やっとどうにか、移動可能な超小型太陽光発電所が形になりました。これがあれば、畑で好きな音楽を聴きながら農作業ができるし、クワやスコップなどの刃物の研ぎにも電動グラインダーが使えたりします。屋根に固定されたソーラーパネルと異なり、日なたを求めて移動……なんて芸当も可能です。交流100ボルト用のインバーターとDCDCコンバーターの両方を備えているので、交流も直流も使用可能。交流は瞬間出力250Wまで、定格出力は200W、USB電源も取れるのでiPodやiPad、携帯電話などの充電も可能。さらにはバッテリーが上がってしまったクルマの救出もできたりします。
よく尋ねられるのは制作にかかった費用。サビだらけのポモナカートモドキをレストアし、バッテリーは、自動車修理工場からいただいてきた廃棄処分品を再生し、製作しているので、パネルやコントローラーなど実際にかかった費用は約1万円ほど。バッテリーやカートなども全部新品で揃えたとしてもたぶん3万円もかからないと思います。
↑左上の小さな黒いボックスがチャージコントローラー。これでソーラーパネルからの電源を調圧し、バッテリーに蓄えます。ソーラーパネルは電池の一種なので、夜、発電していないときの逆流防止、あるいは過充電防止などの機能を備えています。ドイツ製。
手前の黒い箱はインバーター。これを使って直流12Vのバッテリーの電源を交流100Vに変圧します。USB充電も使用可能。
バッテリーは自動車用廃バッテリーを再生したものを3個並列で配線して使用。611のパレードの際、小雨パラつく中、半日以上音楽を鳴らし続けましたが、パレード終了後も問題なく電源を供給してくれました。
↑パネルは角度を調整できるようにしたので、配線は伸びたり縮んだりする必要があります。そのため、スパイラルコードが必要なのですが、芯線が金属製のコードは適当な丸棒に巻きつけることでスパイラルコードを自作することができます。
↑バッテリーターミナルの配線には、自動車用のゴムホースの切れ端を流用。ホースの中に芯線をむいたコードを挿入し、その状態でバッテリーターミナルに押し込むだけ。ゴムホースは絶縁体なので、不注意によるショートやアークを防ぐことができます。だめだぁ〜、睡魔に負けます。続きはまた明日……。
↑iPodとスピーカーをつなげば、電源のない畑でも音楽を聴くことができます。611のパレードでは、キヨシロウを流しながら、約6キロの道のりを練り歩くことができました。
↑ところで上記のスピーカーの入力電流は直流15Vです。タップに差し込むコンセントの部分がACアダプターになっていて、そこで交流100Vを直流15Vに変更しています。つまり、直流12Vのバッテリーからの電源をインバーターで一度、交流100Vに変換し、それを再びACアダプターで直流(15V)に変更している、ということ。ちょっと直流を一度、交流に変換するのはちょっと無駄がありそう……。
↑そしてこちらは、直流の12Vを直流の15Vなどに昇圧可能なDCDCコンバーターと呼ばれる変換機。こちらを使った方がロスが少なく効率が良い可能性があります。
↑どちらが効率がいいか? 電流計で測ってみることにしました。スピーカーのボリュームを変えず、同じ曲を流して測定してみたところ、直流12VのバッテリーからDCDCコンバーターに流れていた電流は0.11アンペアだったのに対し、直流12VからDCACインバーターに流れていた電流は0.58アンペアでした。交流に変換してしまう方が約5倍、効率が悪くなってしまうということです。ノートパソコンや電話機など、多くの電化製品は直流入力なので、これらの電化製品を使う場合は交流に変換せず、DCDCコンバーターを使った方が、効率がよさそうです。(ただし、インバーターから直流に再変換しているのが、トランスタイプのACアダプターなのでこの部分でのロスが大きいことが予想され、この部分にスイッチングタイプのACDC変換機(パソコン用など)を使うとこれほど大きな違いは出ない可能性はあります)。
↑そしてもうひとつ。こちはらチャージコントローラー。ソーラーパネルからの電気を過充電や逆流させず、バッテリーに蓄えるためのコントローラーです。写真のものはドイツ製で3600円ほどしたのですが、その後、もっと安いインドネシア製(1260円)を手に入れ、同じ太陽光の条件でバッテリーへの出力を比べてみたところ、廉価なインドネシア製のものの方が効率がいい(コントローラーから出力される電気量(ワットの値)が大きい)ことが分かりました。その代わりインドネシア製のものは最大許容量が1Aと低く、チャージコントローラーはパネルの大きさに合わせ、容量が必要以上に大きすぎないものを選択するのが正解のようです。一家に一台、大きなシステムを組むのではなく、その都度、電気を使う場所の近くにその使用電力に合わせたパネルと電池を組むというのも案外、良いのかもしれません。
↑シャコ万力にボルト止めした自動車用フォグランプ。取り外し可能なライトであると同時に、廃棄されているバッテリーが再生可能かどうかのテスターでもあります。バッテリーはただ電圧を測るだけでは優劣を知ることは難しく、高負荷をかけたときの電圧の落ち具合を見るのが正解です。このライトを接続した際の電圧を測って、再生可能な廃棄バッテリーを探すわけです。
というわけで、どうにか超小型ポータブル発電所の1号機は、ほぼ完成しました。今発売中のオールドタイマー誌119号にも4ページに渡って紹介してあります。詳しく知りたい方はそちらもご覧いただけるとありがたいです。