井戸のメインテナンスとトラブル集

 文句なしに自慢できるものが我が家には、ひとつあります。
それは「お水」。 水がとても美味しい、のです。
なんだか申しわけないようにも思うのですが、お風呂も、洗濯も、そしてトイレも「南アルプス天然水」です。
 近くにサントリーの天然水の工場があるのですが、それよりもさらに少し上流、家に隣接する林の中に井戸小屋があって、そこから天然水を汲み上げて使っています。
 そんなわけで、お水はホント美味しい! お水が美味しいとお茶やコーヒー、お酒はもちろん、炊きたてご飯のなんかの味も大きく違ってきます。
 当時のサントリー社長がこの地に惚れ込んだのは、ここ鳥原区を流れる松山沢川の伏流水だったと言われています。しかしいま天然水としてサントリーが取水しているのは主に、神宮川水系の地下水(十分にそれも美味しいのですが)で、深井戸による取水のため伏流水とは少し違ったタイプの水のようではあるようです。そんなわけで、我が家は松山沢川水系の浅井戸ということでお水はとても美味しいわけです。でも個人が管理する浅井戸はトラブルが多いのも事実。
「蛇口をひねると水がでる」というのはとてもありがたいことで、常々感謝しながら蛇口をひねっているのですが、いつしかそれを忘れ、当たり前になってきた頃、蛇口から水が出る幸せを思い出させてくれるかのようにトラブルはやってくるのでした。
 そんなわけで、井戸はトラブルの種類も多く、対処の方法を忘れてしまいがちだったりもするので備忘録を兼ねて、書き留めておこうかと思います。

↑林の中に建つこの小さな黄色い小屋が井戸小屋。そろそろ作り変えてあげたいところなのですが、田舎暮らしはやらなければいけないことがたくさんあって、なかなかそこまで手がまわらないのでした。
 その一方で、林の中のこうした小屋は林に棲む生きものたちの格好の棲家でもあります。

↑扉付近は(たぶんアナグマに)何度も何度も掘り返されたので、鉄板を敷くことにしました。石はどけてしまうけど鉄板は苦手なようなのですが、しかし全周に敷くほど鉄板がありません。

↑すると鉄板の敷かれていないところを見つけて侵入してきます。
 また、棲んでいるのはアナグマだけとは限りません。

↑この食痕はアカネズミかな? ネズミはカワイイのだけれどもそれを求めてやってくるヘビたちはなぜかあまり、カワイイと思うことができません。また、アナグマはひょうきんな顔をしているけれども凶暴な側面をも持っていて、犬の鼻先を噛みちぎってしまうこともあるといいます。
 そんなわけで、小屋の入り口には鉄パイプが置いてあります。不思議なことに鉄パイプやスコップのような武器になるものを持っているかいないかで、野生動物と対峙したときの心の余裕度はかなり違ってくるのです。そしてそれが相手にも伝わるような気がします。

 特に夜は中に誰かが寝ていることが多く、昼間であっても鉄パイプで小屋を軽く叩き、先住人には裏の出口から出ていってもらってから、恐る恐る戸をあけ中をのぞきます。とはいえ、最初からあまり乱暴に叩くと先住人がスズメバチの場合は起こって襲ってくるのでそのあたりは注意が必要です。
 小屋の中はこんな感じになっています。

↑左の茶色いのが圧力タンク。右の白いケースに入っているのが、水を汲み上げるためのポンプです。

↑これがポンプ。ちなみに白いケースの上の黒っぽいものは、真っ黒クロスケことカマドウマの糞です。赤いのは止水バルブで、凍結防止の断熱材を外した状態。

↑白いケースを外すとこんな感じ。ケースは上にまっすぐ持ち上げると外れます。白いテープは凍結防止のための電気ヒーター。
 ウチの井戸ポンプはジェット式と呼ばれるタイプで、吸い上げ長さが8〜20mくらいの家庭用ポンプとして普及しているタイプなのですが、ポンプ自体は地上にあって、井戸の中にちょっと面白い部品が付いています。
 一般に電動ポンプはその構造から流体を押し出すのは得意なのですが、引っ張るのは不得意です。そのため深さが20m以上の深い井戸には水中ポンプが使われています。井戸の底にポンプがあってそこから水を押しあげるわけです。ポンプの構造からすると水中ポンプが正解なのですが、電気コードを水中に通す必要があったり、故障した場合、井戸の底から配管と共にポンプを引きあげなければならず、メンテナンス性に劣るなどのデメリットもあります。
 そこで考えられたのがジェットポンプという方式。ポンプ自体は地上にあって、そこから井戸の中に水を送り込むことで井戸の底にある水をも引っ張り上げてこようというものです。
 そのためジェットポンプは2本のパイプを井戸につっこみ、配管の一番低いところには図のような部品がついています。これは「流動する流体の周囲には負圧が生じる」というベルヌーイの定理を応用したもので、自動車のキャブレターやエアブラシなどにも似たような仕組みが使われています。

↑ジェット式ポンプには2本のパイプが井戸の中に入っているわけですが、そのうちの1本(図の左のパイプ)は、ポンプによって地上から水が圧送されてきます。この水は井戸の底部でUターンし、ジェットと呼ばれるノズルから太いもう一つのパイプ内に上向きに噴き出されます。ジェット部はそれまでのパイプよりも細くなっているので、水は流速をあげ勢いよく噴出されます。もうひとつの太いパイプの中には井戸底の地下水があって、上向きに噴出された水に引っ張られて地上へとあがっていきます。1の水を送り込むことで3の水を引っ張り上げてくるのです。
 そのためジェットポンプの場合は、最初に圧送側パイプの中にある程度の水が入っている必要があります。ポンプが稼働していないときにこの水が抜けてしまわないように、一番底の部分にはチャッキ弁(チェックバルブの読み違い)が付いていて、逆流を防止しているのですが、その部分に砂が噛んでしまったりすると圧送パイプ内の水がなくなってしまいポンプは水を汲み上げることができなくなってしまいます。そんな場合に備えて、チャッキ弁には地上から手動で操作ができるヒモが付いています。チャッキ弁の締りが悪いようで圧送パイプの水が抜けてしまうような場合はこのヒモを引っ張ってバルブを操作してみると直ることがあります。

↑我が家の井戸の場合は、カマドウマの糞や小動物などが井戸内に落ちないように100円ショップで買ったプラスチックのゴミ箱でフタを作りました。そのプラスチックのゴミ箱の脇からでているヒモがチャッキ弁を操作するためのヒモ。過去に一度、チャッキ弁が劣化し、この部分を交換したことがあり、それまではたびたび何度も祈るような気持ちでヒモを操作したものでした。また、配管の一番下にヒモがあると、パイプを引き上げる際も安心だったりします。
 さらに、ゴミ箱の底の部分(フタの上面)にはプラグをつけて、そこから水位計測のコードを入れて置けるようになっています。井戸のポンプの間の配管(2本)はエアキャップなどを巻きつけて凍結防止を図っています。この部分は暖かい井戸水が動く部分のためかこの程度の断熱でもいまのところ凍ってしまったことはありません(ここは標高が750mで最低気温は氷点下15度くらいにまでしか下がらないということもあるかもしれませんが)。


 ところで、圧送側の水が抜けてしまった場合は、そのままポンプを駆動しても水はあがってきません。パイプ内に水を入れてあげる必要があり、これを呼び水と呼んでいます。きれいな水があればいいのですが、長い停電などで圧送パイプ側の水が抜けてしまい呼び水が必要な場合は、風呂の残り湯などを使い、汲み上がってきた当初の水を捨てるなどの方法もあります。

↑これが呼び水を入れるための栓。圧送パイプ内の水がなくなってしまっている場合、この栓をあけ、(チャッキ弁の締り具合にもよるけど)バケツ一杯程度の水を呼び水として入れると、ポンプが空打ちしているような音がする場合、復活することがあります。
 井戸のポンプは、一般に配管内の圧力を感知し、それによって電源をオンオフしています。ポンプ本体のトラブルとしては、この圧力スイッチが原因のことが比較的多いように思います。

↑そしてこれが圧力スイッチ。どんなポンプでもだいたいこんなカッコをしていると思います。トップの部分にたしかゴムのフタが付いていたと思うのですが、ネズミの仕業かなくなってしまったので、白い木片でフタをしてあります。どこから入り込むのか、このプラスチックのケースの中にアリやカメムシなどが入り込んでしまい、それが悪さをしてポンプが稼働しなかったり、所定の圧力に達しても止まらなくなってしまったりというケースがあるのでフタは大切です。

↑圧力スイッチの中はこんな感じになっています。配管内の圧力が低いときには、上についているバネの力の方が強いのでスイッチ接点は接触しつながった状態。配管内の圧力があがってバネの力よりも大きくなると接点が離れ、スイッチがオフになる、というアナログな構造です。バネの上には調整ネジがあって、バネのセット長を変更することでスイッチ開閉の圧力を調整できるという寸法。このスイッチの接点部分にアリやカメちゃんが挟まってしまっていることがあったりします。


 でもわが家の井戸の場合、一番トラブルが多いのは、圧力タンク周辺です。

↑これがわが家の井戸の圧力タンク。こうした別体式の他、ポンプと一体になったタイプもありますが、容量が大きい方がポンプへの負担が小さく節電にもなります。
 水は圧力がかかっても小さくならないのですが、空気は圧力がかかると圧縮されて小さくなります。圧力タンクの中には正常な場合、主に空気が入っていて、ポンプが汲み上げた水でこの中の空気を圧縮します。
 たとえば圧力スイッチの設定で2kg/c㎡という圧力達するとポンプが駆動を止めるようにセットされていたとします。すると圧力タンクの中の空気は2kg/c㎡になるまで圧縮されタンクの中にかなりの水が入ってきます。で、たとえば0.5kg/c㎡という圧力まで圧力がさがると、再びポンプは稼働を始める、と設定されていたとすると、0.5kg/c㎡になるまで、しばらくの間、圧力タンク内で圧縮されていた空気が水を押しだしてくれるのです(空気ポンプ)。

↑我が家の圧力タンクにはメーターが付いています。以前はkg/c㎡表示のものだったのですが、壊れてしまいいまはMpa(メガパスカル)表示。目安としては、0.1Mpa≒1kg/c㎡です。


 もし圧力タンクがなかったとすると、圧縮された空気が水を押してくれないので、蛇口をひねるとすぐに配管内の圧力は0.5kg/c㎡に下がってしまい、蛇口をひねるたびにポンプは稼働してしまい、摺動部分やスイッチが劣化しやすくなり、またモーターは起電時に大きな電気を必要とするので電気も沢山必要になる、ということになってしまいます。

 そんなわけで、圧力タンクなどが正常であれば、ちょっと洗い物をしたくらいでは、あるいは、配管の凍結防止のためひと晩中、水をポタポタ垂らしていても、ポンプは駆動しないのが正常です。
 ちなみに我が家では、太陽熱温水器からの配管(北側屋外の部分もある)には凍結防止の電気ヒーターを巻いておらず、翌朝が氷点下5度以下になりそうな日は、夜寝る前に洗面所の蛇口を少しだけ緩め、2秒に1回くらい水が垂れるくらいにセットしています。こうしておかないと氷点下5度以下の朝は水が出なかったりチョロチョロだったりするのだけれど、これをやっておくだけでヒーターなしなのに寒い朝も気持ちよくジャーと水が出ます。

↑ポタポタ垂らしておく水もモッタイナイので、一応コップに受けておいて、翌朝、朝一番に置きた人が使います。
 寒さに応じて自動でポタポタ垂らしてくれるという蛇口も市販されているけど、これを家の中の水栓に付けて使うと家の中が氷点下になる家の場合、排水が凍って家の内がスケートリンクになる可能性があり注意が必要です。
 圧力タンクの不調で多いのは、タンク内が水で一杯になってしまうというトラブルです。そうなると圧縮される空気がないので、蛇口をひねるたびにポンプが稼働してしまい、スイッチが悲鳴をあげ、スイッチのサボタージュ?で圧力が下がっているのにポンプが稼働しないという症状などがでます。
 とりあえずの解決策は、ポンプのリセット。我が家のポンプの場合、基盤の入った黒いボックスがありその側面にリセットスイッチがあります。

↑赤いボタンがリセットスイッチですが、見つからない場合やケースをあけるのが面倒な場合は、一度、コンセントからプラグを抜いて再びさす、ということでもどうにかなります。
 でもこれはその場しのぎの解決法で、根本的な解決方法としては、タンク内の水を抜き、タンク内を空気で満たして上げる必要があります。
①それにはまず、ポンプの電源を切り、ポンプとタンクの間のバルブ、それとタンクと屋内配管との間のバルブを閉じます。ポンプとタンクの間にバルブがない場合、ポンプ内の水も抜けてしまう可能性が高いので、あらかじめ呼び水を用意しておくことをおすすめします。
②次にタンクのトップにあるプラグを外します。

↑私は大きめのモンキーレンチを使って緩めますが固くしまってしまっていて緩まない場合は柄にパイプなどを延長して緩めています。

③その後、タンクの底付近にあるドレンコックを開いて、タンク内の水を抜きます。
↑なぜか水はなかなか抜けず、半日ぐらい放置しておくこともあります。
水がほぼ抜けたら、逆の順序の作業を行い、再びポンプを駆動させればいいのですがせっかくタンクの水抜きをしたのだから、ポンプから水を供給し、屋内配管側には水を流さないようにしてタンクの中の掃除をしたりすることもあります。
 蛇口をひねるとすぐにポンプが駆動していしまうという症状はこれでたいていは解決できると思います。
 その他のトラブルとしてこれまで多かったのは、バルブ関連の凍結&破裂でした。

↑壊れたバルブの数々。

↑タンクの水抜きのためタンクの前後にバルブがあり、これらがよく壊れれるのでした。

↑そしてこれの解決策のひとつは、バルブを金属製から樹脂製のものに替えたこと。これ以降は漏れもなくなり、これはかなり効果がありました。

↑バルブ部分は可動部なので防寒が手薄になりがちなのですが、凍結防止用ヒーターを通した上で、まずはバルブの形に加工した発泡スチロールの断熱材、次にエアキャップを巻き、古着のソデで仮止めした後、ゴムのバンドで端をそれぞれ密閉。こういしてからはこの部分のトラブルはありません。
 ついでにもうひとつ、便利な道具を紹介。
圧力タンクの脇にぶら下がっているこのコードは水位測定のためのコード。

↑ところどころにメーター数を表示したビニールテープが貼ってあります。

↑そして井戸の中に垂らす先端部はこんな感じになっています。ツインコードでそれぞれのコードの先端の被覆が剥かれています。接触してしまわないように少しずらして剥いておくのがポイント。
 そしてもう一方の先端には、抵抗測定のレンジに合わせたテスターをセットします。水は通電体なので、その状態でコードを垂らしていって抵抗がなくなったところが水位というわけ。定期的に水位を観察することで、どのくらいの変動があるのか、あるいは地下水は増える傾向にあるのか、あるいは減る傾向にあるのか? などを知ることができます。


 蛇口から水が出ない……という困った状況がまずあって、それをどうにかしなければ……と、これまで素人がいい加減な方法で対処してきたものだけに、もしかしたら間違っている対処法や解決法などもあるかもしれませんが、困っている人に何かとりあえずの解決法の助言になればと思い、書きとめてみました。
 井戸は美味しい水を供給してくれると同時に、「蛇口をひねると水が出る」ということがありがたいことだということもしっかりと味あわせてくれます。この地に住むようになって20年、井戸はトラブルが多く、20年の間には上水道が近くまで来たりもしたのだけれど、でもやっぱり我が家は、井戸が好きだなぁ。