南アルプス山麓側でキャンプをされる方へ


 肌を焦がすような強烈な陽射しも衰えだし、いまはまさに、キャンプに絶好の季節。今度の週末も連休で、白州や武川、それに釜無の上流あたりでキャンプをされる方が多そうです。私たちも若い頃はこのあたりの沢沿いで、テントを張ったりしていました。
 ところでこの地域、フォッサマグナを境に、植生や動物相、昆虫相などが大きく異なります。八ヶ岳はクマの少ない地域ですが、南アルプス側はツキノワグマやイノシシが比較的多く生息しています
 そんなわけで、南アルプス側の川筋でキャンプをされる場合は、ちょっと注意が必要です。一番注意して欲しいのは、食べ物の材料と残飯。それに料理の際の生ごみの処理にも注意していただきたいと思います。テントの近くに残飯や生ごみを放置する行為は、クマやイノシシを故意に引き寄せようとしているのと同じ行為です。
 オートキャンプの場合は、食事の材料や残飯、生ゴミなどはできるだけクルマの中に、クルマが近くにない場合は密閉できる容器に入れてテントサイトから少し離して保管するか(アメリカの自然公園では密閉できるペール缶に入れて木の上高くにロープで吊り上げていました)、あるいは、焚き火で燃やして灰にするなどして、ヒト、クマ共に不幸な事故が起こらないように注意していただきたくお願いします。
 一度、ヒトを襲ってしまった経験をもつ大型獣は、それ以降、ヒトを怖れなくなってしまう可能性があるとのことで、残念だけれどもほとんどの場合、射殺されてしまいます。
 堅果類の不作で、山奥にエサがないので、クマが里に出てくる、という論調の報道が多いのですが、報道される方は、想像や先入観で論評せず、実際に射殺されたクマの内臓や周囲に落ちている糞などを観察してから、報道して欲しいと思います。ツキノワグマが里に降りてきてしまうのは複合的な原因によるものだと思いますが、その中でも一番の原因は、ヒトを怖いと思う経験が少なくなっているからではないかと思います。ウマやシカと違って、イノシシやサル、そしてクマは学習能力に長けています。一度いやな嫌な思いをすると同じ道を通らなくなったりします。
 そういう意味では、緩衝帯の役目を果たしていた薪炭林(クヌギやコナラなどの雑木林)をヒトが管理しなくなったから、というのも原因のひとつのように私は思います。かつては薪炭林の管理のためにヒトが山に入る回数が多く、それらの多くの人はマタギでもあったので、ヒトを怖れる機会が多かったのではないかと思います。そういう意味では、ヒトが山に入ってそこで泊まることはとてもいいことだと思うのですが、お互いを不幸にしてしまう事故が起こらないように、くれぐれも注意してキャンプを楽しんでいただきたいのです。