忙しくて急いでいるときに限ってやってしまうのです。
天ぷら廃油から軽油への切り替え忘れ。
精製していないストレートの天ぷら廃油を自動車の燃料として使用するためには、儀式がいくつ必要なのですが、そのひとつに、エンジンをストップさせる前に、燃料を天ぷら廃油から(ディーゼルエンジンの正規の燃料である)軽油に切り替えておく、というのがあります。天ぷら廃油は気温が低いときには粘度が高く、冬の朝などはうまく霧状になってくれずエンジンを始動できないのです。
でも、その切り替えを、忙しくて急いでいるときに限って、忘れてしまうのでした。
今朝もそう。朝、突然のお客さんがいらして、でも道の駅に出荷に行かなければならず、グローもそこそこにセルをまわしたところ、初爆がありませんでした。そのうちセルの回転も悪くなり、一度、キーを戻して確認したところ、昨晩クルマを使った際、燃料を軽油に切り替え忘れていたのでした。
春の気配がかなり濃くなって暖かくなってきたとはいえ、まだ朝晩は涼しくてさすがにこの時期、天ぷら廃油では、エンジンはかかりません。
仕方なく、電動軽トラで道の駅の出荷へ(娘が)。
こうしたときのために、ユンボやジープ、ディーゼル発電機、それにトラクターにはエンジン始動用の追加インジェクターを取り付けてあります。
などというと、たいそうな高度な装置が付いているように思えてしまいますが、かなりアナログな低級な装置です。
⇧このところ、大活躍中のわが家の天ぷら廃油ユンボ。停車させているときはできるだけロッドがシリンダーの中に入った状態で止めておくのがいいそうです(排土板はだんだん下がってきてしまうけれど)。
始動用追加インジェクターなどというと大袈裟な装置を連想しますが、実際には「軽油を入れたシャンプーボトル」だったり、「MonotaROの格安浸透潤滑剤スプレー」だったり……。
⇧このユンボの場合は、缶スプレーとそれにつながる白いホースが始動用の追加インジェクターです。
⇧緑の矢印の部分から、ホースはエンジンルームに入り、エアクリーナーの先の吸気配管につながれています。
⇧ついでに紹介すると、この黒いヒモは、エンジンをストップさせるときに引っ張るヒモ。スロットルのワイヤーケーブルが不調で、直接ヒモで引っ張ってストップレバーを引くといういい加減仕様。
ということで、今回、切り替え忘れに懲りて、セレナにも始動用の追加インジェクターを装着することにしました。
⇧5年くらい前に13万円で手に入れた古い型のセレナ。でも、この形は結構気に入っています。そしてなにより、燃料代がほとんどかからないところが公共交通機関が少ない田舎で暮らす上ではありがたかったりします。
ところでこれだけだったら作業自体は至って簡単です。作業に要する時間も1時間もかかりません。
エアクリーナーとシリンダーヘッドとの間のパイプに穴をあけ、そこに細いホースをつないで、反対側の端に浸透性潤滑剤の缶スプレーを接続させるだけです。
⇧セレナはシートの下にエンジンがあるので、エンジンのメインテナンスをするのがちょっと面倒だったりします。そのため、シートをあげずに燃料を噴射できるインジェクターがあると、バッテリーの力がある内に早めに対処できるのでつまらないトラブルに悩まされずにすみます。
上の写真の黒い太い配管の左側がエンジンの吸気用配管。そこに細いホースが通る穴をあけ、ついでにエンジンルーム側壁にも穴をあかて、細い耐油性ホースをつなぎ、一方の端に浸透性潤滑剤の缶スプレーを接続します。
たったこれだけの作業ですが、霧化性に優れた浸透性潤滑剤をセルを回す直前に吸気パイプ内にちょこっとスプレーしてやるだけでエンジンはあっけなくかかってくれます(スプレーしすぎるとディーゼルノックを起こしエンジンを壊すことがあるので注意は必要です)。
助手席とはいえ、足元にいつも缶スプレーがあるのは煩わしいので、普段は缶スプレーをはずしておくことにしました。
このとき大切なのは、缶スプレーを外したあとのホース端に栓をしておくこと。これ案外、大切。さもないとこの部分、エンジンがかかると常に負圧がかかった状態になり、掃除機のようにカーペットのゴミを吸い取ります(エアクリーナーの先だからこれもエンジンを痛める可能性があります)。
⇧缶スプレー接続用のホースはシートの下にセットし、先端には木の枝で作った栓をしました。
一度、エンジンが掛かってしまえば、たとえ天ぷら廃油が冷えていても、たいていはそのままエンジンは回り続けてくれます(エンジンによってもそのあたりに違いはありますが)。
つまりは、この装置さえ付けてあげれば、2タンクにしなくても、純正の燃料タンクに天ぷら廃油を入れ、始動用の缶スプレーでエンジンをかけることで天ぷら廃油エンジンは可動できるということです。
わが家では、発電機はこのやりかたです。純正の燃料タンクに天ぷら廃油(冬は灯油を混ぜて少し緩くする)を入れ、インマニにあけた穴から浸透潤滑剤を吹き込み、それでエンジンを掛けたらその後は天ぷら廃油(+灯油)燃料で可動させています(発電機は道路を走らないので灯油を混ぜることができるので熱交換器は必ずしも必要ではありません)。
でも私は「自動車の場合は」このやり方をしていません。軽油を入れた純正の燃料タンクとそれとは別に、天ぷら廃油を入れた自作の燃料タンクを別々にセットして、2タンク切り替え方式で走らせています。
⇧燃料の切り替えは、エンジンルームの中につながるヒモを引っ張り、水道用三方弁のレバーを操作するという原始的な2タンク方式。
このやり方だと、燃料フィルターなどもそれぞれの経路に別々に付けることができるので、もしもどちらかの配管ラインにトラブルが生じた場合も、トラブルのあったラインからもう一方に切り替えることでとりあえずは家まで帰ってくることができます。天ぷら廃油カーを家族が使う可能性がある場合は特にこの方式がオススメです。一番多いトラブルは燃料フィルターの詰まりで、完全独立経路型の2タンク方式であれば、たとえ出先でフィルター詰まりを起こしたとしても家までは帰ってくることができるわけです。
⇧詰まりやすい天ぷら廃油用の燃料フィルターはすぐに確認できるように車室内の見やすい場所に設置しています。ちなみに現在一般の乗用車に使われているガソリンは乙4第一種危険物(引火点が21度未満)ですが、天ぷら廃油は引火点が250度以上なので、乙4第4種(引火点が250度未満)どころか危険物でもありません。だからこそスーパーの食品売り場で大量に販売することができるわけですが。
また、公道を走らない重機、農機、それに発電機などは、天ぷら廃油に軽油や灯油を混ぜることが許されていますが、自動車の場合は道路税が加算されていない違法軽油を作ったことになってしまうので、燃料の混合が認められていません。
そのため寒い冬は冷たい走行風で燃料配管なども冷やされてしまうので、化石燃料を混ぜないストレートの天ぷら廃油では、ハンチングを起こしたりして、エンジンのためにもよくなさそうなので、自作の熱交換器を取り付け、天ぷら廃油を暖めて使っています。
熱交換の方法も、ワンボックスカーならではの新しい方法を試しているのですが、これまでのところかなり快調です。そのあたりも、また機会があったら紹介させていただきたいと思っています。とりあえずは長くなってしまったので、今回はこのあたりで失礼!