捨てられてしまうものに価値を開く人たちの集い

 何日か前に和歌山の岩本さんから電話がかかってきたのでした。
「新潟に地域循環型の樵(きこり)を目指している鈴木さんっていう面白い人がいるんだけど、その人のボンゴを天ぷら廃油仕様に改造することになって……ちょうど中間地点にわたなべさんちがあるんで、今度の火曜日、場所をつかわせてもらえませんか?」
 和歌山と新潟の中間地点が白州かどうかはよく分からなかったのですが、なんだか面白そうなので「いいですよぉ」と返事をしたのでした。
 で、その日の夜になって……、そうだ、どうせだったら、天ぷら廃油カー製作の見学会にしよう! と思い立ち、WVO(ウエスト・ベジタブル・オイル)のメーリングリストに投稿したのでした。
 でも、考えてみたら今度の火曜日(22日)はその時点で4日後。その間にくう・ねる・のぐぞもあるし、平日の昼間にやるワークショップに果たして人が集まるのだろうか?と思いつつ当日を迎えたのでした。

 でもね、平日だというのに、集まって来るんですね変わりものが、じゃなかった、面白い人たちが……。今回の特徴は、木や植物にかかわりを持つ人が多かったこと。きこり、大工さん、建具屋さん、いままさにセルフビルドで家を建てているメキシコ舞踊の先生、ツリーハウス&タイニーハウスビルダー、それにあの(坂本コウタロー夫婦を産んだ?)愛農学園の元先生……。

 とりあえずは、今回の改造内容をザックリ紹介しましょう(実は肝心なところなのにほとんど写真を撮り忘れた……)。両手を広げる岩本さんの真ん中あたりに、リザーバータンクがあってその手前の黒いものが6ポートの電磁弁(写真をクリックすると拡大されます)。そしてリザーバーをはさんで反対側が熱交換器。天ぷら廃油は暖めることでディーゼルエンジンの燃料に使えます。
 今回作ったシステムは、2タンク方式で純正のタンクに純正の燃料である軽油を入れ、それでエンジンをかけ、エンジンのラジエター水が暖まったところでそれを使って天ぷら廃油を暖め、燃料として使おうという寸法。6ポートの電磁弁は、エンジンが暖まってきたら、軽油から天ぷら廃油に燃料を切り替えるのに使います。

 岩本さんの作るこのシステムの素晴らしいところは、天ぷら廃油専用の燃料フィルター(熱交換器付き)が、軽油用とは別にセットされるという点。つまり、2タンク方式であると同時に、詰まりやすくトラブルの原因となりやすい燃料フィルターもふたつ搭載し、軽油と天ぷら廃油とでは別々のフィルターを使っていて、もしも天ぷら廃油用フィルターが詰まったとしても電磁弁で簡単に軽油に切り替えることができるので、出先で動けなくなってしまうというトラブル回避ができる可能性が高い、ということ。
 また、使用する6ポート電磁バルブは電流のオンオフによる切り替えではなく、オフ時には電気の向きを逆転させることで、流量の多いときでも確実にシャットオフできるタイプの電磁弁を使用しているとのこと。以前はこの部分がトラブルの原因(完全に閉じなかったので、軽油に切り替えてもベルヌーイで天ぷら廃油が引かれてしまい、天ぷら廃油のタンクが空になり配管内にエアが入り、軽油までもが送られなくなってしまう)になっていたりしたいのですが、そうしたことがこれまでの経験を通して改善されています。

↑こちらは、天ぷら廃油用の燃料タンク。行きと帰りと、それと細いパイプは恐らくエア抜き用。これがないと吸えなくなったりするのでした。

↑そしてこちらは、かなりいい加減で適当なオンボロジープわたなべ号。自作熱交換器と、ヒモで三方弁のレバーを変更するタイプ。そのほか、ドラム回転式のコンポストトイレやいま建築中の折置き組みの住宅、ソーラーパネルやパッシブソーラーのことなどを紹介させていただきました。
 しかしそれでもやっぱり、突然のお誘いで、平日だし……来たくても来れなかった方もいらしたようです。

 で、そうした人たちは分身で参加。兵庫の熊谷さんからは、ひと粒ひと粒が巨大で素晴らしくおいしい黒豆が贈られて来たのでした。


 さっそく、カマドで茹でて美味しくいただきました。見てください、この弾けそうなくらい立派な豆を! 美味しかったぁ、ありがとうございました。

 そしてその数日前には、広島の秦さんからバナナの葉で包まれたムクロジの実と雑穀で作ったというお酒が。八ヶ岳の仲間で分けさせていただきました。タネを加工して使われる人が多いようです。
 お昼はぬかくど&ダッヂオーブンでターメリックライスを炊いて、沙羅とさとみさんが前日から仕込みをしてくれた南インドのひき肉のカレーとサモサ。ちょうど畑にコリアンダーがたくさんある時期で、フレッシュコリアンダーリーフをたっぷり添え、写真を撮るのをすっかり忘れるくらいに美味しかったです。

 そしてさらにさらに、今回の醍醐味は別のところにもありました。前日夜のメーリングリストで、戦後の拡大造林の森を憂う思いと共に、大工であり、きこりでもある鈴木さんが、森の手入れのために木登り用ハーネスを先週買ったと書いたら、当日の朝、高尾に住むツリーハウスビルダーの竹内さんが「じゃあ、木登りの道具を持っていきましょうか」……ということになり、木登りワークまで行われることのなったのでした。
 たまたま裏の林にのっぽなオニグルミの木があって、それにロープを仕掛けたのでした。でもどうやてあの高い木の枝にロープを仕掛けるのか?

↑それにはこの赤いヒモを使うのでした。スローラインと呼ばれるこのヒモは長ーいヌンチャクのような構造で、両端にスローバックと呼ばれる分銅が付いています。このバッグはスローラインキューブと呼ばれ、コンパクトに折りたたむことができるのですが、分銅を入れるポケットが左右にあってラインが絡まない構造。なかなかよくできているのでした。

↑で、スローバック(写真の黄色の分銅)に付いているリングにラインを通し、写真のような状態にして、分銅を前後に振り、「天下」(知っている人少ないだろうなぁ)のように股下から分銅をアンダースローします。

↑これは投げ終わった直後のカット。分銅は木のテッペン目指して飛んでいき、キューブの中のラインがスルスル出て行きます。
 こうして分銅が枝を捕らえたら、ラインを緩めて降ろし、そこにクライミング用のロープを付けて、スローラインと交換させるわけです。面白かったのは木の上での分銅の動きで、竹内さんがやるとまるで生き物のように隣の枝をかわしたりするのでした。もしも絡まりそうになったときには早めにあきらめて、ラインを緩め分銅を降ろし、ラインから分銅を外してラインだけにして引っ張ればたいていほどけるそうです。
 で、クライミング。さまざまな登り方があるようですが、今回は極力道具を使わない方法(ただし足には専用の道具を装着)で、メインのラチェット機構はロープの摩擦を使う方法(フリクションノットを使う方法)で行われました。

↑右足を伸ばすと体が上にあがります。結びを上に移動してまた足を伸ばすと体が上にあがるという仕組み。動滑車の仕組みと同じで、ストロークは半分だけど、その分、半分の力で自分の体を持ち上げることができるので簡単! と言いたいところですが、必要ないところにまで力が入っていたようでこれを書いているいまも体中、筋肉痛だったりします。

↑でも、サルのような娘は、途中から要領を覚え、スルスルと頂上付近まで言ってしまったのでした。いろいろなことが子供に追い越されるというのは、なんとも複雑な気持ち。

↑で、WVOの改造もそこそこに、岩本さんもこちらにやってきました。長い足を使ってスルスル。以前、ロッククライムをやっていたとのことで、みんな守備範囲広すぎ。

↑そして最後に、ツリーハウスビルダーの竹内さんに模範演技を演じていただきました。ロープにぶら下がり振り子のように体を揺らして隣の枝に移ったり、まるで洋服を着たサル。実際の作業では枝を吊りながら木の上でチェーンソーを使って枝を落としたりするそうです。
 しかしそれにしても天ぷら廃油はどうして、こんなにも面白い人たちを引き寄せるのでしょうか? WVOはウエスト・ベジタブル・オイルの略なのだけれど、伊豆の神さんが言われたように「ウエスト・バリュー・オープン」(捨てられたものに価値を開く)と意訳することもできます。そしてどうも「捨てられてしまうもの」というあたりにどうもその秘密があるように思えるのです。
 大量生産大量消費という忙しさの中で考える余裕さえも奪われ、1%のお金持ちの元にだけお金がどんどん集まるという社会システムから外れて、もっと自分らしい生き方を楽しむという人が、少しずつだけど確実に増えてきているように思え、ちょっとうれしくなった見学会だったのでした。モウレツな筋肉痛にはなったけど……。