Blog「自給知足がおもしろい」

自給「知」足と称した、貧乏くさい暮らしを楽しむためのブログです。

完璧な自給自足は目指さず、「テキトー」と「いー加減」をモットーにあまり頑張りすぎない、
そんな暮らし方がこの頃なんだか、とてもオモシロイ!と感じています。
自給「知足」的な暮らしは言いかえると「貧乏臭い・ケチ臭い暮らし」でもあります。

でも「ケチ臭いビンボー暮らし」も、そう捨てたものではありません。
ビンボー暮らしは、お金をそれほど必要としない暮らしとも言えます。
そのため、お金稼ぎの作業や仕事に長時間、拘束されずにすみ、
その分の時間を、ヒトが暮らすための作業に使うことができます。

農的で質素な暮らし方が可能で、それにより身近なことで幸せを感じることができたりもします。
また、昔ながらの農的な暮らしは、ヒトも哺乳類の一種として自然の生態系の中で
虫や草や菌類など他のいきものたちと共に生きる暮らし方だったりもします。

そして、こうしたテキトーでいー加減な自給的な暮らしをうまくやっていくポイントは、「知足」? 
人間の欲望は際限がなくてお金をたくさん得られても、たぶんどんなお金持ちになっても満たされません。
でも逆に、小さなちょっとしたことでも、とても幸せに感じられることがあったりします……不思議です。

日々の暮らしの中から「自給知足的な暮らし」を楽しむためのヒント? 
のようなものを、紹介できたらいいなぁ、と思っています。どうか、よろしく。


害虫と益虫、生物由来と化学物質


 ありがたいことに今年も、畑の近くの薪棚でコガタスズメバチの女王が巣作りをはじめてくれました。
 我が家は無農薬栽培なので、農薬の代わりに竹で作ったピンセットが各所に置いてあります。畑でアオムシを見つけるたびにこれでつまみ「戻ってこないでね」と声をかけてから、雑草街の方へ放り投げるのですが、スズメバチが巣を作ってくれると、この手間が省けます。スズメバチの成虫の多くは、朝から夕方までとても勤勉にアオムシ狩りをしてくれるのです。
 最盛期、大型のキイロスズメバチの巣には1000頭以上の成虫がいると言われています。その成虫が1日に3頭アオムシを狩ってくれるとすると、1日で3000頭。10日で3万頭のアオムシを狩ってくれるということになります。そう考えると、キャベツにアオムシがいなくなるのも当然のように思えてきます。
 さらにスズメバチは、ヒトに対する認識能力にとても長けた昆虫です。一度認識してしまうと家主を襲ったり威嚇するようなことはまずありません。その点、我が家にいらっしゃるお客さんには申し訳ないのですが、はじめてのお客さんの場合は、偵察のハチが挨拶にやってきます。顔の前でホバリングしたりしてその人の様子を伺うのですが、危害を加えるようなひとではないと分かれば、少しして飛び去ります。このときもし、ホバリングしながらアゴをカチカチ鳴らしていたとするとしたら、それは威嚇行動なので注意が必要です。巣に異様に近づきすぎているとか、人間が(あるいは他の生物が)スズメバチの嫌がる何かをやってしまっている(あるいはそれで気が立っている)ということが多いです。


 スズメバチの美しい左官仕事に見とれていたら、こんなニュースが飛び込んできました。
「クモの毒はミツバチにほとんど効果を及ぼさず、(クモの毒を使った)害虫だけを駆除する生物農薬が開発された」との研究論文が、4日の英学術専門誌の英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)に掲載された、とのこと。

元記事はこちらです。
「英ニューカッスル大学率いる研究チームは、オーストラリアに生息するジョウゴグモの毒とユキノハナ(植物)のタンパク質から作った生物農薬が、ハチにほとんど効果がないことを突き止めた。
「ハチが野生で経験する以上の量を、急性的及び慢性的にハチに投与した結果、ハチの生存能力には極めてわずかな影響しか見られず、学習と記憶の能力には測定可能な効果を全く示さなかった」とニューカッスル大学は声明で述べた。また論文によると、成体と幼虫のいずれも影響がみられなかったという。この生物農薬は、複数の主要な害虫種にとっては極めて毒性が強く、その一方で人体には有害でないことがこれまでの研究で示されている、とのこと。

 うーん、どうなんだろう? 
 生物由来の農薬だから安全、あるいは、ある種の昆虫に対する選択毒性のある農薬だから大丈夫……というのは、どうもちょっと違うと私には思えてしまうのです。
「化学物質」という言葉があるけれども、この場合の「化学」という言葉の定義ははっきりしていないし、ヒトが物質を人工的に作り出しているようなニュアンスで捉えられていることが多いようなのですが、それはヒトという生物のおごりのように私には思えます。
 極悪非道の物質のように言われる有機溶剤だって、あるいはガソリンだって、(多くの場合)元は石油から作り出されたもので、その石油は人が作り出した物質ではなく、元をたどれば生物由来の物質だと言うことが、葉緑素関連のバイオマーカーが検出されたことで中生代の植物由来であることがほぼ決定的と言われています。
 生物由来だったり鉱物由来だったりするすでにある化合物を、違う方法で作り出したり、あるいは、たくさんの物質が混沌としている中からその物質だけを抽出することに成功した、というだけで、ヒトは新しい物質を作り出せるような特別な生きものではありません(高速増殖炉のような環境で極短時間、新しい原子を作り出したとしても、それにもベースとなる物質がないとできないわけです)。

 生物由来であれば安全、というのであれば、手っ取り早い話、トリカブトの抽出液を農薬として散布すれば、多くの昆虫を殺すことが出来、そしてそれは安全、ということになってしまいます。
 
 選択毒性ということに関しても同様。スズメバチの例を出すまでもなかったのですが、人間は自分たちの(表面上の)都合だけで簡単に「害虫、益虫」などと白黒判断してしまいがちで、選択毒性という考え方には「生態系」という概念が抜けていて、そこがどうも気になります。

 それともうひとつ気になったのは……、
「(この新しい農薬を)急性的及び慢性的にハチに投与した結果、ハチの生存能力には極めてわずかな影響しか見られず、学習と記憶の能力には測定可能な効果を全く示さなかった」という実験をしていると、ニュースにはあるのですが、と、いうことは、従来型の農薬(ネオニコチノイド系)は、研究者の間で昆虫たちの学習能力や記憶能力に影響を与えるということが認知されている、という事実を逆に証明しているようなものではないでしょうか?

 にもかかわらず、日本ではいまだに、ネオニコチノイド系の農薬の使用が規制どころか推奨されているのが現実だったりします。EUではすでに全域で、使用禁止になっているというのに……。


閑話休題。写真は、スズメバチの巣のすぐ近くで見つけたキバネツノトンボです。トンボという名前が付いているけどアミメカゲロウ目。おそらく、毒蝶であるウスバシロチョウに擬態しているものと思われます(こうして止まっている姿だとあまり似てないけど)。
 ウスバシロチョウは、プロトピンと呼ばれる毒をもつムラサキケマン(ケシ目)を食草として、その毒を幼虫は体内に蓄えると言われています。成虫になってもその毒は消えず、そのために、ウスバシロチョウは(他の個体が命を賭して鳥に学習させてくれていることで)天使のように優雅に舞うことができるのです。そしてその優雅な舞いがツノトンボの生態にも影響を及ぼしていたりします。
 自然の生態系って深くて本当に面白い!