↑これが「田車」、人力による除草のための道具です。古い道具ですが、なかなか良く出来ています。「田押し車」と言う地方もあるので、押して使うのだろう……と思っていたのだけれど、先端のフロート部分のうしろに刃のような部分が付いているのです。
稲と稲の間の除草では、後退して使うのは難しいのですが、田植え前の表土の掘り返し&除草では、ギコギコ往復させ、最後には引いて使うと具合がいいことが分かりました。不耕起の冬水田んぼでは、表土が硬く指で植え穴をあけるのが大変なのですが、田車でギコギコ何度か往復させておくと、すぽすぽと田起こしをした田んぼのように苗を植えていくことが出来たりします。
しかも田車を後ろ向きに後退しながら引いて使うと、表土がフラットになると同時にフロート後端の刃の部分が草を根ぎわでカットしてくれるのです。トラクターでの田起こしだとオタマジャクシやヤゴなど水生生物の大量虐殺は免れないのですが、田車を使った表土の掘り起こしであれば、効率が悪い分、機械から逃げることのできる個体の数は増えます。田んぼに人が入って田車を使い出すと、大量のオタマジャクシがさざ波をたてて逃げていくのです。中にはなぜか逃げないのもいるわけですが……。
田んぼで作業をしているさまざまな発見があります。我々が借りている田んぼの場合、そこにいるオタマジャクシは、そのほとんどがヤマアカガエルなのですが、固体によって、成長具合がさまざまなのです。とっとと手足が生えて、尾が短くなり小さなカエルになってしまうものもあれば、夏を過ぎてもまだオタマジャクシのまま、足も生えていない固体がいたりします。こうした多様性があることにきっと何かいいことがあるのだと思います。でも、これ、オタマジャクシだけにいえることなのだろうか?
↑これは、集団でエサにかぶりつくオタマジャクシたちの写真です。こうした集団をすくいあげてみて、中心にあるエサがなんだか観察してみると、多くの場合、尾の短くなった小さなカエルだったりします(溺死したミミズであることも多いのですが、事故死する個体が多いわりにオタマジャクシは少なかったりします)。
写真の左端にたくさんいる小さなカエルたちがエサになっていることが多いのです。つまりは共食いなわけですが、それが生きたまま行われるのか、田車などでひき殺されてしまったものなのかは定かではありません。でも、事故により死んでしまうミニカエルがたくさんいることは間違いありません。
思い起こしてみると、こどもの頃、アカガエルの足は美味しいと大きなアカガエルを捕まえて食べたりしていました。学生の頃、アルバイトしていたフランス料理店でも高級食材としてカエルを扱っていました。でもあんなにたくさんいるのに、オタマジャクシを使った柳川という話はききません。美味しくないのだろうか? あるいは、体に良くない成分が含まれているのかもしれませんね。
↑冬水田んぼのおかげで、昆虫少年だったころいつかは見てみたいなぁとあこがれていたモートンイトトンボにも出会うことができました。しかもたくさん。上の写真には5頭のモートンイトトンボが写っています。全身がオレンジ色のが(未成熟の)メス(2頭)。頭や胸が黒っぽいのがオス(3頭)です。モートンがこんなにたくさんいる田んぼで田植えができるようになるなんて、あの頃は思いもよらなかったなぁ。