摘果の季節 果樹からの美味しいプレゼント

 もし、田舎に土地を手に入れることができたら、まずはその土地に果樹の苗木を植えることをオススメします。
 少し手はかかりますが、その手入れを楽しむことさえできれば、果樹も無農薬でも育てることが出来ます。果樹は花も(紅葉も)美しいものが多いし、そしてなにより自分の庭から無農薬のくだものが採れる幸せを多くの人に知って欲しいと思います。

↑これは、摘果桃と摘果リンゴと桑の実を煮詰めて作ったジャム。無農薬の果樹はペクチンが元気で、市販の柔らかいジャムがなんだかもの足りなく感じられてしまいます。

↑ドラム缶回転式トイレの奥の木が、我が家の桃の木。1本ですが、毎年100個以上の(木成り完熟の)美味しい桃を提供してくれます。そして手前はドラム缶回転式コンポストトイレで、ここから出たコンポストもときどき桃の木の根本にまいています。これが美味しくて甘い桃のヒケツか?

↑完熟桃としていただく分には、桃用の二重袋で袋掛します。袋をかけてカメムシスズメバチの侵入を物理的に防いでやるわけです。カメムシやゴマダラノメイガの刺し口のないものを選び、食べたい分量だけ袋掛して、残りはあらかた摘果します。年によって異なりますが、残す桃は5個に一個くらいかなぁ。だからほとんどの桃は摘果されてしまうことになります。

↑そしてこちらが摘果した桃。ウチの場合は、冬季の剪定も控えめで、摘蕾もほとんどしないので(切り花として蕾の付いた枝を切って楽しむ程度)、摘果桃は500個から多い年には1000個くらいでます。で、それをそのまま捨ててしまうのはモッタイナイ、ということになったのでした(木の下にそのまま放置しておいたら、犬がほとんど全部食べてしまった、なんてこともありました。お腹の強いベリーもそのときはさすがにピーピー。室内飼いなので、それはもう、たいへんなことでした)。

↑そしてこちらは、摘果リンゴを使って作ったマンゴーピクルーならぬ「リンゴーピクルー」。アチャール(インドの漬物)なので、時間がたって発酵が進み味が馴染んだころが食べごろで、なかなかやめられない後引きの美味しさ! 
 このスパイシーピクルス、リンゴの他に、摘果桃でも作ったのですが、どちらもそれぞれに美味しいのだけれど、どちらかというと、桃の方が本来のマンゴーピクルーに近い感覚。マンゴーピクルーはインドの梅干しとも呼ばれていて、その点では未熟桃の方が梅に近いからかもしれません。

↑こちらがリンゴの木。 今年の春はミツバチが少なくて心配したのですが、その一方で社会性のない、一匹狼のビロードツリアブが頑張ってくれたようでたくさん結実しました(ネオニコチノイドは、昆虫のそのあたりの受容体に作用するのか、社会性をもつ虫に対しての影響が大きいように思います)。

 ところで、リンゴは自家不稔性に優れた果樹なので、2本ペアで植えることをオススメします(生物の多様性ということで言うと「不稔」は有利な特性で、不稔性を一方的に悪いこと、あるいは危険なことのように決め付けるのはおかしいように私は思います。ただし、種苗メーカーの収益向上のため自家採種されないようにとF1を作ることにはもちろん反対です)。
 また、品種改良?されたリンゴの中には生殖細胞が三倍体の品種(ジョナゴールド陸奥、緋の衣、ハックナイン、みさきなど)があり、これら三倍体の品種の花粉は(染色体の数が奇数なので)減数分裂できず不稔なので受粉樹にはなれません。そのため三倍体のリンゴは、受粉樹(アルプス乙女など)を別に植える必要があります。
 こうした三倍体のリンゴは、不稔であるがゆえに実のサイズが大きいなどの特徴があるものと推測されますが、まずは4倍体の品種を作り、それとかけ合わせることで減数分裂できない奇数の遺伝子を持った品種を作るなどという不自然なことをやってまでして大きなリンゴを食べたいか?ということは、消費者の側の意識の問題でもあり、食べものを自分で育てることのできる環境に住んでいる人は、ぜひ自分で作ってみてこうした状況を知っていただきたいと思います。
 ついでだからもうチョロと書くと、種なしのぶどうは未熟果のうちにジベレリンという薬品に漬け込むことで、生殖細胞を三倍体化させ不稔性を作り出しています(素人目には雄性不稔なんかよりもこちらの方が怖い気がする……)。
 また川魚のアマゴは、受精したばかりの卵をぬるま湯につけることで、卵子側の減数分裂を阻止することが出来、三倍体の個体を作ることができることが知られています(不稔の個体は大きく成長し、細胞の老化が遅く、美味しいとのことです)。
 ということで、ネズミの細胞を弱酸性の液体に漬け込むことで細胞を初期化できる可能性はゼロではないような気もしていたのだけれども、でもまたなんで、よりによってあんな大事なところにあんな写真を使ってしまったのだろうか? 


 話を戻します。無農薬で果樹を育ている上で、一番のポイントは食害する虫達たちとどうつきあっていくか?ということではないでしょうか? 

↑写真はブランコ毛虫との愛称もあるマイマイガ。嫌いな人も多いけど、私の中ではこの毛虫、かなり美しい種類の毛虫として分類されています。でも我が家では、これらの毛虫たちは可愛そうだけど、見つけるたびにそれを手作業で取り除いています。取り除く、というと、言葉は悪くないけれど……実際には虐殺。

↑果樹には写真のような竹で作ったピンセットが吊るされていて、幼虫たちは見つかり次第、なるべく傷みを伴わように一瞬で踏み潰します(でも虐殺であることには違いありません……)。
 今年はハマキクロバという蛾の幼虫がリンゴの木に大量発生してしまいました。名前の通り、葉を巻いてその中に潜んでいるので、それらも見つけ次第、踏み潰します。ただしハマキクロバの場合は、棲息場所が枝の先端部と決まっているので、その部分をハサミで切って集めることである程度まとめて数を減らすことができます(その分、光合成できる葉が少なくなるので、それを見越して、冬の剪定を弱めにする?)。

↑交尾中のリンゴハマキクロバ。成虫は、黒くてシックな蛾です。


 オビカレハやアメリカシロヒトリ、それにモンクロシャチホコなどは、若齢幼虫期に集まってネットの中で暮らすという特徴をもっているので、その時期を見逃さず、金属棒の先に灯油を染み込ませたものを作り、それで焼き殺します……(でも小枝をあんまり炙りすぎると枝ごと枯れてしまいます)。
 虫好きからすると、これらは決して楽しい作業ではありませんが、でもいまのところこうした作業をしないと、果樹は他の雑木と違って丸坊主になってしまいます。
 でも最近は別の方法も探っています。ひとつは、スズメバチアシナガバチのような肉食性のハチに手伝って貰う方法。また、リンゴの害虫として知られているモンクロシャチホコですが、うちの場合はすぐとなりにクヌギの木があって、また近くにはコナラもあって、どうも彼らはクヌギやコナラの方が好きならしく(メスが羽化した木から移動することなく産卵する可能性もある←ミノムガをはじめ蛾にはそうしたものが意外と多い)、一種類の果樹(バラ科)だけでなく他の科の木を混植させるというのもどうも良さそうな気がします。

↑そしてこちらはリンゴ。リンゴを袋掛する人は少ないようですが、リンゴも虫が入らないように、そして鳥が食べにくいように袋掛けしています。

↑そしてこちらが袋掛けの際、摘果された未熟リンゴ。未熟ではあるけれど、無農薬のためかペクチン酵母の力は強いようで、パンはよく膨らむし、煮汁を吊るして滴らせると、プルンプルンのアップルジェリーができあがります。

↑試しに作ってみたら、思いのほかいい感じに出来た摘果したリンゴの実で作ったアップルジェリー。透明度が高く、青りんごの香りでプルンプルン。

↑摘果リンゴの酵母(りんごと水だけ)で作った自家製ライ麦入りのレトロバケット。全粒のライ麦入りだと膨らみが悪くなるのだけれど、よく膨らみました。

↑奥の木枠は、煮込んだ摘果りんごを吊るすための枠。絞らずフリーラン(自然滴下)だけで、ひと晩吊るしておくと、濁りのない美味しくて美しいアップルジェリーができます。