いたかったようで、とにかくTaraに着くまで、いかなる人間も信じてはいけない! というのがマネージャーたちの統一したメッセージでした。
しかしそれでも「Peace」が功を奏したのか? デリーのホテルにはどうにか無事、着いたのでした。途切れ途切れではあるけれど、フェイスブックのチャットで「無事ホテルに着いた」「シムカードは買えなかった(インドでの電話番号がまだ取れない)」「ホテルのマネージャーは親切」との連絡が届きました。ところが翌日、「部屋のドアをトントンダッシュされた」「ドアにのぞき窓がないのでドアをあける時が怖い」とか、(たぶん食べすぎで)「なんだか気持ちが悪い」「ミヤリサンを二錠飲んだ」……などと言い残して、連絡が途絶えたのでした。
翌日は「スパイスJET」とかいうなんだかインチキ臭い名前のLLCを乗り継ぎ、デリーからゴアまで移動する予定でした。ゴアにある英語とヨーガとインド料理が学べという学校が目的地です。
ところがその後、連絡がプツリと途絶えたのでした。最初のうちは、ワイファイ環境が整っていないからだろう……とか、いろいろ忙しいのではないだろうか?などと、思っていたのですが、予定の飛行機がゴアの空港に着く時間をしばらく過ぎても連絡がないのでした。
だんだん心配になってきてネットで調べてみると、予定の飛行機はほぼ予定通り、ゴアに着いていることが分かりました。また、ゴアの空港はネット環境がしっかり整っている、などという余計なことまで分かってしまいました。ゴアに着いたら連絡をくれることになっているのに、なぜ連絡がないのだろう?
[:h:250]
↑フライトレーダー24というサイトを使うと、目的の飛行機がいまどこを飛んでいるからをリアルタイムで知ることができてしまったりするのです。
何かトラブルに巻き込まれてしまったのではないだろうか? その思いが一瞬、頭の中に広がると、それはクモの子を散らすように頭の中全体に拡散し、頭の中は疑惑のタランチュラーだらけになってしまったのでした。
そう言えば、朝食に「ぬるい紅茶を三杯も飲んでしまった」などとも言っていたなぁ、とか、「どうも気持ちが悪い」というのは、食べすぎではなく睡眠薬強盗だったのではないだろうか……などなど。
まずは、ゴアの学校に、「トラブルに遭遇してしまった可能性がある」というメールを送りました。次にデリーのホテルに「娘は何時にチェックアウトしたか」「様子はどうだったか}というメールを書いていたら、「ピーポーピーポー」という恐怖をあおるようなスカイプの音がしたのでした。
インドの日本大使館からだったらどうしよう……などと最悪の事態を想定しながら恐る恐るビデオボタンをクリックすると「あー、元気、元気、インド人も西洋人もみんな優しいし、元気だよ、あー、あれは単なる食べすぎ!」という能天気な娘の声がパソコンから響き渡ったのでした……(冷静に考えてみれば、インドの日本大使館からスカイプで連絡が入るわけないよね)。
悲惨なレイプ事件が相次いで報道され、外国人観光客、特に女性のひとり旅は極端に減っているといわれる中……、「スパイス」と「染色」と「トロピカルフルーツ」と「糸紡ぎ」と「ヨーガ」と「インド舞踊」と、そして「ガンジー」と「Peace」の好きなハタチは、(この時期ゆえになおさら?)たくさんの素敵なインド人に優しく見守られながら、充実した毎日を過ごしているようです。いろいろとご心配いただいたみんさま、ありがとうございました。
↑授業料や寮の費用が安かったので、うらぶれた木造宿舎を連想していたのだけれど、なんとリゾートホテル(ちょっとほめ過ぎか)のようなインドの学校。
↑南インドはなんだか光が違う……。学校にはレストランがあって、インド料理の授業もあるとのこと。写真はタンドリーベジタブル(スパイシーヨーグルトに漬け込んだキノコのタンドール焼き?)で、150ルピー(約280円)と高価だったけど美味しかったとのこと。きのこはマシュルーム(馬糞タケ)にしては軸が長いので、ヤマドリタケ系の幼菌か? まさかマジックマシュルームじゃないだろうなぁ……。