昨晩、北杜市内の某所で、自作GMカウンターをパソコンに連動させるためのワークショップが行われました。いつもは生涯学習センターなどの施設を借りるのですが、今回はネット回線が必要だったために、ある家の屋根裏部屋に集まってきて、みんなでコソコソ、寒さを忘れる熱気と共に、なんとも怪しい感じで作業を行いました。
↑なんだかまるで、アングラ組織の秘密活動のよう(いや屋根裏だから、ロフト・シンジケートか?)。年齢、性別さまざま、それぞれに個性豊かでしかもそれぞれに鋭い才能を持っています。パソコンのハードに強い人、プログラムに関して精通している人、ガイガーミュラー管などの機械に詳しい人、ハンダ付けが得意な人、そしてその場の雰囲気を明るくすることが得意な方(←コレ、とても大切に感じました)……みんなの力が結集すると、さまざまな「不可能」がいつの間にか「可能!」になってしまうから不思議です。
たとえばコレ。Mさんが作られた測定器で、私の測定器と同じくGM管にはJ408を使っています。大きな違いは、センサーであるGM管は円筒形の筒の中に収納されていること。また、マイコンやGM管用回路などの基板は二段式で小型のケースに収められています。
しかもiPhoneやiPadにはガイガーカウンター用のたくさんのアプリがあって、そのうちのいくつかとリンクされていて、データを出力したり表示したり、単位の換算を行ったりするのにはiPhone用アプリが使われています。測定器自作者用に使用しているGM管を選ぶことができたり、使用しているGM管の「cpm/μSv/h」の係数を打ち込むことで幅広く対応していたり、しかもそれらはほとんどフリーで、アプリケーションを開発している世界中のプログラマーたちによる日本のフクシマに対する思い、どうにかして手助けをしたいという思い……が、ひしひしと伝わってくるようでした。
iPhoneとGM回路との連動は、GM管用の基盤には放射線が飛び込んできたときに「ジ、ジジ、ジ」と音声で伝えるスピーカーが付いているので、そこから信号をピックアップし、iPhoneのヘッドフォン端子のマイク入力(ピン端子の一番根元の部分:iPhoneのイヤホンジャックは先端部からヘッドホンのL,R,GND,Micになっている)から取り込んでいます。そんなことが思いつくなんて凄いよなぁ……。
↑GM管は、円筒状の筒の中に入っているので、写真のようにGM管単体で操作することが出来るのです。
この日、主に行われた作業は測定器とパソコンとの連動、それに測定器へのGPSモジュールの取り付けでした。GMカウンターとGPSを連動させることができると、GMカウンターを駆動した状態でクルマで移動することで移動した動線上の測定値を知ることが出来るようになるのです。測定器からはカウント数のほか、緯度、経度の座標軸を含むデータが送られてくるので、それでcsvファイルを作り、さらにはそれをklmファイルに変更することで、グーグルマップなどの地図上にピンを打ってその地点での測定値を記録できることができるというわけです。この測定器では10秒ごとにデータを記録することが出来るので、10秒ごとにグーグルアース上にピンを打ち、その地点でのそのときのCPM値を記録することができます。そして、これを使うことで将来的にはホットスポットなどを探す上での目安を見つけることが出来るのではないか?との思いがあります。
パソコンとの連動では、自作プログラムでの操作がしやすいリナックスをウインドウズで動かすための設定などを行いました。まずはバイオスを表示してCDやUSBの読み込みを優先させ、ウインドウズパソコン上でCDまたはUSBからリナックス(クノピックス)が立ち上げられるようにします。しかし持ち寄ったパソコンは最新のものから、私のもののようなやっと動く半ジャンク品までさまざまだったので、ここまでの操作でかなりの時間を費やし、残念ながらすべてのパソコンがこのやり方でできるということではなかったのですが、でもどうにかいろいろ策を尽くした結果、何台かのパソコンは、LXターミナル上でグラフや地図ソフトなどを作る設定?(スミマセン、白状すると私自身がよく分かっていません)が出来るようになり、最終的には合計9台ものパソコンを測定器と連動させることができるようになりました。
たとえば今回使った私のパソコンはあまりにもスペックが劣っているため、Windows上でリナックスを動かすことが出来ず、Arduinoでデータを呼び込みそれを表計算ソフト上にコピー&ペーストしてcsvを作ることにしました。ただ、ウインドウズ上で、csvファイルをkmlファイルに変更する作業が(私には)どうしても出来ず(誰かいいアイデアをお持ちの方、オススメのアプリをご存知方がいらしたら、ぜひ教えてください……)、仕事用のパソコンでリナックスを立ち上げそこでcsvファイルをkmlに変換することにしました。
こうしてGMカウンターをパソコンに連動させることができると、時間をかけたデータの収集が容易になります。それによって、より精度に優れた情報を市民の手で得ることができるようになるわけです。さらにGPSとも連動させることが出来れば、グーグルアースなどの地図上に測定値を記録することが出来るようにもなります。
ただし、測定に関しては十分な注意が必要で、10月31日にキノコを測定したような方法で放射線による影響がデータとして出なかったからといって、それを安全なものと考察してしまうのは危険である、との意見も専門家の方からいただきました。J408×2本でどのくらいの精度で測ることができるのか? あるいは4本や10本だったらどうなのか? 投影面積や試料の量などからどのくらいの量が放射性物質の検出下限値なのか?を調べることなど、まだまだたくさんの課題があります。
いま、北杜市や八ヶ岳周辺には、J408を使った自作測定器が複数台あるので、次回は各測定器の測定感度の違いをある程度の時間をかけて検出し、どの測定器で測っても、相対値によるデータの互換性が出せるようにしたいと考えています。これからもどうか、よろしくお願いいたします。
追伸:やっとどうにか、csvファイルをkmlに変換できるようになりました。arduinoで作ったテキストデータをオープンオフィスの表計算ソフトに形式を指定して(カンマ区切りで)コピーして、それをcsvで保存し、USBメモリーを使ってリナックスで立ち上げたwindowsパソコンのLXターミナルのクノピックスのディレクトリーに移して、リナックスで変換プラグラムを起動させるという方法(かなりややっこしい……)。
そこでさっそく、ひとっ走り。軽トラの助手席にDCDCコンバーターでパソコン&GMカウンターをセットし(インバーターを使うとノイズを拾ってしまうのです)、家の近くを走ってきました。
パソコンを再起動させてリナックスを立ち上げ、データをkmlファイルに変換し、それを祈るようにしてWクリックしました。そして現れたのが上の画像です。リナックスでの再起動など少し手間はかかるけど、どうにか地図上にピンを打って測定値(上の地図の場合はJ408×2本の場合のCPM)を表示することができるようになりました。測定間隔は10秒おき、走行速度は市道20〜30㎞/h、国道は50〜60㎞/h。もっとゆっくり走ればもっと細かく探ることが出来るわけです。
そしてこうしたことができるようになれば、たとえば、密かに放射性廃棄物や使用済み燃料などが搬入されてしまったような場合も、発見できる可能性がでてきます。マスメディアの多くが大きな組織になってしまい、組織の中でそれに縛られがちになってしまうことで正しい判断や機能が失われつつあるいま、インターネットを使って多くの人がこうした情報を共有し、市民の安全は市民で守る……残念ながら、そうしたことが必要になってきてしまっているようにも思われます。