韓国・自作ストーブの旅⑩ベースバーニングからの続きです。
日本からやってきたむさくるしい男が3名、座っているのは、キムチなお尻にとても優しい暖かなベンチです。
その気持ちよさは格別。生マッコリなどなくても、一度座るとなかなか立てなくなってしまうほど。そしてこれはオンドルではなく、ロケット(マス)ヒーター。アップドラフトとダウンドラフトを巧みに使うことで、排気の横引きを可能にしたロケットストーブの一種です(というか、こちらのストーブこそロケットストーブの本家本元)。こうした大掛かりなヒーターも、イベント「私はストーブだ」には展示されていました。
↑焚口付近はこんな感じ。長い薪は、手前の黒いフタの部分から入れるようでした。つまりここは吸気口ではないのです。
↑この半球形の金属のフタは、切り取られたプロパンボンベの上部です。なかなか美しい形で、ふたにはピッタリですね。そしてここも吸気口ではありません。
↑プロパンボンベのフタを取ると、こんな感じの穴があいています。奥の右隅にある穴、ここが吸気口とのことでした。で、吸気はどこから取っているか?というと……。
↑ここ。室外から吸気を取り入れる構造なのです。しかも流量を調整できるバルブ付き。外気を取り入れている理由は、室内の空気を燃やしてしまうと室内の気圧が低くなってしまって、スキマ風を拾ってしまうけれども、外気を燃やせば、室内は外より暖かくなっているので外よりも気圧は高く、(暖気がでていくことがあっても)冷たい風が外から入ってくることはない、というシステムです。
↑模式図がありました。韓国はレンガが安いということもあって、基本構造はほとんどレンガで作られています。そしてその上に、粘土を塗り重ねるという方法。模式図ではヒートライザーのトップの部分のレンガがひとつなくて流れる方向に排気を導く構造になっていました。
↑隣の部屋に作っている途中の焚口がありました。この部分は他のレンガと違い、目地の色も違うので耐火レンガ&モルタルが使われている可能性があります。
↑こちらはヒートライザーのトップ部分。ヒモで(乾くまで?)引っ張られているようでした(焚いたら燃える?)。でも、模式図にある切り欠きはありません。どっちでもいいのだろうか?
↑畜熱ベンチ部分。煙道をひと筆書きで作るのではなく、ふたつある通路の両方に流れる構造のように見えます。実際に座らせてもらったら、焚口のすぐ横、一番上の写真でグラスを片手に坂本さんが座っているあたりが一番熱くなっていました。
↑煙突は奥の端に立ち上がります。ここへの流れ込みもどうなっているのか不明。今回はロケットストーブの専門家、石岡さんも行かれているので、このあたり石岡さんのブログで紹介されるかもしれません(紹介されたらリンクを貼らせていただこうと思います)。石岡さんどうぞよろしく!
↑面白いなぁ、と思ったのはこの掃除口。日本だとこの掃除口だけでも高価だったりするのですが、韓国のこれはステンレスのお弁当箱の流用品のようでした。
↑こんな風にドラム缶ストーブの焚口にも使われていたりします。おくどさん(土かまど)を作るときにも使えそうですね。
↑韓国は良質の赤土がどこでも取れるということもあってか、セメントは使われず、赤土と砂と石灰の組み合わせでレンガを組んでいることが多いようでした。
で、その割り合いを教えていただきました。一般的には赤土1、砂3、石灰0.6〜0.8とのこと。ただし、赤土の質によって砂の量は変わってくるとのことで、砂の含有量の多い赤土の場合は砂2くらいがちょうどいい場合もあり、とりあえず赤土1、砂2くらいではじめて、水を加え握ってみて固まったものを1mくらいの高さから落とし、割れないくらいがベスト、とのことでした。
↑ロケットストーブの他、こんな感じの柱型ペチカもありました。右はその模型。
↑組み方の順が紹介されていました。どうも焚口が縦に長いダウンドラフトストーブのような構造のようでした。このあたりも私には解読不能なので、分かる方いらしたら解説お願いします。
↑これは柱状ペチカの焚口付近の模型。ロストルの下が奥の煙道とつながっている構造でした。
↑上部はこんな風にかなり複雑な構造になっていました。
ところで、「私はストーブだ」のイベントでは毎晩、参加者たちが集まって、意見交換が行われていました。
写真は、HajaCenterの若者たちによる歌と演奏。まずは音楽があって、その後、熱い意見交換がかわされます。
↑この地域の知事によるあいさつ。会場の貸し出しや補助金など、地方自治体からの力強いサポートがあるのです。このあたりが少し羨ましいところ。今回の会場はこのまま、適正技術を学ぶための学びの場、として使うことになるそうです。ちなみに知事は自分で畑を耕すことを趣味にしているとのこと。日本の知事でそんな高尚な趣味のひと、いるのだろうか? 運動音痴丸出しの不恰好な姿で、除草剤たっぷりの芝生の上で、玉を入れる遊びに興じている首相の姿はまさに醜怪。
参加者による話し合いは、このイベントをどうやって続けていったらよりいいものになるか、と言った提案。あるいは、自作したことによって、気が付いた技術的なことの発表、それに疑問点に関しての質問。こうしたことに関して、熱い話し合いがかわされます。
ただし「自分のストーブの単なる自慢ではないということ」これは主催者であり司会者であるソンウォンさんから強く言い渡されます。
最初に専門家(プロのストーブ屋さん)からの意見が出されました。専門家の方たちが言われていたことのひとつは、ストーブの密閉性をもっとしっかり保ったほうがいい、ということでした。意図した空気の流れを作る上では密閉性が大切で、吸気口を閉じたら、すぐに火が消えるくらいの密閉性のあるストーブにして欲しい、とのこと。密閉性は、ダウンドラフトやベースバーニングの、そして二次燃焼のためのキーポイントともいえそうです。
二次燃焼に関しては、パイプを通して穴をあければどこでも二次燃焼すると勘違いしている場合があるのでは?という指摘がありました。二次燃焼が起こる条件をしっかりと整える必要がある、との指摘です。
また、ストーブ内でできるだけ熱交換させようと、煙突での排気温度を不用意に下げてしまうと、結露が起こりタールが発生する。そのため、燃焼室はできるだけ高温にしておいて燃焼効率をあげた上で、排気バルブを操作しあけるようにできるといい、とのこと。そのためにはバイメタルを使ったバルブを使用するといい、とのことでした。
そうしたことを踏まえたうえで、投票が行われ、各賞の優勝者が発表されます。また、それらの賞にも楽しいものがたくさんありました。以前紹介した「プロパンボンベ流用賞」もそのひとつですが、「人柄賞」もそのひとつ。ストーブ自作の技術ではなく、友達や仲間との友情の最も篤い人に贈られる賞だそうで、賞金はなんと100万ウォン(約10万円)も送られます。
↑彼がその賞の受賞者。いかにも人柄良さそう! 100万ウォンも手にするのですが、でも残念ながらこの賞を受けた人は、なにぶん人情に篤いから、その日の飲み会が終わったときには賞金はそのままお店のレジに消えているはず、とソンウォンさんが解説してくれました。なるほど!
そして、今回の「私はストーブだ」の優勝作品がこれ。
ストーブの隣に合った解説文を、自由の森に留学していたソンイルに訳してもらいました(ソンイルありがとう!)
1。1次&2次空気の吸入で高温燃焼させる(気密調節口を作り流入量を調節)
2。火室 下段部と火首の位置までレンガなどで高温燃焼構造を具現
3。燃焼室で熱気通路を作り蓄熱材使い熱利用率が良く、煙突に抜けて行く熱の損失を最小化
4。一般燃焼方式から熱の上昇後、再び下降して、上昇しながら熱の滞留時間を増加
5。直行2次 2つのダンパーで着火時、煙の逆流を防止
6。火室の側面の下段部と煙道の下段部に気密性に優れた掃除口を作り 掃除が容易
7。ストーブ全体の気密性を保てるように設計されていて、高い安全性を保障。
8。材料にはステンレススチールを使用し、耐久性が高く管理の便利性を向上させている。
基本構造は、オーソドックスなアップドラフトタイプ。蝶々のバルブがポイントで、燃焼が安定するまではこのバルブを開いておき、安定してこのバルブを閉じると、燃焼室周囲の煙道を循環し、燃焼室を保温すると同時に、排気で熱交換を行う、という構造のようです。
これでやっとイベント「私はストーブだ」はおしまい。
次はアースバックとロケットストーブです。