スミマセン、ちょっと寄り道してしまいました。プロジェクトうんこ「バイオガス編」の続きです。
次に見学させていただいたのは、麻実子さんと直樹さんのお宅でした。母屋は現在、セルフビルドの真っ最中で、コンクリートを使わない「掘っ立て方式」で建てられています。
「掘っ立て」というと、イメージとしてなんだかミスボラシイ感じがあったりしますが、この家はとても機能的で、なおかつ地球にも優しくてサスティナブルであり、そのくせ急傾斜の林内に建つこの家はツリーハウスのような素敵な雰囲気があります。
↑掘っ立てに使われたこれらの柱はこの地に生えていたものを伐って使っています。つまりウッドマイレージは「ゼロ」なのです。写真をクリックすると大きくなります。柱は人間の背丈くらい、土の中に埋まっています。
↑これは掘っ立て柱との接合部。もの凄くていねいに、そしてもの凄くよく考えられて接合されています。
もちろんトイレ(仮設)も、セルフビルド。その様子はこちらをご覧ください。
トイレの仕組みとしては、微生物にし尿を分解してもらうコンポストトイレということになると思われます。構造はとてもシンプル。ポータブルトイレの下に穴を掘り、そこにオガクズやカンナクズなどを入れたもの。構造はシンプルなのですが、しかしシンプルながらも実はよく考えられています。この種のコンポストトイレをうまく運用していくコツは、好気性の微生物(酸素の好きな微生物)が働きやすい環境を作ってあげること。肥溜めタイプのぽっとんトイレが異臭を放ちがちなのは、嫌気発酵に傾きがちでアンモニアなどのガスが発生してしまうため、と思われます。こうして土に穴を掘っただけであれば、余分な水分は土にしみ込んでくれるので、水分過多による腐敗が起こりにくいわけです。実際、トイレの臭いを嗅がせていただきましたが、臭いらしい臭いはほとんど感じられませんでした。
ポイントは「尿をできるだけ混ぜないこと」だそうで、新しく作っている本宅の方のトイレは、これをさらに進めた構造(尿と糞をわける構造)になるとのことでした。
こうして穴の中で微生物によって発酵された糞尿は、はさみのような構造の穴掘りスコップで定期的に掘りあげられ、それらはさらに発酵が進められ、肥料として利用されます。
↑掘り取られたコンポストは、日当たりのいい斜面で、広葉樹の落ち葉と混ぜられさらに発酵が促進されます。直樹さんがそれを掘り起こしてくれました。
↑12月に掘りあげたばかりというコンポスト。おがくずはまだ分解されていませんが(木や紙はかなり分解が遅い)、糞は姿も形もなく、落ち葉の臭いがあるだけで、嫌な臭いはまったくありませんでした。そして、これらのコンポストは、土にすき込まれジャガイモなどの肥料として利用されるとのことでした。そしてさらに面白かったのは関さんたちのジャガイモ畑。ここは急傾斜地なので、斜面に沿って人ひとりがやっと通れるくらいの小道があるだけです。そしてコンポストはこのくねくね曲がった小道に沿ってまかれ、ジャガイモもその小道に沿って植えられるとのことでした。これは普通の「畑」という概念からはまったくかけ離れたもので、なんだか楽しそう。これなら生態系のバランスを崩すこともなさそうです。しかも、自給用であればこの量で十分、とのこと。麻実子さん直樹さんの暮らしは自給率も高く、食料だけでなく、電気やガスも買っていません。現代の日本であればこうした暮らしが可能であること、そしてそれらを楽しんでいる人がいるということに中学生たちは純粋に驚いているようでした。
↑小屋の入り口付近に設置されたソーラーパネル。いまはもう少し増設されていますが、つい先日まではこの小さなソーラーパネルだけで暮らしていたのでした。しかしそれでも最新のLEDライトを灯し、パソコンを操って世界に情報を発信していたのです。
↑とてもシンプルな黒く塗装しただけのドラム缶。これでも夏はホットシャワーを浴びることができる、とのことでした。
↑飲料水は外から汲んできますが、生活用水はこのガチャポンポンプでまかなっています。電気が少ないので電気洗濯機はありません。ドラム缶で炭を焼き、煮炊きは七輪を愛用。でも、定価が90万円もするフルカーボンで油圧ブレーキのチャリンコ(でもそれの中古を何分の一かの値段で購入したそうですが)に乗っていたりもします。それを使って、とても上手に遊んでいたりします。そう!貧乏だから自給的な生活をしているのではないのです。お金や時間の使い方がとても上手で、楽しく、そしてとても豊かに暮らしているように見えます。
↑これが問題の自転車。定価90万円の自転車というのは果たしてどんな感じなのか?ちょっとまたがらせてもらおうと思ったら「体重制限があります。やめて下さい」と(真顔で)言われてしまいました(笑)。それくらいにキッチリぎりぎりに作られているということのようです。今回参加した中学生の響クンは、この自転車が出てきた瞬間に「あっ、スペシャライズドだ! あ、これ100万円近くするんじゃないですか?」と、言い当てました。彼も飛び切りの自転車少年だったのです。その後、森口さんと自転車小屋に入ったら最後、なかなか出てきませんでした。右端がスペシャライズドのオーナーの麻実子さん(「とりぱん」のモデル、というはウソ、でもなんだか似てる(笑))は、私なんかよりも大工仕事の技術は上だし、英語も達者だし、翻訳も校正もできるし(「畜熱」の本、ぜひ翻訳を!)……おふたりとも何をやっても生きていけるスキルを持っている、だからこそ……ともいえそうです。
このあとは「わたなべの家のトイレ」に続きます。