日本製の鈑金ストーブという選択

 母の家の薪ストーブがやっとセットできました。畑や山で採れた食材を、楽しく、そしてできるだけ化石燃料に頼らずに調理して、美味しくいただく、ということを一番大切にしたいというコンセプトで、この家は風の森さんに作っていただきました。
 残念がらこの家で一緒に暮らすはずだった父は間に合わず、母がひとりで暮らすことになってしまったのですが、車椅子の父が気持よく移動できるようにと家の真ん中に広めの居間を配置し、その居間の真ん中にキッチンと薪ストーブがある、というシンプルな作りの家でもあります。

 ということで薪ストーブが家のメインのひとつでもあるのですが、そこにどんなストーブを選ぶか?いろいろ悩んでいたのでした。そして最終的に選んだのはこのストーブ。日本で古くから使われている鈑金ストーブです。新保製作所というところの角型ストーブと呼ばれる製品で、ベースになった薪ストーブは7000円というもの。中の火が見えるようにと、これに窓を二箇所追加してもらい、鋼板を少し厚めの0.8ミリのモデルを選んだり、消耗の激しい火止め部分をホウロウのものにしたりで、最終的な値段はかなりあがってしまいましたが、それでも1万8500円でした。

 クッキングストーブとして使用するには高さが低いので、ヤカンやお鍋が乗せやすいように、高さを少し嵩上げすることにしました。半割ブロックを使ってかさ上げしています。 
 ところで、ストーブをセットする上で一番、悩み、手間取ったのは、キッチンカウンター側壁との遮熱壁でした。
 換気扇をガスコンロと薪ストーブとで共用したかったので、薪ストーブをガスコンロにできるだけ近づけたかったのです。そこで、サブロクサイズのケイカル板を半分にして、素通しの壁をふたつ作り二重の空気層を作ることにしました。

 ケイカル板の床側の固定は、こんな感じ。廃材置き場から見つけてきたアルミのチャンネル材を二個背中合わせに固定し、写真のようなものを作り床に固定。上のチャンネル材の外側にケイカル板を通しボルトで固定します。

 上側は、キッチンカウンターに対してロングボルトを使って固定することにしました。それを取り付けるためのナットを、キッチンカウンター側に仕込みます。これにはハンドナッターという道具を使いました。ドリルで下穴を開け、そこにリベッターに似た道具を使ってナットを圧着します。普通板に対してナットを圧着するものですが、木材に対してもある程度効いてくれます。

 全ネジのロングボルトをナッターで支え、ケイカル板はロングボルトに通したナットと大きめのワッシャーで挟み込んで固定。そしてその上にアルミのチャンネル材を載せます。これもいただきものの廃材(源太さん、いつもありがとうございます)。逆に言うと、これらの材料のサイズにあわせて寸法を決め、製作しました。

 もうひとつ苦労したのは、煙突。あらかじめ仕込んでおいた煙突は、内径150φの二重煙突で、その先45度のエルボや変換アダプターなどを使って、日本製鈑金ストーブ用煙突の規格、106φの煙突に接続させます。ストーブ本体よりもこちらの方がはるかにお金がかかってしまいました。
 ストーブの上で調理を行う場合、煙や油は、煙突の隣の換気扇が吸ってくれるという寸法。

 ストーブの高さの調整には、半割りのコンクリートブロックを使用し、それを缶スプレーでつや消しの黒で塗装。床においたレンガとの間にはステンレスのお盆をはさみ込みます。薪をくべる際も椅子に座ってくべることができるし、これで使いやすさはかなりよくなったように思います。

 このステンレスのお盆、ホンマ製作所製ですが、底の部分が二重になっていて、なかなかよくできています。

 こちらは新保製作所製のダンパー(内部にバタフライバルブが仕込まれています)。燃焼が安定したらここで排気を絞ることで、ゆっくり燃やすことができます。このダンパーはステンとホウロウ引きが選べ、さらにホウロウには黒とベイジュがあります(写真は黒のホウロウびき)。ホウロウびきのものでも税込1180円からと良心的な値段設定なのです。

 今回はスペースの関係で採用できなかったのですが、新保製作所ではこんなオプション品も作っていたりします。煙突の熱を使ってお湯をわかすという熱交換器です。安曇野の臼井さんはこれを使ってタイニーハウスの床暖房システムを構築されていたりします。

©新保製作所
 薄板でできた鈑金ストーブは、鋳物のストーブと違って、長くゆっくり熱を輻射させるというのは苦手ですが、火を炊くと部屋がパーっとすぐに暖かくなるというメリットがあります。また鋼板が薄く熱交換性もいいので、燃費もいいように感じられます。ちょっとした小枝を燃やすだけで、部屋がすぐに暖かくなるのです。

 また、天板部に釜輪がふたつも付いていて、羽釜を使ってご飯を炊いたり、調理をしたりするのも効率的だったりします。日本のかまど(おくどさん)に一番近い形の薪ストーブがこの手の鈑金ストーブともいえるのではないでしょうか?
 さらには釜輪の部分には木炭をセットできるオプションの穴あきバケツがあったりします。

©新保製作所
 さっそくそれを使って、焼き鳥をいただきました。室内が煙だらけになってしまうのではないかとも思ったのですが、換気扇との相性もよく、また、このアダプターは内部側面に大きめの穴が開いていて、焼肉屋さんの無煙ロースターのように煙などを下引きして煙突側に排煙してくれるようです。

 ただし、最近の高過密住宅や換気扇のない室内などでは、大量の一酸化炭素が発生する可能性が高く、換気にはかなりの注意が必要だと思われます。もし似たような使い方をする場合は十分に注意してください。

 今回のストーブで唯一、ちょっと想定外だったのは、側壁の耐熱ガラスの窓で、使う内に真っ黒になってしまいました。耐熱ガラスを外して拭くという方法もありますが、カマワの部分を外した方がアクセスしやすかったりもします。でも真っ黒になっても中の火の状態はなんとなくわかるのですが……。

 一方、こちら焚口側の窓は、空気の流れの関係か、タールで汚れにくく、扉がひらくのでたとえ汚れたとしても掃除も簡単です(濡らしたウエスにストーブの灰をたっぷりつけてガラスをこするのが正解)。


 ということで、現在のところ、このストーブは至って快調。実はこの地に移り住んだ当初、10年以上の間、時計型の鈑金ストーブを使っていました。そしてそれがとても快適だったのです。最近は薪ストーブというと外国製の高価な鋳物ストーブが全盛ですが、調理もできるクッキングストーブとして日本の鈑金ストーブを見なおしたい、という思いもあってこのストーブを選びました。将来的には、釜輪の部分にセットするオーブン(ピース天火?)のようなものや煙突にセットする発酵室なども一斗缶などを使って作ってみたい、などという目論見もあります。地産地消ということと同時に、こうした手作り感あふれる拡張性を想起させてくれる点でも薄板を折り曲げて作った日本独特の鈑金ストーブは素晴らしい! と思うのですがいかがでしょう?