「ヤバイよなぁ、最近は一年前のこととかも、思い出せなくなってるんだよなぁ」などと、ひとりごとを唱えながら去年やった塩水選をしていたら、近くにいたさとみさんに「それは昔から……」と冷たく言い放たれたのでした。そんなわけで来年のためにお米づくりの作業を備忘録として記述しておくことにします。
まず塩水選。規定の濃度の塩水に入れて種モミを選別します。一般的にはウルチ米は、比重1.14(重ボーメ度17.8、塩分濃度18.8wt%)、もち米は1.11(重ボーメ度13.3、塩分濃度13.7wt%)がいいと言われています。
今回はウルチなので、その場合の食塩の量は、水1リットルに対して約225グラム(もち米の場合は169グラム)になります。
比重計としてボーメメーターを使う場合は、ある程度の深さが必要なので、底面積小さめの容器で行わないと、水が多く必要で、結果として塩を大量に使うことになってしまいます。海の近くに住んでいる人は海水をベースにすると良さそう。今回は縦長のナベを使い、水5リットルで行ったので、約1kgのお塩が必要になりました。
↑これがボーメ計。空気の浮力を使ってバッテリー液などの比重を測る比重計とほぼ同じ仕組み。ボーメメーターはメーター自身がフロートになっています。
底の部分には鉛?の小さな玉がいくつも入っていて、メーター全体が釣りに使う浮きのようになっています。そしてその「浮き」に目盛りが刻まれている、というもの。
「新鮮な生卵を浮かべて比重を知る」という方法も知られていて、10円玉一個分くらい水面から出て浮かんでいる状態が比重1.14、とのことなので試してみたら、まさに10円玉一個分くらい浮き上がっていました。ちなみに、卵がナベの底に沈んでしまうのは比重1.0以下で、水中に漂った状態(浮き上がるまではいかない)だと、比重1.08前後とのことです。
産みたての新鮮な卵(左)と、少し古い卵(右)で較べてみたけど、ほとんど変わりはありませんでした。
規定の濃度の塩水ができたらそこにモミを入れて、十分に突っついてできるだけ沈めます(空気の泡が付いていると、充実したモミでも浮いてしまうので)。
それでも浮いてくるモミをすくい取ります。
そしてここまでやって、やっと思い出したのでした。去年、思ったことを。
それは塩を1kgも使って行う塩水選が果たして必要だろうか?という疑問。遺伝子の多様化という視点で考えると、小粒で浮きやすいモミであっても、その方がこの地の気候にあっている可能性もあるし、この地の気候に合っていないとしたら、それは何代も育てるうちに淘汰されていくのではないか? プロの農家と違って、大粒のお米を求めているわけではないので、元のモミは多様性があったほうがいいのではないか? ということでした。
とりあえず、ただの水に浮かべてみて、それでも浮いてしまう未熟米だけを淘汰するだけで十分なのではないか? と去年思ったことをすっかり忘れてしまっていたのでした……。
やれやれ……でも気を取り直して、次の作業、種モミの温湯消毒に移ります。おっとその前に、果たしてこれは必要か?
調べてみたら、農薬を使わない温湯消毒でも、いもち病、ばか苗病、ごま葉枯れ病などをある程度、予防することができる、とのことです。わが家のお米づくりは主に自家用ですが、周囲にはプロの農家の方たちもいらっしゃるわけで、無農薬の自家用米の田んぼが病気の発生源にならないように注意する、という配慮も必要で、少なくとも温湯消毒はやっておいたほうが良さそう、ということを、去年思ったことをどうにか思い出しました。
以下は来年以降のためのメモです。
2016年、塩水選&温湯消毒は4月4日の夜行った。生物指標はカタクリが開花し、アンズが咲き始め、鳥原のソメイヨシノはまだ。山高の一本桜は8分咲きで、神代桜は満開。
■温湯消毒■
温湯消毒は60度のお湯を作ってそれに10分間漬け込んで、病原菌を殺す、というもので、モミを入れた瞬間に温度が下がるので、できるだけ大きなお鍋に下からガスの火で温度を調整できるようにする(残念ながら薪ストーブでは温度の調整が難しかった)。
60度のお湯を入れ、種モミを入れた瞬間からガスコンロで加熱すると同時に、お湯をかきまわして、容器内の温度を一定にする。
温湯消毒の場合は、放射温度計よりも、棒温度計の方が使いやすい。
二種類以上のお米を同時に温湯消毒する場合、袋の色を変え、どの色の袋に何を入れたかすぐにメモしておくこと。
■NaCl水溶液の 比重・ボーメ度 と 塩分濃度の関係■
●重ボーメと比重の換算式
d = 144.3/(144.3 − Bh)
d : 15℃水溶液の 比重(4℃の水を規準として)
Bh : 15℃水溶液の ボーメ度
●温度15℃の NaCl 水溶液での換算表
比重(d) ボーメ度(Bh) 塩分濃度(wt%)
1.00 0.1 0.1
1.02 3.0 2.9
1.04 5.7 5.6
1.06 8.3 8.3
1.08 10.8 11.0
1.10 13.2 13.6
1.12 15.6 16.2
1.14 17.8 18.8
1.16 20.0 21.2
1.18 22.1 23.7
1.20 24.2 26.1
●塩分濃度(wt%) = 塩の重量/(水の重量 + 塩の重量) * 100。
■浸種(種モミを水に漬ける作業)■
2016年は4月4日夜から浸種。農業用水は15度と暖か過ぎで、気温は屋外の場合5度前後まで下がるので、浸種した容器は気温11度の車庫に置いた。水温は4月5日13.6度C、4月6日12.6度C、4月7日、11.8度C……で積算100度でタネまきの予定。
浸種の際の水温に関しては、いろいろ説があるようで「JA北ひびき」のこのサイトによると、温湯消毒した種モミの場合、8度以下の低温で長時間浸種すると発芽がさまたげられる、とある。
でも、低温長時間で、実際に数えてみたけど発芽率が90%以上でした、という方も。
とりあえず、備忘録はこんなところです。そしてなにより、ブログ上に書き留めたということを来年まで忘れないようにしないとなぁ……。