きのこ植菌の会、という名目の美味しいランチをいただく会


 サクラが咲くと、空気中を漂う雑菌類も活動をはじめる、とのことで、なんとかサクラが咲くまでに終わらせたい……と、ここ数日はきのこの植菌作業に精を出しています。キリのいいところまでどうにか終わらせようと夢中になっていたら、すっかりあたりは暗くなってしまいました。
 そこで、ウッドガスストーブの松ぼっくりに天ぷら廃油を染み込ませると松明のようにして使えることを発見。得意になって使っていたら、その姿を娘に撮られてしまいました。
 ウッドガスストーブでロウを暖めながら、おが菌を埋め込んだ穴をロウで封をしていきます。種駒打ちにくらべると手間はかかるのですが、種駒よりも早く確実にホダ木に菌がまわり、うまくすると今年の秋から子実体(きのこ)が発生します。

 今回は、富士種菌という南アルプス市(山梨県)にある種菌屋さんから、きのこの菌を分けていただきました。きのこは放射性物質を凝縮しやすいのですが、富士種菌ではここで購入した種菌から発生したキノコに関して放射線量の検査を行ってくれます。
 食べものを自分でつくっていない人たちにとっては、もしかしたら原発事故はもうすでに過去の出来事になってしまっているのかもしれません。でもキノコをはじめ、良心的な食べものを作っている現場の人たちにとって、原発事故はまだまだ深刻な問題です。そしてなにより、そんなことをいちいち気にしなくてはいけないということが、とても煩わしい。にもかかわらず、この期に及んでもまだ原発を再稼働しようと考えている人たちの自分たちさえ良ければいいという特権意識を思うと悲しくなります。

 ……。


 いかん、いかん、話が逸れました。もっと明るくて幸せな話題、美味しいキノコ植菌の会のことを紹介しようと思っていたのでした。
 キノコの原木栽培は、シイタケで普及しているコマ打ちというのが一般的ですが、今回はその他にいくつかの方法で行いました。クルミやエノキの太い木を伐ったので、今回ヒラタケは、かさ増ししたおが菌を使った短木栽培を行うことにしました。

↑まずは、丸太に一直線に印をつけ、それぞれのホダ木に白い布テープ&タッカーでラベルをつけます。切り口を揃えるための丸太のマーキングには赤のダーマトを使用しました。ダーマトはかつて雑誌の編集でレイアウト指定を行う際の必需品でした。いまでは考えられないことですが、ポジフィルムの上にもう1枚透明のフィルムを被せ、その上からあのクレヨンのようなぶっといダーマトでトリミングの指定をしていたりしたのでした。

↑マーキング&ラベル付けが終わったら、15センチくらいで丸太を玉切りします。玉切りを担当してくれたのは白州のケンジーこと中村賢次さん。こうした作業は気のあった仲間と一緒に行うことでより楽しむことができます。
 また、丸太を玉切りした際にでるチェーンソーチップ(切削クズ)はあとで使用するので、捨てずに段ボールで作った受け皿で回収します。

↑次に、15センチに玉切した丸太の断面に12ミリのドリルでいくつか穴をあけます。

↑そこに植菌棒でおが菌(かさ増ししていないもの)を押し込みます。もちろん手で押し込んでもいいのですが、注射器のような仕組みで木におが菌を注入することのできる植菌棒があると、この作業ははかどります。

↑次に短木の間にサンドイッチするためのかさ増しおが菌を作ります。富士種菌から購入した状態のおが菌1、米ぬか2,そしてさきほどのチェーンソーチップ4,の割合で混ぜあわせ、水を加え、手で強く握ると水が少し滴るくらいの分量の水を混ぜます。

↑かさ増しおが菌ができたら、それを先ほど、おが菌を注入した丸太の断面に盛りつけます。

↑こんな感じで、真ん中を少しへこまし気味にし、縁を少し盛り上げ気味にして盛りつけます。

↑その後、ダーマトのマーキングのとおりに断面を切る前と同じ位置にピッタリとあわせ、さらにはサランラップなどでサンドイッチ面を覆います。こうすることでサンドイッチの具の部分が湿度を保つことができ、またラップの外から菌の繁殖状況を目視することができます。
 まるでストーンサークルのような感じで、短木栽培のペアが出来上がりました。
 そして、ちょうどこのあたりで待ちにまったお昼ごはん。

 持ち寄りポトラックでいただきました。

 手前の丸いコロッケのようなものは、南インドの屋台料理でもあるサブダナ・ワダ。タピオカを使ったワダ(ドーナツ風の揚げ物)なのでした。刻んだグリーンチリが入っていて、ヨーグルトを付けていただきます。
 その奥、白い容器に入っているのは、釣りたてのタイのお刺し身。ケンジーご夫妻が当日朝さばいて持ってきてくれました。こんな山の中で生きのいいタイのお刺し身をいただけるとは。その奥、黒いゴルフボールのようなものは、黒米のオムスビ。採れたけのフキ味噌や柚子胡椒を付けていただきます。

 お皿にとるとこんな感じ。左から、鶏肉の梅紫蘇はさみあげ、坂本豚のテリーヌ、切り干し大根のたまご焼き(切り干しに含まれた出汁の味が噛みしめるたびに滲みでてきてこれがまた絶品でした。さっそくウチでも真似して作ってみました。中村奥様ありがとうございました)。
 奥はフキ味噌の包み揚げ、さっき収穫したばかりの冬越し野菜のサラダ(奥のグラスにあるのはカラスノエンドウなどの春の香草をミジン切りにしたもので、自家製の梅酢ドレッシングとともにかけていただきます)。

 そして感動的に美味しかったのが、サミーラさんが作ってきてくれたこビリヤニ。ピンポン玉のようなナツメグがホールのまま使われていたり(そしてその必然性が実感できたり)、樹皮の状態のシナモンや自家製のサフラン、そしてそれらの香辛料と共演するかのようなインディカ米の香り。バスマティライスが香りの女王と言われる所以もこのビリヤニをいただいてわかったような気がしました。
■追記■ 白い大きなピンポン球のようものはゆで卵です。焦げ茶色の細いものはオニオン、緑の葉っぱはコリアンダーリーフ。


 いま以上の「便利さ」なんてなくても、ヒトは十分に幸せに生きていくことができるように思います。原発なんかなくても、たとえ電気がふんだんに使えなかったとしても、もっと違うところに幸せを見つければいいだけのこと。そして、それを実証するかのような、とても美味しい、しあわせな時間を過ごすことができたのでした。楽しいこと、幸せなこと、は、その気になって探せば、実はそこいらへんに転がっているのかもしれません。そしてそれらは、お金をかけないと見つけられない、ということではないようにも思うのです。