あるイベントに参加するため、先週末はオンボロ天ぷらカーを駆って安曇野に行ってきました。
↑この写真はそこで撮ったワンカット。
奥の白い葉っぱはヤナギ科のギンドロの枯葉。真ん中はクズの枯葉で、手前の斑点のある枯葉はオオバギボシ。ここまでだと押し花(葉)なのですが、さて、真ん中左の茶色い物体はなんでしょう?
答えはノウタケ(ホコリタケ科の大型きのこ)の軸……。察しのいい人はこれらがなんなのか?分かったかもしれませんね。
そう! これらは「くう、ねる、のぐそ」の著者である伊沢正名さんが(野糞の際に)推薦する「お尻で感じる快適な葉っぱ&きのこ」なのでした(←林の中に緑の葉がなくなる冬季用)。
上の写真はビロウドモウズイカ。我が家や井上家ではこれが最高とされていて、これを持ち込んだのですが、伊沢師匠曰く、「あー、これは5段階評価4ですね」とバッサリ。確かに、ひと晩たって少ししなっとしたキリの葉っぱだとか、ノウタケの軸などは思わず頬ずりしたくなるくらいのしなやかさでした。
人がする野糞の最大の欠点は、近くにティッシュが置かれていることではないでしょうか? でも葉っぱなら分解も早いし、目障りにもならない。埋めてしまえば目にも付かない。しかも、葉っぱを選ぶことでトイレットペーパーよりも快適。ぜひぜひ葉っぱ(今の季節で身近なところでは、ひと晩置いて少ししなっとしたクズやキリ)を試してみてください。
ウンコは良識の踏み絵であり、ウンコをどう扱うかで「命の還しかた」が問われるのです、という信念をお持ちの伊沢さんは、ウンコのことや、野糞の話をする際、本当に幸せそうな顔をされます。もうそれを見ているだけでこれまでの固定観念は溶融し、ウンコのことを汚らわしいもの、と思ってしまっていた自分が情けなく感じられるのでした。
早寝早起きが基調のシャンティクティとしては異例、菌類やきのこの素晴らしさ、あるいはお尻で感じる植物談義に老若男女、時間を忘れて知らぬ間に夜が更けていったのでした(こんなテーマなのになぜか素敵な女性が多かった! いや、野糞がテーマで、それに興味をもつ女性だからこそ素敵な人が多かったのかもしれません)。
↑たとえば、葉っぱを携行する際の入れ物について。
「わかめスープ」の厚紙である必要はないとのことでしたが、適当な厚紙であるということは必要で、ビニール袋では蒸れて傷んでしまうし、薄い紙にはさんだだけでは乾燥しすぎてパリパリになってしまうのでそれもよくない。写真のような厚紙を利用し適度に湿度が保たれるように周囲を折り、その状態で携行するのがベストとのことでした。
↑翌朝、まずは「正しい野糞」の実習から。
ところが雨! でも千日行を達成させれている伊沢さんにとってはこの程度の雨は屁でもないようでした(台風や雪などより、つらいのは真冬の夜の下痢だそうで、ふとんから抜け出し、防寒着を羽織ながらも腹筋を使って肛門を絞り続け、野にまで出かけるときが一番辛いそうです、、が、「苦楽は相伴う」で、それまでが辛ければ辛いほどにその後の開放感は素晴らしいとのこと、なるほど!)。
↑人に迷惑を掛けないためにも、穴を掘ってその中にいたすのが、伊沢流の正しい野糞。で、その際、気をつけたいのは穴に対する立ち位置。カカトとカカトを結ぶ線上に穴の中心が来るように座るのが正解とのこと。ウンコ座りした際の肛門の位置は意外と後ろなので注意が必要とのことでした。
↑とにもかくにも、伊沢さんのウンコ座りには安定感がある(撮影:臼井健二)。
伊沢式は葉っぱで拭いたあと、仕上げに水で流すのだそうです。そのための容器としては、ペット素材のポケットサイズウイスキーが便利とのこと。伊沢さんはいつもウンコ4点セット(虫よけ、葉っぱ、小型のスコップ、そしてペットボトル)の入ったウエストポーチをお持ちなのでした。。
↑そして最後の仕上げ。ここにウンコ、「入」ってます? マーキングを忘れずに! この枝が腐る頃には内部のウンコも分解されているので掘り返しても大丈夫。
↑そして臼井さんによる、シャンティクティ・エコツアー。新たな建物が加わり、さらには今話題のベーシックインカムの話が入っていたり、いつ聞いても新鮮な気付きがあるのでした。ついでに、わたなべの天ぷら廃油自動車のカラクリなんかの話もさせていただきました。
↑パーマカルチャー塾の今年の建築実習で作っているエネルギー自給型モバイルハウス。タイヤ付きなので建築基準法にとらわれずにすむし、移動可能でもあるし、若い人が都会を離れて田舎で農的な暮らしをする際の最初の拠点として最適な建物のように思いました。
↑そして、アースバッグハウスの奥にはSeedハウス。現物あわせの手作りならではの見事なデザインバランス。
↑螺旋階段に沿って、シードを並べる棚があり、すでにたくさんのタネが並んでいました。
↑ストローベイルに代わる、新しい発想、日本ならではの古畳断熱。
↑さて、この穴はなんでしょう? これはシャンティクティの新しい取り組み。ロケットストーブを使った露天風呂ができる予定とのことでした。
↑最後に臼井ともこさんが、伊沢さんのきのこ本の読み聞かせをしてくれました。「食べられるきのこかどうか?」ばかりに気をとられてしまう人が多くて、きのこや菌類の本来の素晴らしさに気づいていない人が多い……、ということが伊沢さんが糞土師になった動機のひとつとのことで、それを思いながらこの本を読み聞かせてもらうと、こみ上げる思いがあって涙をこらえるのが大変でした。
↑ハナオチバタケ(撮影:伊沢正名)きのこはきのこの目線で捕らえるという視点。
人は他の生きものの命を奪いそれを食べることでしか生きていけません。だからと言って、口先で「(命を)いただきます」とだけ唱えればそれで許されるというものでもない……本当に心からいただく命に感謝しているのであれば、命の還し方として、決して排泄物のことをないがしろにはできないはず。命をいただきそれに報いるためにも人は自らの糞や死体のことをタブーにしてはならない……、その後、話し合いは、人前ではなかなか話す機会のない死生観にまで及び、死生観に関して考え方はそれぞれに違うけれどもそれらをそれぞれ認め合い、違うことを共有するということができたように思えて、私にとってはこれまでにない充実したダイアログでした。
伊沢さん、そして参加されたみなさん、ありがとうございました。またいつかどこかでお会いしましょう! あの雨の中、てんでに林の中に四散し、野糞を恥ずかしいものではなく素晴らしいものと感じ、いたした仲間として!