安曇野でミツバチの会があり、笛吹市のTomaさんご夫婦と、久しぶりにシャンティクティをお訪ねしました。
やっぱり曲線の建物は美しい! この地の自然にすっかり馴染んでいて、なんともいい感じの佇まいのアースバッグハウスと古畳・積層ハウスでした。
屋根の上の石積みには苔が生えていて、建てたばかりのときよりより周囲に溶け込んでいて、しっくり素敵な建物になっていました。土や古畳など、自然素材の小屋はやっぱりいいなぁ、素晴らしい!!!
そしてこちらは、最近、臼井さんが作った道具と材料の収納ハウス。
収納と言ってもすぐに片づけられるように見える収納が主体。この手の道具の収納には、どこに何があるかが一目瞭然であると同時に、使ったものをすぐに片付けられるということで「見せる収納」がポイントだと、数年前にやっと私も気がつき作り始めていたのですが、あっという間に追い抜かれてしまいました。自給的な田舎暮らしをする上では、こうした収納小屋は必須アイテムであり、とても重要な空間のように思います。
⇧中はこんな感じ。ものづくりが好きな人にとって、こんな素敵な空間はありません。時間を忘れて没頭してしまいそう。
臼井さん曰く「陰極まって陽となす」だそうです。どなたか指摘してくれた人がいたのかもしれませんね、「あのねー、ちょっと散らかり過ぎ!」と。
ゴミ屋敷となりつつあるわが家も、この収納小屋にはかなり刺激を受けました。
「もう、いらない!」などと言って断捨らずに、ゴミのようなものでも整理整頓してとっておいて、いつの日か有効に使う、ということができるのが、田舎暮らしの醍醐味であり、地球に優しい暮らし、でもあると思うのです。
⇧北側の壁は、ハチ道具の陳列収納棚になっていました。
さて、いよいよ本題。
きょうの虫好きの集いは、ミツバチの会。
臼井さんのお友達である伊藤旭二さんが、和蜂(ニホンミツバチ)を洋バチのように巣枠で飼うためのいろいろを実践をまじえて教えていただける、というありがたい企画なのでした。
現在行われているニホンミツバチの飼育方法で、最も多いのは重箱式と言われる飼育方法ではないかと思われます。これは高さ140~150ミリ前後、内寸230~250ミリ角くらいの四角い箱を積み重ね、その中で飼育する方法です。ニホンミツバチは巣の上のほうに蜜を貯蔵し、巣の下のほうで子育てが行なわれる傾向にあるので、蜜が貯まったら上の箱を本体から巣ごと切り離して採蜜する、というのが重箱式の採蜜方法。ハチも巣も、少ないダメージで採蜜することができます。
⇧これが重箱。写真のものは、下から巣門、1段目、2段目、フタの構造でこれは2段の重箱ということになります。群れが大きくなるのに合わせて、巣門と1段目の間に箱を継ぎ足して縦に巣を伸ばして高層化し、上の箱に蜜がたまった頃を見計らって一番上の箱を外し、採蜜をします。
ミツバチの自主性に合わせ、箱の中に自然に巣を作らせるこの方法もなかなかいい方法ではあるのですが、中のハチたちの様子が観察しにくいという欠点があります。巣の中の様子を知るには、巣門にスマートフォンを挿して内部の様子を撮影するくらいしかできず、女王の確認や子育ての様子などを確認するのが難しかったりします。
⇧重箱式の内部を巣門から差し込んだスマートフォンで撮影するとこんな感じの画像を見ることができます。手前の緑の針金は巣落ち防止用の支え。普通、重箱の中で自然巣を作らせると、箱に対して斜めに作るのですが、フタにスリットを入れておくと、写真の通りスリットに合わせて巣を作ってくれます。
一方、巣枠式の場合だと、巣枠を引き出すことで女王や巣の様子を観察することができ、また巣分かれを事前に察知したり、制御したり、あるいは結婚飛行中に女王がツバメに食べられてしまったような場合、人工的に王台を作ったり、他の巣箱で増やした女王を移植したりして、群れの危機を救うことができたりする可能性があったりもします(でも、どれもそんなには簡単にはいかないそうです)。
⇧こちらが巣枠式。巣枠式では、巣枠に沿って巣を作ってもらうので、こんな感じで巣を箱から取り出して巣の様子をしっかり観察することができます。
また、巣枠式にもいくつも方法があるのですが、今回、見せていただいたのは、臼井さんがインドから飛行機に乗せ持って帰ってきたというインドの巣枠式巣箱。
⇧一見すると、重箱と似ていますが、中は巣枠式になっています。インド式の特長は、下の段の幅の広い青い箱の部分(中には巣枠が入っている)を育児圏としてハチにこどもたちを育ててもらい、小さな巣枠の入った上の箱(写真で持ち上げている方の箱)に貯蜜をしてもらい、上の箱の小さな巣枠を取り出して遠心分離機にかけ、採蜜を行う、という方法。
臼井さんはこれをインドから手荷物で持って帰ってきたそうで、1セット1,800ルピー(約3,600円)だったとのこと。
⇧これもインドから持ち帰ったという遠心分離機(こちらも1,800ルピーだったそうです)。貯蜜用の小さな巣枠を一度に4つ入れて回転させられるようになっているようでした。これを使えば、ハチが作ったハニカム状の巣を再利用できるわけで、さすがはガンジーの国であるインド人の作った巣箱です。
⇧インド式巣箱はこんな台の上に載っていました。こちらは臼井さんのオリジナル。
木枠の下側には金属メッシュが張ってあってそこから巣クズが地面に落ちる、という仕掛け(黄色いプラスチックコンテナの部分も箱に接する部分は切り取られています)。
前に出ている合板は、スライドして下からのハチや冷気の侵入を抑えることが得きる開閉可能なベンチレーター方式。
⇧そしてこれはインド式巣箱の巣門。金属製のパンチング材を使った日本で言うところの「ハチマイッター(女王バチ留置器)」。しかもこのインド式は板の挿し方で、女王バチを閉じ込めたり、スズメバチの侵入を防いだりすることのできる、という優れもの。
⇧巣門板はこんな風に落とし込み方式になっていて、天地を変えて底板との間にスペーサーを入れてセットすることで巣門のサイズを任意に変更可能で、女王バチ逃避防止サイズやスズメバチ進入防止サイズ(写真がその仕様で青い板と底板の間に約5ミリの木の棒がはさみ込まれているのがわかるでしょうか)、あるいは完全に閉じ込め(移動の際など)などに使えるというもの。よく考えられています。
⇧これは上のフタを開けたところ。巣枠の上に発泡のトレイで給餌させていました。その隣の白い四角ものは、アカリンダニ対策の「ダニ取りシリカ」。
なんだかここまでの前置きが長くなってしまいましたが、ここでいよいよ、伊藤旭二さんの登場です。
巣枠に作った巣を、別の巣枠に移す作業を見せていただきました。
⇧貯蜜用の小さな巣枠からはみ出してしまった巣を別の小さな巣枠に移します。
⇧白い巣の部分が新しくはみ出して作られた巣で、このまま放置すると横に伸びすぎて巣箱の側板に接着されてしまいます。
⇧はみ出した部分を切って、別の巣枠にセット。このときに使用している譜面台のような台がとても良くできていました。もしかしたらこれが、巣を切り取って巣枠にセットする際のもっとも大切なアイテムかもしれません。
⇧これは伊藤さんのスタンドを参考に臼井さんが作った巣枠用の専用品。軽くて畳んで収納できて、しかも美しい。巣枠を置く部分には、イネの苗箱が流用されています。ちょっとステーを追加すれば譜面台や書見機としても使えそう!
⇧こちらは元祖、伊藤さんの巣枠スタンド。伊藤さんは出先で作業を依頼されることも多いので、小さく収納できることが必要で、足にはカメラ用アルミの三脚を流用されていました。雲台の部分にクイックシューでセットできるようになっています。そしてこのクイックシュー、古道具屋さんから三脚ごとで300円で買ったのだけれど、受け側がなかったので木で自作したとのこと(作ってみるとわかると思うけど、クイックシューの自作ってかなり難易度高いです)。
⇧譜面台のような巣枠スタンドに巣枠と巣をセットしたら、細い針金を使って巣を巣枠に固定します。まずは横方向の固定。巣枠の横の柱に沿って細い針金を一周させ、角の部分をふたひねりくらいして巣枠に針金をくくります。今回使用したのは0.35ミリの銅の針金、とのことでした。
⇧次は縦方向。先に張った横方向の針金のすぐ上で巣に針金を貫通させ巣と横方向の針金と巣枠を固定します。こうして固定すれば翌日からハチたちが巣枠に巣を接着し始めるので、一週間したら針金は取り外してやるとのことでした。
また、今回は、小さな巣枠と小さな巣だったので、縦横それぞれ一箇所ずつでしたが、もう少し大きな巣の場合は、縦横それぞれ2箇所ずつつ針金を通すといいとのことで、苗箱には縦の針金が1本の場合用(センター)と2本の場合用(両サイド)に3箇所、切り欠きがあります。
これができるようになると、上下二層のインド式でなくても縦に長い巣枠の中から上部の貯蜜層だけを切り取り、残りの下部の育児層を再び巣枠にセットして飼育する、などという芸当ができるようになるわけです。
ところで、ここまで写真で紹介した巣枠は、四辺形のタイプの巣枠ですが、伊藤さんが推奨する巣枠は鳥居形と呼ばれるタイプで、下のバーのないタイプです。
⇧鳥居形の巣枠(この写真は臼井さんのnoteからお借りしました)。
幅は22ミリで、隣の巣との間にハチたちが背中合わせで行き来できるように8ミリのクリアランスを取ってセットします(つまり巣のPCDは30ミリ)。
そしてそのためのスペーサーがこれ。
⇧写真右上のポッチがスペーサー。伊藤さんはホームセンターで売っている半丸棒をカットし木工用ボンドで接着し、使用しているとのことでした。
上の写真のもうひとつ。横枠(鳥居形の上の枠)の底面には、写真のような突起を作っておくと巣枠に対して真ん中に巣を作り始めてくれるとのこと。ちなみに写真のものは割りバシとのことでした。
その後、一緒に参加されたTomaさんが作った巣枠を伊藤さんに見ていただきました。
鳥居形の下部に剛性を持たせるためにヒゴが追加されています。
⇧まだ使ってみてはいないとのでしたが、これは面白そうなアイデアで、楽しみです。
⇧これはTomaさんオリジナルのスペーサー。配線用の固定具が流用されています。これもナイスアイデア。またこのスペーサーは片側に4つ付けるのではなく、両面にふたつづつ付けると、巣枠を裏表どちらにもさせるのでその方がオススメとのこと。
⇧ハチが巣枠幅の真ん中に巣を作ってくれるための突起。割り箸ではなく三角形を採用していました。伊藤さん曰く「この方がいいと思います」とのことでした。
お昼は近くのお蕎麦屋さんでミツバチ談義。
これがまた楽しかった!
晩秋に生まれてくる越冬バチは色が黒く、春から秋に発生する個体と性格も役割も異なっているように思う、とのこと。越冬期の楽しみがまたひとつ増えました。
最高に楽しい1日を過ごさせていただき、「(こどもはもちろん)大のおとなが、虫のことで夢中になれる」これは本当に幸せなことだなぁ、としみじみ思いました。こんな平和で幸せな世の中がいつまでも続いてくれるように願っています(そのためにも有権者は、施政者のふるまいに常に関心を持ち、民主主義を機能させていく必要があるように思います)。
それともうひとつ、長年の飼育で培ってきたさまざまな技術を惜しげなく伝授してくれる伊藤さんにお会いして、虫に気持ちを移入できるひとは、ヒトにも優しくて素敵な人が多いなぁ、としみじみ思いました(例外的にあたしのような意地悪な人間もたまには居ますが)。
伊藤さん、臼井さん、Tomaさん、素晴らしく楽しい1日をありがとうございました!
おまけ
シャンティクティで見つけた「つまらないジョウロ」。
⇧100均で売っているフルイをジョウゴの口にシリコンのコーキングで接着し(その後、塗装)した、というもの。こうすることで、ハスノミがつまらないのだそうです。素晴らしいアイデアでつまらなくないのに「つまらないジョウゴ」なのでした。こういうの好き!