韓国・自作ストーブ&オンドルの旅②からの続きです。
ソウル市内、ヨンドゥンポ・シジャンにあるユースホステルの隣には立派なレンガ作りの建物がありました。レンガの建物自体は洗練されているのですが、建物の一角にはちょっとそれとは不釣合いな感じで、煙突が林立するスペースがあったのでした。よく見るとそれら、ひとつひとつが自作ストーブなのです。この地域はソウルの中心街で、韓国KBSや国会議事堂も近くにあったりします。
このレンガの建物はHaja Center(ハジャセンター)と呼ばれ、ソウル市が支援する学校を含む社会的創造的起業の実践の場だそうです。Haja Centerには、日本の非電化工房に在籍していたというPocoさんという方がいらして、内部をていねいに案内してくれました。
ところでPocoさんという呼び名は通称、ニックネームです。韓国では儒教の教えが色濃く、いい面もたくさんあるのですが、一方で年齢による上下関係が厳しく、普通の学校では生徒は教員のことをニックネームで呼ぶようなことはないそうです。
最近の話題では米国で着陸に失敗したアシアナ航空の若いパイロットが「いくら夕日がまぶしくても先輩パイロットの前でサングラスをかけるわけにはいかない。それは年上の人に対して失礼にあたる」と証言したというニュースが新聞に載っていました。厳しい席ではお酒も、年上の人の面前では飲むことができず、後を向いたり手で口元を隠しながら飲んだりするそうです。徴兵制による弊害との見方をする人もいるようです。
一方、Haja Centerの生徒たちは、教員も仲間もニックネームで呼ぶことが多く、肩書きや性別、上下関係で差別しない平等な関係を求めているそうです。そういえば日本の自由の森も、ゲッチョだとか、モルゲンだとか、ミゾリンなどと教員や校長は生徒からニックネームで呼ばれています。
ただ、自由の森と少し違うのは、より実践に即した学びが行われている、というところ。元々は芸術系の学校だったとのことで、現在も芸術家や社会的な活動家が社会に出て食べていくための活動を支援する場にもなっていて、ストーブを自作するような講座もあるし、旅行を企画したり実際に旅することで学びを深めるフェアツーリズムの講座、起業のためのアルケミスト講座、あるいは実践的な料理学校やひきこもりの人たちを音楽を通じて開放する講座なども内包しています。
さらには、芸術的だったり社会的だったりする取り組みを起業するにあたってのスペース(事務所や作業場)を格安、またはタダで提供していたりもするそうです。こうした場を、ソウル市という自治体が応援してくれているところにちょっと羨ましい思いと共に見学させていただきました。日本ではこうしたリベラルで個性的な私学や活動は、なぜかその地域の自治体からの支援を受けにくい状況にあったりします。
↑建物に入るとすぐ、発電自転車がありました。美味しいアイスクリームを食べるため、冷凍庫の電源を補う、という楽しいシステムのようです。
↑後輪に永久磁石とコイルを使った発電器が取り付けられているのですが、コイルはどうも手巻きのようでした。
↑ひとつひとつは粗大ゴミから回収されたような廃品だったりもするようなのですが、全体に調和して、とても美しいデザインのカフェがあったりします。こうしたカフェがいくつかあって、生徒たちが運営していたり、週単位で持ちまわりでワークショップなどの企画を行ったりしている、とのこと。料理も料理講座の生徒たちが作っていたりするそうです。
韓国の人たちは、「これはいい」と思ったら一気にその方向に進む行動力があるような気がします。
こちらはミミズコンポスト。カフェのすぐ脇に設置されています。
韓国・自作ストーブ&おんどるの旅④「無煙かまど」に続きます。