「東京では手に入りにくい八ヶ岳らしい食材を!」ということで、「ミョウガの白い花」だとか「赤と緑の香りの異なる二種類のルバーブの茎」だとか「ウコギの徒長枝についた太った芽」それに「サンショの未熟果」……、ヘンテコリンなものばかり持って行ったのですが、それらを次々と生のまま口に入れ、舌の上で品定めしていた料理人がいました。これが須藤さんとの出会い。
そのときもなんだか只者ではないなぁ、と思ったのですが、あとで聞いたら、有名レストランの料理長とのこと。でも「料理長というポジションは、自分で料理を作ることが少なくなってしまい、弟子たちが作った料理の味見係のような存在で、どうもつまらない……」とそのときは話されていました。その須藤さんが料理長という地位を捨て、韮崎から少し離れた集落の中の古民家で始めたレストランが、アラカンパーニュです。
最初にいただいたジンジャーエールを飲んで「あー、やっぱりこの人は自分で作る、ということにこだわりたかったんだなぁ」ということをしみじみ感じたのでした。レストランでウィルキンソンの茶色いジンジャーエールが出てくると「お、この店はこだわりがあるなぁ……」と思うひとが多いのではないかと思うのですが、写真のジンジャーエール、良く見てください。ウィルキンソンはタンサンなのです。自家製のジンジャーエールシロップにウィルキンソンの炭酸水を注いでいただく、というスタイル。のっけから、すっかりヤラレてしまったのでした。
光の感じもいかにも隠れ家風。聚楽の壁には、本物の稲穂が塗りこめられていました。
タルトの中には、標高の高いところで育つハナマメが。
地の野菜とトルティーヤのしっとり感が絶妙な前菜。
野趣に富んだゴボウの香りが鼻に抜ける肉料理……。
スミマセン、味わうのに夢中でそれらは写真を撮り忘れました。