アカボシゴマダラとツマグロヒョウモン

出荷している野菜に虫食いが多いためか、口の悪い人からは「虫食い農園」、などとも呼ばれていたりもするようですが、わが家の正しい屋号は「虫草農園」です(いちおう、確認)。
で、虫草農園では殺虫剤はもちろん除草剤や殺菌剤などの農薬を使っていないので、「虫」や「草」たちがたくさん集まってきます。

というか……、最初の頃は家族にも内緒にしていたのですが(いまはバレバレだけど)、虫草農園では虫たちが集まってくるような草(タナツケバナだとか、イケマだとか、クローバーだとか、ムラサキケマンだとか、ウスバサイシンだとか、ナンテンハギやクサフジ、ワレモコウやクズだとか、カワヤナギやイボタ、クルミやサンショだとか、クヌギやエゾエノキだとか、ブッドレアやクサギだとか、キリがないのでこのあたりにしておきます)を植えていたりしました。

畑をお借りした当初は、圃場整備によって木はもちろん、草一本生えていないまっさらな状態でした。で、更地にまず最初に植えた植物がエノキでした。
エノキは、虫たちの宝の木。オオムラサキゴマダラチョウ、テングチョウ、ヒオドシチョウなどの食樹で、タマムシやナナフシ、それに樹液が出ることもあってカブトムシやクワガタなども集まってきます。
虫草農園には、畑の真ん中にシンボルツリーとしてエノキがあって、畑の周囲にはクヌギやコナラが植えられています。クヌギやコナラは薪やキノコ用という名目になっていますが、樹液に集まる虫たちレストランでもあります。
ただ、最近はレストランの訪問客が減っていて、以前は樹液の周囲にオオムラサキやカブトムシがぐっちゃり(10頭以上も)集まっていたのですが、最近は数が少し減ってきてしまっています(数を特に減らしているのはオオムラサキで、以前はたくさんの幼虫を見かけたのですが、このところは他で発生した個体が集まってきている感じです)。

とはいえ、いまも、これくらいは集まって来てくれるのですが……。

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⇧羽根を大きく広げているのは、オオムラサキのメス。大きな羽根を目一杯広げて、他の虫や、しつこいオスたちを威嚇します。オオムラサキのオスたち(右側にいる2頭)やゴマダラチョウなどは、一瞬、身を引きますがメスが羽根を閉じると再び恐る恐る近づいてきます。

ところで上の写真ですが、かつての昆虫少年が見たら、「えっ」と目を疑う虫が写っています。
そうなのです! このところ、我が家のクヌギの樹液になんとアカボシゴマダラが来るのです(下の写真は数日前ですが、きのうもきょうもいらしておりました)。

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⇧赤い斑紋があるのがアカボシゴマダラで、そのすぐ上の左にいるが在来種のゴマダラチョウ

ウチにある比較的新しい昆虫図鑑(藤岡知夫著「日本の蝶」1975年発行)によると、

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アカボシゴマダラは、日本では奄美大島だけに棲む非常に珍しい蝶なのです。

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ところが最近は関東地方での目撃例が増えている、とのこと。
春にはミヤマシロチョウがこんなところまで降りてきたのか? と思ったら、アカボシゴマダラの白化型であったり、どうもこのあたりにも定着してしまているようなのです。
アカボシゴマダラの場合は、人為的に持ち込まれた可能性もあるとのことなのですが、暖かな地方を好むアカボシゴマダラが、標高750mの白州(山梨県北杜市)に定着したとすると、この地にゴキブリが定住するのも時間の問題と思われます(とりあえずいまはまだクロゴキもヤマトゴキブリもいません)。

ただし、かつてはいなかった虫たちが最近、ここ数年で、一気に目撃されるようになったのも事実。

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⇧ブッドレアで吸蜜するツマグロヒョウモン。ブッドレアはバタフライブッシュとも呼ばれ、さまざまな蝶が集まってきます。
そしてこのツマグロヒョウモンも、ウチの昆虫図鑑だと……、

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⇧海岸沿いに東に分布域を広げていますが、それでも伊豆半島までが北限とされています。ところが最近のウィキペディアによると、2002年には関東地方北部での目撃例があり、その後2006年には関東北部での定着が確認されたとのこと。
そしてここ数年、夏になると標高750mの白州町の虫草農園でもほぼ毎日見かけるようになり、蛹も確認しています。

他にもアオスジアゲハやモンキアゲハを見かけるようになったし、北杜市クマゼミの声を聞いたという声もここ数年、聞くようになりました(虫草農園でも今年、すでに聞いています)。
虫屋の聖地である「日野春」のある北杜市には、虫好きの人がたくさん移住しているのですが、この地に移り住んで10年以上たつ虫好きの人は、昆虫相の変化に驚いていると思います(虫好きは誰もが地球温暖化を確信していると思います)。

虫好き以外でも、農業従事者、特に果樹農家にとっては、ここ数年の急激な温暖化は、脅威だったりもするようです。しかもこれはおそらく地球規模での話。
さらに温暖化は、暖められることによって加速度的に進んでしまいます。
政権維持などという個人的な事情で、東証1部の時価総額の1割以上にもなる65兆円もの公的資金を株に投入し、かろうじて株価を支え、見せかけの好景気を演出しているているような場合ではないのです。