サクラの開花と「よいとまけ」

 麹(こうじ)は、サクラが咲くまでに作るんだよ……と地元のおばあさんに教えていただきました。サクラの開花とほぼ同時に、さまざまな菌類が活動を始め、空気中に舞い始めるらしいのです。空気中にただよう雑菌が増えると美味しい米麹が作りにくくなるとのこと。そういえばひと雨ごとにシイタケも子実体を膨らませ、胞子を飛ばし始めました。「もやしもん」みたいに、空気中を舞っている菌類が見えたら面白そうですね。
 などと悠長なことを言っていられない事態です。家の前のサクラ(ンボ)の木の花が開き始めてしまったのです。

 寒冷地では年によってウメとサクラがオーバーラップして咲いてしまうことがあるのですが、どうも今年はその年のようです。きのこの菌打ちもそうだし、サクラが咲くまでにやらなければいけないことが山ほどあるというのに……。
 でもいくら焦ってみてもことは好転しません。地道に進めるしかないのです。まずは、どうも調子の悪いユンボの修理からとりかかることにしました。コンテナを設置したり、外台所の基礎を作ったり……、ひとりで作業を行う上で、ユンボは頼もしい相棒なのですが、そのユンボくんがどうもこのところご機嫌斜めなのでした。

 ラジエターが詰まっていたり、オイルがドロドロで少なかったり、問題箇所はたくさんあったのですが、道路の真ん中で突然、頑なに動かなくなってしまうのはどうも燃料系のトラブルが原因のようでした。以前使っていたBDFが悪さをしたのかもしれません(BDFは製造時に触媒として使われる水酸化アルカリの滴定がうまくできていなかったり、あるいは遊離脂肪酸の量が多いと界面活性剤である石鹸ができてしまいい、それらがゴムを攻撃したり、スラッジを溶解したりしてトラブルをひきおこしてしまうようです)。

「緑の魔女」(俗に言うところの「合成洗剤」ですが、生分解性が高く石鹸よりも浄化槽に棲む微生物に優しい)の空きボトルを使って点滴タンクを増設。これだとエア抜きが楽チンなのです。ピンクのホースの先端のプラグを緩め、その状態で白いホースを口にくわえてボトル内に息を吹き込みを加圧すると、燃料配管の中のエアがピンク色のホースに抜けてくれます。一番高い位置にあるピンクのホースが燃料で一杯になったらプラグを締めて、ボトルに息を吹き込むのをやめます。ただこのとき注意しないと、ボトルからの吹き返しがあって人の口(ときに肺)に軽油&天ぷら廃油ミックス油の気化した邪悪な空気が入ってくるので、最後まで息を吐きながら瞬時にホースを口からはずす必要があります。

 そんなこんなで点滴タンクを増設したらユンボは見違えるほどに調子がよくなったのでした。そこで一気にコンテナを設置するための道作りに突入。畑の奥にコンテナを設置するため、そこまで4トンユニックが入れるような道を作らなければならないのです。
 これまではエンジンを全開にすると燃料が足りなくなってしまうような症状がでていたのですが、点滴タンクを増設したらそれも解消され、いままでの不調がウソみたいに調子よくなった! ……と喜んでいたら突然、アームの油圧シリンダーから噴水のように作動油が噴出してきたのでした。どうもエンジンが調子よくなったので、油圧がこれまで以上にしっかりかかるようになり、それでオイルシールが逝ってしまったみたい……、あー。
 翌日にはコンテナが運ばれてくることになっているので、ユンボはあきらめ、ネコとジョレンとスコップで、手作業で道作りを再開。無常にもいつしか陽は暮れあたりは真っ暗になるし、よく見えないから数字を読み間違えるし(久しぶりにピタゴラスの定理を使った)……で、結局翌朝、早起きして作業の続きをすることにしたのでした。

 今回の主な作業は転圧。ユンボがあればバケットで叩きクローラーで踏めば済む作業ではあるのだけれど、それを手作業でやるとなるとなかなかに大変なのです。ブロックで叩いたり、ジープで踏みしめたり……道作りだけでもうヘナヘナになってしまったのでした。
 そこで翌朝は朝一番で「よいとまけ」を作りました。これがやっぱり使いやすい。腰に優しいし、ユンボには劣るけれども、叩くと沈むのでブロックの高さあわせにも最適。シメシメと思って掛け声と共に調子にのって「よいとまけ」で地面を叩いていたら、背後からトラックのエンジン音。なんとまだ朝の7時半前だというのに、コンテナは到着してしまったのでした。

 穴ぼこだらけだったこの道を、4トン車が通れるように均したのでした。奥に見えるピンクの花は紅梅。白州ではまだつぼみの白梅もあります。なのにサクラが咲き始めたのでした……。

 そしてこれが即席で作った「よいとまけ」。玉切りにした古電柱に接する柄の部分だけは丸ノコで裂いて面を出し掘り込んだ後、長めのコーススレッドで留めてあります。
 ところで、「よいとまけ」というのは、行為のことで、この道具は「タコ棒」というのでは?とのご指摘をいただきました。ひっくり返すとタコみたいだから……とのこと。なるほど。たしかに。
 ただ、私が造園の仕事をしていた頃、現場ではこの道具のことを「よいとまけ」と呼んでいました。でもかなりマイナーなのかも……。でもなぜか不思議なことにこれを使っていると「もひとつおまけにエンヤーコーラ」といつも必ず余分に突いてしまうのでした。

 トラックの運転手さんをちょっと待たせてしまったけれど、でもどうにか無事、コンテナを設置することができたのでした。台の位置の直角を出すのに、久しぶりにピタゴラスの定理(a2 + b2 = c2)を使いました。 コンパネを大きな直角定規として使う方法もあるけど、√が使える電卓があれば「a2 + b2 = c2」の方が簡単(コンクリートブロックの角に巻尺のL字をひっかけ、計算で出した長さで弧を引き、二辺の弧が交わった点が直角の位置になる)。
 なんでこんな畑の奥に設置したのかというと、写真の奥の温室の側面に大型換気扇があり、その音が低周波となって、家の中(寝室)にまで入ってきてしまうので、うまくするとここに物置代わりにコンテナを置けば防音壁にもなるのでは?と思ったからなのでした。結果は……、完璧、ではないけれど、かなり効果がありました。この方法、天ぷら廃油発電など排気音対策としても有効かもしれません。

 噴水のように作動油が吹きだしてしまった油圧シリンダー……。どうにか分解しようと、苦戦中。パイプレンチの柄を単管パイプで延長し、力を加えたのだけど、ビクともしません。あー、困った……。