イモムシの安田っち in 北杜市

きょうは6月4日、「虫の日」です。
この日を記念して、あのイモムシハンドブックの著者、安田っち、こと安田守さんが、北杜市オオムラサキセンターで観察会&講演会を行ってくれました。安田さんは、自由の森学園の元教員。ゲッチョのあとの骨部屋の主でもありました。
 予約が必要と知って5月の中旬に慌てて申し込みをしたのですが、すでに観察会は満員。どうにか講演会に参加させていただきました(なんと飛行機に乗って高知から、などという方もいらっしゃいました)。

 お昼過ぎからの講演で、お腹は満腹、しかもこのところ朝が早くて日の出前(4時頃)には起きているので、この時間はいつもなら猛烈に眠くなる時間帯。さらにはプロジェクター投影のため明かりを落とした部屋での講演という環境にもかかわらず、終始、息を飲む面白さで、結局、最後まで眠くなることなく、しかし終わった瞬間、意識を失うようにして5秒くらい寝てしまうという不思議な体験をしました。
 しかし、ホント、面白かったなぁ。

 これは今回、同時に行われたイモムシ写真コンテストで、来館者賞を取ったハムシ(甲虫の仲間)の写真。感覚的には見るからにイモムシなのだけれど、安田さん独自の定義では、イモムシは蝶や蛾(鱗翅目)の幼虫、というにしているとのこと。だから、毛虫もイモムシの一種、足の並びが主に3ー4ー1のものをイモムシと呼ぶことにしているとのことでした。
 なんとなく以前からあったイメージとして「イモムシ」というのは形がサツマイモに似ているからなのか……と思っていたのだけれど、サツマイモが日本に輸入される以前から「イモムシ」という言葉はあって、在来種であるヤマイモを食べていたキイロスズメの幼虫あたりを本来はイモムシと呼んでいたのではないか? とのことでした。
 蝶や蛾の幼虫の足の配列は3−4ー1が多いけれども、ただし中には例外があって、シャクガ(幼虫は尺取り虫と呼ばれることが多い)は尺取しやすいようにか? 真ん中あたりには足がなく3−1−1で、これによって幼虫でもシャクガ科の幼虫かどうかを見分けることができる……とのこと、なるほどねぇ。
 ね、面白いでしょ!


 ところで、オオムラサキセンターにはビバリウムと呼ばれる人が入れる巨大な飼育箱があって、そこにはエノキがたくさん植えられていてオオムラサキの幼虫がたくさん観察できると同時に、いまは、ちょうど羽化したアサギマダラが飛んでいました。

 講演ではこのアサギマダラの話も出ました。アサギマダラの幼虫はガガイモ科のイケマなどのツル植物食草としているのだけれど、この仲間には毒があって、アルカロイド系の成長阻害物質を出している。そしてこのアルカロイド系の物質を体内に蓄積することで鳥の学習能力を利用して鳥からの補食を免れているのだけれど、幼虫自身も弱齢の内はアルカロイドに対する耐性が弱く、そのためまずは(アルカロイドが流れてくる)葉脈に傷をつけ、葉脈から新しいアルカロイドが流れてこない状態にしながらイケマなどの葉を摂食している、とのことでした。
 他にも、毛虫の毛が天敵に対してどのくらい効果があるのか、通常の毛虫と鼻毛カッターで毛を短く切った毛虫とでオサムシに捕食される確率の違いを観察をした人の話とか……、面白かったなぁ。
 マイマイガなど昆虫の多くは、何年かに一度、異常なほどに大発生するのが正常で、でもそれが続かないのは、農薬などを使ってヒトが制御しているからではなくて、菌類などの寄主による生態系のバランス作用が起こるから。たとえばときどき大発生するブナアオシャチホコのイモムシは、調べてみると蛹になるために土に潜ると大発生時にはその9割以上が、虫草(冬虫夏草系のバッカク菌?)に感染し、淘汰されている、とのことでした。
 鳥のヒナが食べる虫はイモムシが圧倒的に多く、1羽が900頭くらいのイモムシを食べ、鳥によるイモムシの捕食圧は、1キロ平米あたりだと1億2000万頭にもなる、という話や、カイコのような単一食樹を食べるイモムシは、その植物の消化に特化した耐性酵素などを持っているようで、雑食性の強いヨトウガなどの幼虫にクワの葉を与えると、4日以内にたいてい死んでしまう、とか……知らなかった面白いことがたくさんありました。


 また、オオムラサキセンターも素敵なところでした。生きた状態の外国産カブトムシを触ったりすることもできます。
ツノやハサミに挟まれないように近くて虫の持ち方などを教えてくれるスタッフの目線ががまた虫に優しくとてもいい感じでした。

 図鑑でしか観たことがなかったヘラクレスオオカブトムシ。
 標本の展示も凝っていて、宝石箱をあけると中から、虹色に光る甲虫類が展足されていたり……。

 引き出しをあけたら、フクロウチョウが。
ヒトでも一瞬、ビクっとするので、鳥やヘビはもっと驚くだろうなぁ。

 きょう虫の日は、園内にある虫塚で虫供養が行われていたりもしました。

 バナナはそのまま放置され、虫たちの酒盛り場になるそうです。

 オオムラサキセンターの敷地内にある昆虫酒場である「お台木(ヤマオヤジ)」。
中学生の頃、新宿発23時45分発の最終鈍行で、日野春に通っていました。その頃はまだ、せいぜい目の高さくらいだったはずなのに……。
 時の流れの早さとともに、ヒトが管理していた薪炭林がこれほどまでに成長してしまったことにも驚かされました。お台木から出たひこばえがこんなに太く高くなってしまったということは、この間、ヒトは再生可能エネルギーである薪炭をほとんど使わなくなってしまった、ということ。
 これほどまで、二次林である薪炭林が巨大化したことは、ヒトという生物が火を使い出してからこれまであまりなかったはず。ヒトの生き方の変化やそれが地球の自然環境に与える影響の大きさ、そしてその変化の異様なスピードにも驚かされた、虫の日でもありました。