菌に関わる作業は「ソメイヨシノが咲き出す前まで」という指標があって、慌ててキノコの植菌の会を行いました。
ソメイヨシノの開花とほぼ同時にアミガサダケやシイタケは子実体を成長させて胞子を散らすし、雑木林、林床の植物たちもまだ日が当たるいまがチャンスとばかりに花を咲かせいます。自然の中で暮らしていると、この頃から菌たちの活動が始まるのがなんとなく実感できたりします。
菌友達が、遠方からも参加してくれて、お昼はポトラック。植菌の会は、美味しいものをたくさんいただく会でもありました。
アラブ、スペイン、アジア、日本、国際色豊かな料理が並び、どれも素晴らしく美味しかったなぁ。
この日はシイタケ、ヒラタケ、ナメコ、クリタケを植菌したのですが、足りなくなっては大変!と大量のホダ木用原木と種菌を用意。
さらに、いろいろなやり方&組み合わせを実験的に試してみたので盛りだくさんで、かなりハードな一日でした。
そんなわけで当日の写真があまりないのだけれど……、気がついた点をいくつか備忘録としてメモしておきます。
一般にシイタケのホダ木は90センチ前後に切りそろえ、それに植菌するけれども、その倍の長さが採れる場合、180センチ前後で植菌し、仮伏せが終わってホダ木全体に菌がまわってから半分に切ることで、木端の部分からの雑菌の侵入を防ぐことができ、また木端に打つ菌も節約できます。
でも手間はかかるので我々のような自給者向けの方法と言えるかもしれません。
昨年までとの大きな違いは、含水量のかなり多い原木に植菌したこと。これまでは原木を出来るだけ早い時期に伐採して乾燥させ、形成層を枯死させてから植菌を行っていました。そのためにまだ葉がある秋の新月の前に伐採し、葉枯らしをして木を十分に乾かせてから植菌を行っていたのですが、この方法は空気中を漂うシイタケ菌を捕獲していた頃の名残りで、その場合は形成層が枯死していないと天然のシイタケ菌は活着できなかったからではないか?などと言う説もあったりします。現代のように培養されたオガ菌やタネコマなどを使う場合は、形成層が生きている間もその下の辺材部分でシイタケ菌は生育し、形成層に守られ雑菌が侵食しにくく、さらに含水率が高いほうがシイタケ菌の活着や成長にも優れいている、との説があり、今回はその説に注目し、試してみることにしました。
そんなわけでこの方法の場合は、伐採後すぐに植菌するのがいいらしいのですが、今回用意した原木は、秋の新月に伐採しているので、植菌の二日前からスプリンクラーを使って冠水。十分に湿らせてから植菌してみました。
一方こちらは、短木栽培。今回はエノキタケの種菌が手に入らす、ヒラタケとナメコをかさ増ししたオガ菌をはさむタイプの短木仕様で植菌しました。
↑オガ菌(1200cc)に米ぬか(2リットル)と植菌樹のチップソーチップ(4リットル)を混ぜたものをサンドイッチし、ラップを巻き、湿度を保った状態で仮伏せします。念を入れて切断面(木端)に12ミリの穴をあけ、そこにも植菌棒で米ぬかなどでかさ増ししたものを打ちました。
↑こちらは、今回はじめて採用した成型菌と呼ばれるタイプの種菌(シイタケ)。昨年、食菌した「オガ菌+封蝋」は、多くを何者かに食害されてしまったので(アリ? キツツキ? リス? カミキリ幼虫?まだ犯人特定できず)、成型菌と呼ばれるタイプも今回はじめて試してみました。成型筋はオガ菌を圧縮しスチロールでフタをしたもので、オガ菌同様、菌のまわりが早く、うまくするとその年の秋には走りのキノコを収穫できる、とのことです。果たしてこれだったら何者かに食べられないのだろうか?
↑今回の植菌の会でのもうひとつの収穫は「ドリル」。これまではマキタのコードレスインパクトを使っていて、これはウチにあるコード付きドリルよりもパワフルで、18Vのリチウムイオンモデルを手に入れてからは、これがあれば何をするにも無敵、と思っていたのですが、中村ケンジさんが持ってきてくれた最近の(格安)コードタイプ(交流100V)がとても優秀で、実際に使い比べてみると18Vのコードレスインパクトとでも雲泥の差があることが発覚。打撃も不要で、穴ひとつをあける所要時間にも倍以上の差がありそうでした(特にクヌギの木端は硬くてコードレスでは歯がたたないことがある)。しかも写真のドライバーは、振動ドリルとしての切り替えも可能で、送料込み3480円。DIYフリークにとってはとてもコストパフォーマンスの高い工具であるように思います。交流100Vが使えればではあるけれど。
↑植菌の終わった菌たちは、その後も十分に潅水をして、まとめてシートの下に保管し、仮伏せ(湿度の高い状態を保ち菌の初期成長を促す)を行います。そしてうまくすると、今年の秋頃から原木栽培ならではの香り高いおいしいキノコが採れるという寸法。含水率多め植菌がどうなるのか? 成型菌は果たして、何者かに食べられずにすむのか? 自給的きのこ栽培は、いろいろ冒険ができて楽しいのでした。