以前、オールドタイマー誌で「ジャメ・コンタント・オマージュ」という電気自動車を紹介させていただきました。1899年に、世界で始めて時速100キロオーバーを達成したクルマはジャメ・コンタントという電気自動車で、そのジャメをオマージュしたのが上記の電気自動車でした。
でも、これをデザインした薄井さんは、ただ普通にコピーするだけでは面白くないと考え、このオマージュには当時のジャメにはなかったユニークな機構が追加されていました。それが左右の車輪を別々に駆動できるという電気自動車ならではの独立駆動という考え方でした。
↑これがジャメ・コンタント・オマージュ。サイズや原動機の出力を原付4輪に合わせているので、ミニカー登録で公道を走ることができるというユニークな電気自動車でもあります(ちなみにミニカー登録だと、原付きと異なりヘルメットも不要な上、法定最高速度が60㎞/hになります……なんとなくこのあたり不可思議なのですが)。
↑面白いところのたくさんある車なのですが、このスチール本棚のようなものが基本フレーム。角パイプを使ったジャングルジムのような鋼管フレームで、その直方体の四隅からダブルウィッシュボーンの足が生えているというシンプルながらも画期的な構造。電気自動車の仕組みが一目瞭然だったりします。また、この車両をベースとした、市販バージョンも最近発表されました。
↑スチール本棚に原動機を載せ、足をつけると、独立懸架のフォーミュラーカーのようなたたずまいになります。
↑竜骨の木骨ボディは、原村にある大工集団「風の森」による仕業。美しい曲線で形作られています。
↑そして、これが今回注目している独立駆動のカラクリ。この電気自動車にはモーターがふたつ使われていて、駆動輪であるリアの左右の車輪を別々に駆動することができるようになっています。さらに半月型のハンドルにはシャフトが二本通っていて、半月のハンドルはさらに半分に分割され、前輪の左右のタイヤは別々に操舵できるのです。左右のタイヤを別々に操舵可能で、しかも駆動輪であるリアは左右で別々、つまり逆回転できるので、このクルマはリアの駆動軸を中心にその場転回が可能だったりするのです。
クルマを動く乾電池と見立てたり、電気自動車はこれまでのエンジン車では考えも付かなかったようなユニークなアイデアを具象することが可能だったりします。独立操舵、独立駆動によるその場回転というのもそのひとつで、実際に市販車にも取り入れられるつつあるようです。下の動画の電気自動車がそうなのですが、結構、形も美しいし、独立操舵&独立駆動な上に、車体自体が伸縮するなんて……、このクルマが1万ポンド(約120万円)だったら、かなり売れそうな気がするのですがいかがでしょう?