里守り(さともり)犬による緩衝帯構想


 里に降りてきてしまった野生動物たちを、山に追い返す方法として、里守り犬(さともりいぬ)というプロジェクトがあり、それに参加させていただいていました。よくあるモンキードッグとの違いは、犬を訓練所に入れて仕込むのではなく、犬の「飼い主さんを訓練」し、里守犬を育ててもらい、犬の訓練士ではなく山里に住んでいる飼い主さん自身に犬を使って追い払いを行なってもらうというもので、珍しく農水省がハードではなくソフトにお金を出した事業でもあります。
 素晴らしいインストラクターに恵まれ、(私以外の)飼い主さんたちは優秀で訓練はかなりうまくいっていたように思います。ところがひとつ大きな障壁がありました。それはリード(散歩ひも)の問題でした。
 日本の法律では山でも犬を放してはいけないことになっているのだそうです(猟犬だけはなぜか黙認されているわけですが)。
 犬を使って野生動物を追い返す際、犬は野生動物たちを追い立てるに充分な運動能力を持っています。でもヒトはダメ。犬の足手まといなのです。ヒトは犬のように林の中を颯爽と走り抜けることができません。カナムグラの藪に突っ込めは手足はミミズバレになるし、ちょっとしたガケも犬のようには登れなかったりします。そしてなによりヒトは100mも全力疾走したらもうバテバテ。


 そんなこともあってか日本の中山間地では現在集落を囲うようにして電柵を作ることが多いようです。でもまたこれがクセモノなのです。もしもこの柵の内側にケモノが入り棲みついてしまったら……それはサファリパークと同じ状態になるのです。



 これを回避するアイデアはいくつかあります。ひとつは江戸時代のように、柵に囲まれた集落内に夜、犬を放すことができるような特区を作る方法。夜活動する、シカやイノシシに対してかなり効果的な方法だとおもうのですが、しかしこの方法は住民の全面的な協力が必要で、生理的に犬が嫌いな人がいるので難しいように思われます。


 もうひとつはいまある柵を二重にして、その中に犬や牛、七面鳥などの野生動物が嫌がる動物を放すという方法。
 かつて里山がしっかり管理されていた頃は、里山は野生動物たちが里に降りてこないための緩衝帯になっていました。二重の柵は狭いところでは犬などの動物がぎりぎり通れる幅にしておいて、可能なところは林を含めて緩衝地帯を作り、そこを柵で囲ってやるという方法です。山と里の間に柵に囲われた帯状の緩衝地帯を作り、その中に犬や牛などを放すという方法、どこかの自治体で試してみるところ、現れないかなぁ……。牛や羊を放せば草刈などの柵の管理も不要で、なかなか良いアイデアのように思うのですが……。

 柵に電気など流す必要がありません。(サルではなく)犬が出れないようにさえすればいいのです。木登りが上手な動物が柵を越えて侵入したとしても、犬はこんな風に柵の外に追いたてくれます。犬の代わりにオオカミでもいいのかもしれないけど、でも犬は本来、こうして人の役に立つことを生きがいに進化してきた生きもののようにも思えます。