くう・ねる・にわくそ……究極のコンポストトイレ?

 尊敬する日本人のひとりに、伊沢正名さんという方がいます。伊沢さんは現代の日本で、千日行に成功された方です。なんの千日行かというと、それは……野糞。
 都心のホテルに泊まった際も、近くの公園などで野糞を続け、ついに千日行を成功されたという、正真正銘の糞土師です。
 乗ってきたラクダ以外、遮るものは何もない、というゴビ砂漠で、夫婦そろって野糞をしたり……、標準的な日本人からすると私もかみさんも野糞数は多いほうかもしれません、が、糞土の香りは愚か、味まで試したという伊沢さんにはとてもとてもかないません。興味のある方はぜひ伊沢さんの著作「くう・ねる・のぐそ」を読んでみてください。
 ところで最近は、自分の排泄物を海に流してしまうことに抵抗を持つ人が増え、自作のポータブルタイプのコンポストトイレが注目されているようです。「自然にカエル」という非電化の生ゴミ処理器を使用するのポイント……でもこれ少々、高価なのです。
 一方、我が家でいま、愛用しているのはコレ。

 値段も比較的安く(3000円弱)、とてもシンプルなポータブルトイレ
 軽いので持ち運びも楽チン。軟弱のぐそ人は、これと、お湯と、最後に濡れたお尻を拭くためのタオルを持って出かけます。

↑とにかくシンプル。内部にはバケツが付いているのですが、それを外すとこんな感じ。シンプルだということは汚れにくく、掃除も楽だったりします。

↑使い方は簡単。同じ場所でしばらく使うなら(快適な場所というのは案外、限られています)、芋掘りスコップで穴をふたつあけます。ひとつはおしっこ用、もうひとつはウンチ用。おしっこ用は浅め、ウンチ用は深めに掘ります。量が増えてきたとき、堆積したウンチにオシッコをかけない方がウンチの分解は早いようです。

↑人が多い地域では、こんな風にビニールハウス用支柱を立て、そこにシートやよしずを巻いて目隠しをはかるのもいいかもしれません。いまは桃の追肥を兼ねてモモの木の近くに設置しています。近くの農家のおばあさんは、毎朝、ご自分の畑(遮るものは少ない)で、トイレをされていて、尊敬していたのでした。
 実際に使ってみた感想としては、洋式トイレに慣れてしまった身からすると、とにかくこれ快適。
 気弱で軟弱なのぐそ人としては、便器なしでただしゃがみこむだけだと、なんだか落ち着かず、ゆっくりする余裕もなくて、そそくさと済ませてしまうのですが、これを使うと、時間の流れが突然ゆったりとして、ウグイスのさえずりが耳にはいってきたりします。ウスバシロチョウがふわりふわりと、まるで天使のように周囲を滑空したりもします。

 ウォシュレットは付いていないのですが、インド人のように気に入った容器にお湯を入れ、濡れたお尻を拭くタオルと共に持参すれば、快適な用足しが可能。紙で拭くのと違って、お湯で洗えば快適だし痔の心配もありません。また、お尻を洗うときには、便器を少し前にずらし、おしっこ用の方の穴を使います。
 どうしてもまずはお尻を拭きたい、という人は、カウボーイのトイレットペーパーとしても知られるビロウドモウズイカ(井上家御用達)やフキ、あるいはちょっと技術がいるけど慣れると快適なヨモギなどをその日の気分で使い分けるというのがオススメです。でも、間違ってもママコノシリヌグイだけは使わないようにしてください。
 ■追記:コンフリーは要注意でした。ふく方向を間違えると、うぶ毛のようなものが皮膚にささるようで、よくない思いをしました。それと、もし、何か(痔のような)違和感が生じたら、早めにオロナイン(ワセリン)を塗っておくというのがいいようでした。皮膚の調子を崩した状態で、すれる、というのが良くないようです。追記終わり。

 囲いをする場合はできるだけ広く、あるいは囲いはないほうが気持ちが良かったりもしますが、他人に不快な思いをさせてしまわないようにそこは周囲の環境に合わせる必要があります。
 デメリットとしては、いまの時期はショウジョウバエを初めとした小虫が集まってくることが多く、穴の上に便器を置いたままにしておくと、便器のフタを空けると、驚いた小虫たちが、一斉に飛び出してくるということになってしまいます。そこで、普段は便器を穴の上には置かず、用を足すときにだけ便器を所定の位置にセットするという方がよかったりします。
 でも、決められた穴ではなくいつも場所を替え新しい場所にする、というのが糞や糞虫の観察もできて、一番楽しいように思われます。このあたりだと、残念ながら玉押し系は見られないのですが、美しい光沢のセンチコガネや糞の下に穴を掘って幼虫のための部屋を作るエンマコガネ、それに各種ハネカクシ類が見られます。また、あまりの快適さに物思いにふけっていたりすると、人の気配が消えてしまうためか、ヤブがガサコソと音をたて、地中のミミズに気を取られた下ばかり見ているアナグマハクビシンが近づいてくるなどいうこともあったりします。十分に近づいたところで「やあ!」声をかけると、キョトンとした表情と共に一瞬かたまり、すっ飛んで逃げていきます。
 というわけで、新緑の中で自然観察などしながら、ゆっくり気持ちよく用を足すのに最高の季節ですよ! という不便を楽しむ知足のお誘いでした。

 このところは、こんな林のなかで、いたしております。

この続きは「くう、ねる、にわぐそのその後」に続きます。