ここ八ヶ岳山麓でクヌギやコナラなどの落葉広葉樹を「新月伐採」で「葉枯らし」しようとすると、11月の新月しかありません(ただしクルミやミズキは葉が落ちるのが早いので10月の新月の方がいいかも?)。
(2013年の)11月は3日の21時50分が新月でした。そんなわけでこの連休、八ヶ岳山麓で自給的な暮らしをしている人たちは、木の伐採をした人が多かったようです。
海洋生物同様、植物たちも月による引力の変化をとらえる能力を持っているのでしょうか? 新月に伐った木は、デンプン質が毒性のあるフェノール類に変化し、カビなどが発生しにくいなどと言われていたりします(新月と満月とで水分量はそれほど変わらないというデータが最近は多かったりします)。
↑写真はコナラ。このあたりの太い木は、根元あたりで曲がっているものが多く、1959年の伊勢湾台風のときに土石流があってそのため、などと言われていたりします。この木は裏の林の中で一番高い木でもあります。Photo by sara,
↑森の中にはこんなオブジェもあってつぶしたくないので、まずは木が倒れたがっている方向をしっかり見定めなければいけません。そして倒したい方向に受け口を刻みます。木が倒れたがっている方向と、倒したい方向が一致しない場合は、木のできるだけ上の方にロープを掛け、ウインチなどを使って引っ張ります。
また、木は倒してみると思いのほか高く、思いも寄らないところまで影響が出たりするので注意が必要です。
受け口の下側は水平に刻むのが正しいとも言われているのですが、どうもそれだと上下の切り込みのラインをピッタリ合わせるのが難しく、深くなりすぎてしまったり、ツルの部分にまで切り込んでしまったりすることが多いので、私は上下ともに傾斜させてしまっています。
建材にしない薪用あるいはキノコのほだ木用の場合は、チェーンソーが一番使いやすい高さで切って、伐ってから根元あたりでもう一度伐る方が伐りやすかったりします。
↑こんな感じ。慣れないうちは一発で決めようとせずに、小さな受け口を作ってそれを拡大していく方法をオススメします。Photo by sara.
↑そして最後に追い口を入れます。受け口と追い口の間の最後まで残る部分はツルと呼ばれ、この部分が平行に残るように少しずつ慎重に追い口を刻みます。ツルがちょうど蝶板のシャフトの代わりになるように追い口を刻むわけです。Photo by sara.
↑木は生えているときでも、樹幹の細胞のほとんどはすでに死んでいると言われています。生きているのは4%前後で、その他の細胞は死んでミイラ化し骨格を支えていると言われています。自然の生態系の中で生き延びるにはそれくらいにある種の効率を最優先しないといけない、ということだと分かってはいるのですが、しかしそれでも木が倒れる瞬間と言うのは、心が痛みます……。
↑少し受け口が大きすぎですが、ツルの部分はまあまあ、まっすぐに残っていて、素直に倒れてくれました。コナラやクヌギ、クリなどのケルクス類は、切り口から甘い芳香が漂います。……ありがとう、そして大切に使わせていただきます。
↑切り口を整え、心材の真ん中付近にお塩を盛ります。塩は材を菌による腐敗から守り、再萌芽を促すためかもしれません。
↑倒れた木を計ってみたら、樹冠まで18mありました。三階建て住宅の屋根までの高さは普通10m以下なので、それよりもはるかに高いことになります。下から見上げるとそれほど高くはないように見えるけど、立ち木は倒れると思いのほか長い、ということを認識しておく必要があります。
↑こちらは2年前に伐採したコナラ。伐採した切り株からひこばえが成長し、5mほどの高さの木に成長しています。コナラやクヌギ、アベマキ、それに南方系のカシ類などは再萌芽性が強く、これらは膨大な年月をかけてヒトによって品種改良された植物ともいえるのかも知れません。化石燃料が普及する前、ほんの100年前まで、これらの樹木は何千年、もしかしたら火を使って調理をしたりあるいは土器を焼いていた縄文の頃から、稲作よりもさらに前から人と共に生きてきた植物たち、とも言えるのかもしれません。