1.9トンもの鉄の塊は本当に水に浮くものなのだろうか?

 何日か前から、大穴が掘られていたのでした……。
散歩などで通りがかった地元の方々をお騒がせしてしまいました。スミマセンでした。
なにか良からぬものを夜中にコッソリ埋めるのではないか……と疑われてしまうのも無理がないくらいの大穴でした。

 ところでこうした大穴、どうやって掘るか?ということもものづくりをする人にとっては興味のあるところではないかと思うのですが、まず最初に縁となる丸太を伏せこみ、その後、一度埋め戻し土の中に型枠を作ってから掘ると、深さ2m以上もあるこんな大きな四角い穴を崩さずに掘ることができる、ということを今回知りました。

 で、何を行ったのかというと、クルマは果たして水に浮くのか?という実験です。
 津波のとき、多くのクルマは波の上に浮いて流されました。クルマにはたくさんの穴やすきまがあり、それらの穴から水が車内に浸水してくるので、当初浮いていたクルマもそのうち沈みだしてしまうのですが、それでもある程度の時間、クルマは浮いていることができて、それによって助かった方もいらしたとのことでした。
 震災による被害をできるだけ小さくすることを仕事としていた富田さんは、津波による途方もない災害を目の当たりにして、どうにかしてひとりでも多くの人の命を救うことができないだろうか? と考えたのでした。そして、クルマを津波の際のシェルターとして使えないだろか?というアイデアを思いつき、今回の基礎実験が行われることになり、我が家でも少し協力させていただくことになったのでした。
 四国の太平洋岸などは、海抜の低い平野部が広く拡がっていて、地震が起きてから津波が来るまでの間に、標高のある安全なところまで避難するのは難しく、特にお年寄りや障がいを持つ人たちが山まで避難するのはかなり大変であることが予想されています。そうした災害弱者の方たちの命をどうにか守る方法はないものか?との考えもあるようです。

↑その実験のためのテスト車両となったのが、このクルマです。スーパーチャージャー付きの4駆で走行は5万キロとのことで、我が家のセレナよりもはるかに程度のいいクルマでした。
 クルマにあるすべての穴をふさぐことは大変なので、クルマをビニールシートでくるむことにしました。とはいっても、今回使用したものは観察しやすいように、色こそ白ですが、普通のブルーシートと同じ素材のシートです。

 そしていよいよ、浸水試験。
 シートにくるまれたエスティマが着水し、はたしてどこまで沈むのだろう……と思った瞬間、すでに車両を吊るしていたシリングベルトはゆるんでたわんだのでした。クレーンにかかる荷重ゼロ。にもかかわらず、喫水線はなんとバンパーよりもさらに下でした。鉄の塊であるエンジンを積んだクルマにもかかわらず、浸水さえ防ぐことができればクルマは予想以上に水に浮くのです。人が乗って揺さぶっても、安定感がありました。約1時間、浸水させた状態でしたが、エンジンのある前方の喫水線が少し上がったくらいで、ほとんど変わりはありませんでした。

 とはいえ、まだまだ課題はたくさんあります。今回はサンルーフのあるクルマだったので、風呂敷包み方式でも健常者だったので出入りはできたけれども、障がいをもった方たちのことを考えるとサンルーフからの出入りには無理がある……。あるいは、命を預けるシートの素材をどうするか……、沖合いに流されてしまわないためにアンカー方式を採用するにしてもどのような仕組みにするか……などなど。しかしそれにしても、水に対しての空気の浮力の大きさに驚かされた実験だったのでした。

 実験の二回目「UFO出現」に続きます。