福島で大工さんをして「いた」大塚愛さんのこと

 天ぷら廃油仲間であり、ロケットストーブの本の翻訳者でもある石岡さんが、広島から北杜市にいらっしゃる用事があり、帰りがけに我が家に寄ってくれました。ソーラー発電の専門家でもあり、ロケットストーブや自然エネルギーのことで話は盛り上がり遅くまでお引止めしてしまったのですが、その中で、福島で大工さんをしながら自給自足的な生活をして「いた」大塚愛さんという素敵な女性のこと教えていただきました。私にとってはとても衝撃的な話でした。彼女のほかにも今回の事故により似たような境遇になってしまった方を、私でさえ何人か知っています。福島は自然環境に恵まれていて、自給的な暮らしを行うには格好の地で、自然が豊かで農的な生活が可能な素晴らしいところだったのです。
 ところがそれが今は180度変わってしまいました。変わってしまったのは福島という地域だけではありません。我々の価値観をも根底から変えてしまったのです。
 国産よりも外国産、土の地面よりもアスファルト、鮮魚よりも冷凍品、雑木林よりもコンクリートジャングル、母乳よりも粉ミルク、露地栽培の自然農よりも工場生産の農産物、天然酵母よりもドライイースト、原木栽培よりも菌床栽培、昆布だしよりも化学調味料……原発事故による汚染は広範囲に渡り、そこに暮らす人たちの生き方を、そして考え方のベースさえも変えざるを得ない状況を作ってしまいました。
 原発を止め不便になってしまったとしても、あるいは停電が起こってしまったとしても、極論すれば電気なんかなくたって、ヒトは楽しく暮らしていけると思うのです。彼女のような絶望感をこれ以上、味わう人がいなくなる、というだけでも、その価値は十分にあると思う……。

↑広島のイベントでの大塚愛さんのお話です。言葉を選びながらのゆっくりとした語り口で、私には衝撃的でした。こうして彼女のように、多くの人に状況を伝えられるケースは稀で、その陰にはもっともっと多くの人が、彼女と似た絶望的な苦しみに直面しています、そのことをもっと多くの人にしっかりと想像して欲しい、と強く思いました。