Blog「自給知足がおもしろい」

自給「知」足と称した、貧乏くさい暮らしを楽しむためのブログです。

完璧な自給自足は目指さず、「テキトー」と「いー加減」をモットーにあまり頑張りすぎない、
そんな暮らし方がこの頃なんだか、とてもオモシロイ!と感じています。
自給「知足」的な暮らしは言いかえると「貧乏臭い・ケチ臭い暮らし」でもあります。

でも「ケチ臭いビンボー暮らし」も、そう捨てたものではありません。
ビンボー暮らしは、お金をそれほど必要としない暮らしとも言えます。
そのため、お金稼ぎの作業や仕事に長時間、拘束されずにすみ、
その分の時間を、ヒトが暮らすための作業に使うことができます。

農的で質素な暮らし方が可能で、それにより身近なことで幸せを感じることができたりもします。
また、昔ながらの農的な暮らしは、ヒトも哺乳類の一種として自然の生態系の中で
虫や草や菌類など他のいきものたちと共に生きる暮らし方だったりもします。

そして、こうしたテキトーでいー加減な自給的な暮らしをうまくやっていくポイントは、「知足」? 
人間の欲望は際限がなくてお金をたくさん得られても、たぶんどんなお金持ちになっても満たされません。
でも逆に、小さなちょっとしたことでも、とても幸せに感じられることがあったりします……不思議です。

日々の暮らしの中から「自給知足的な暮らし」を楽しむためのヒント? 
のようなものを、紹介できたらいいなぁ、と思っています。どうか、よろしく。


シカの足の美味しいいただき方

 よっぽど残念そうな声だったのだと思います……。
自給知足仲間の麻実子さんから「シカが手に入ったのだけれど、ヤル?」という電話がかかってきたのですが、ちょうどその時、娘も私も家を留守にしていたのでした。
 家に戻った娘が、母から「シカが捕れたらしいよ……」との話を聞き、折り返し電話を入れたのですが、ギリギリ間に合わず、シカは別の家に行ってしまったのでした。そのときの残念そうな声が麻実子さんの耳に残っていたらしく、夕方、足を一本持ってきてくれたのでした。ありがとうございます。

↑まるで三味線でも持つかのように、うれしそうにシカの足を持つ娘。

 そうそう、話を進める前に、まずはお断りを。 
この先、かなりグロテスクな写真があります。苦手な方は見ないほうがいいと思います。とはいえ、お肉を食べる人は、動物たちを誰かに殺してもらって、その死体をいただいているわけです。お肉屋さんの陳列棚に並んでいる肉は大丈夫なのに、毛皮がついていたりするとその先の想像力が働きダメ、というのはなんだかちょっとオカシナコトだとも思うのですが……。

 ということで、いちおう、お断りは入れさせていただきました。
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で、シカの足はこんな感じです。

↑丸く見えるものが大腿骨の関節。写真をクリックすると大きくなるのでご注意ください。

↑たまたま、遊びに来ていたら娘の友だちたちも手伝わされることに……でも、好奇心旺盛で興味深そうに作業を行っていました。
 最近は狩猟女子が増えている、とのこと。そういえば狩猟免許の試験会場にも若い女性が何人かいました。実はここ数年、自給的な暮らしを欲する人は増え、若い人を中心に狩猟免許を取る人の数は急増しています(このところは試験を行うたびに受験者数は過去最高とのこと)。にもかかわらず、狩猟者の数が増えないのは試験に受かっても、その後、狩猟者として登録するのに(保険代などに)お金がかかりすぎる、という事情があるように思います(私も今年は登録をやめました)。狩猟者の高齢化が狩猟者数減少の原因では必ずしもないのです。
 シカの生息数が自然の生態系のバランスを崩してしまうほどに増えてしまっていて、それにはいろいろな要因があるように思うけれども、シカが高山帯にまで入ってしまうほどに個体数が増えてしまっていて狩猟圧による個体数調整が必要な状態だというのに、いまだに関係省庁が狩猟を「お金持ちの道楽」としてしか考えていないこと、そしてそれに伴う利権の維持という側面もあるように思われます。

↑まずは皮と肉の間に刃をあて、皮を剥ぎます。

↑剥がした皮もなめして使いたいとのことで、骨董品の高圧洗浄機でこびりついた筋膜を落としていました。

↑「早く食べましょうよ!」と、分け前を一歩下がってじっと見守る方もいます。

↑足一本でもかなりの量の肉がとれます。米と違ってお肉は蓄えることが難しい食材でもあります。シカやイノシシを解体してみると、稲作文化の前、狩猟採集の文化がギブ&ギブを基調とした文化であったことを実感させられます。

↑すねの筋肉まできれいに剥がし、ついに終了。この先は、料理です。
 鹿肉(ベニソン)は、欧州では高級食材。いろいろな食べ方があると思うのですが、スモークしてジャーキーにする、というのが我が家では一番人気があります。

↑まずは濃度の濃い液につけて、浸透圧により余分な水分を除去します。今回は、塩、三温糖、にんにく、コショウの「塩ベース」と、これにお醤油や赤ワイン、セージ、ローズマリーなどを加えた「醤油バージョン」の二種類を作りました。
 これらの材料をビニール袋に入れて空気を抜き、2日ほど漬け込みました。その後、塩抜き。漬け込み時間が長かったので流水で4時間ほど塩抜き。

↑一斗缶を使ってスモーカーを作ります。一斗缶は我が家の油田、台ケ原宿のくぼ田というお蕎麦屋さんから天ぷら廃油とともにいただいたもの。サラダオイル用なので食品に向いています。これの上ぶたを切り取り、底の部分にも10センチ角くらいの穴をあけ、そこにチップを載せた金属製のお皿を載せます。お皿の置き方によって下からの熱気をコントロールできるという構造。

↑チップを載せるお皿も一斗缶の上ぶたを切った切り端で作ります。取っ手の基部をプライヤーでかしめ、取っ手が垂直状態で固定できるようにしておくと便利です。

↑塩抜き後、火が通りやすいように薄切りにし、コショウをまぶします。

↑お肉を針金で作ったS字フックに刺して網に吊るし、「いいから早く食べようよ!」という方を尻目にスモーカーにセット。

↑スモーク中はこんな感じ。今回はウワミズザクラをチェーンソーで切ったときのチップを使いました(気になる場合は、チェーンオイルを天ぷら廃油にしておきましょう)。

↑熱源は、鋳物のかまど。火力の調整ができる上に、還元状態での燃焼が可能な昔ながらのかまどが一番便利だったりします。薪が炭化し、チロチロと長く燃やすことができます。スモーカー内が70度前後であることを目標に、3時間弱、スモークしました(付ききりではないのでときどき、100度を越えてしまったり、60度になっていたりりもするけどとりあえずOK)。

↑かまどの火から煙が出てしまうと、その煙の味が混ざってしまいます。かまどから煙を出さない秘訣は、よく乾いた薪を使用すること。また、かまど用の薪には伐った日にちと樹種を書いたメモを添えておくと便利です。今回は2年前、コブダイニングをつくるにあたって伐ったクルミの薪を使いました。

↑そして完成。コショウの効いたパストラミジャーキーで、自分で言うのもなんだけど……抜群の美味しさでした。臭みもなく、硬くもなく、スモークの具合もちょうどいい感じ。ポイントは筋膜などを取り除いてからスモークにかけること(筋膜が臭いの元)、そして温度を上げ過ぎず、その分時間をかけること(硬さ対策)のように思います。鹿肉はフランス料理では高級食材。手間は必要だけれども、手をかけることでとても美味しいお肉になります。