Blog「自給知足がおもしろい」

自給「知」足と称した、貧乏くさい暮らしを楽しむためのブログです。

完璧な自給自足は目指さず、「テキトー」と「いー加減」をモットーにあまり頑張りすぎない、
そんな暮らし方がこの頃なんだか、とてもオモシロイ!と感じています。
自給「知足」的な暮らしは言いかえると「貧乏臭い・ケチ臭い暮らし」でもあります。

でも「ケチ臭いビンボー暮らし」も、そう捨てたものではありません。
ビンボー暮らしは、お金をそれほど必要としない暮らしとも言えます。
そのため、お金稼ぎの作業や仕事に長時間、拘束されずにすみ、
その分の時間を、ヒトが暮らすための作業に使うことができます。

農的で質素な暮らし方が可能で、それにより身近なことで幸せを感じることができたりもします。
また、昔ながらの農的な暮らしは、ヒトも哺乳類の一種として自然の生態系の中で
虫や草や菌類など他のいきものたちと共に生きる暮らし方だったりもします。

そして、こうしたテキトーでいー加減な自給的な暮らしをうまくやっていくポイントは、「知足」? 
人間の欲望は際限がなくてお金をたくさん得られても、たぶんどんなお金持ちになっても満たされません。
でも逆に、小さなちょっとしたことでも、とても幸せに感じられることがあったりします……不思議です。

日々の暮らしの中から「自給知足的な暮らし」を楽しむためのヒント? 
のようなものを、紹介できたらいいなぁ、と思っています。どうか、よろしく。


天ぷら廃油で走るトラクター

 我が家では一番最初に、天ぷら廃油で動くようになった機械はトラクターでした。これは天ぷら廃油で走り始めた直後の頃の画像。おー、娘がまだ若い……!
(写真は排気管の先端部分に白い布を被せて、軽油の場合との排気の汚れの違いを観測しているところ。ちなみに天ぷら廃油が燃料だと黒煙はほとんどでません)。

 天ぷら廃油を自動車の燃料として使う場合に困るのは、粘度が高すぎることです。そのまま燃料として使ってしまったのでは噴射ポンプなどが詰まってしまいます。でも天ぷらを揚げたことのある人はご存知のことと思いますが、天ぷら油は加熱すると粘度が下がりシャバシャバになります。ディーゼルエンジンの場合、天カスを取りのぞき、なおかつ暖めてあげることで天ぷら廃油を燃料として使うことができるのです。というか、ディーゼルエンジンが開発された頃は化石燃料は貴重で、ピーナツ油を燃料として開発された、などとも言われています。
 このトラクターでは、天ぷら廃油の燃料配管をラジエターの中を通したり、エキゾースト(排気管)に抱きつかせたりして、エンジンの熱で暖めています。そのため、エンジンが暖まるまでは軽油でエンジンを動かす必要があり、燃料タンクをふたつ用意して、切り替えて使うことになります。

↑左のペットボトルがエンジン始動用の軽油タンク。右のオイル容器には天カスを取りのぞいた天ぷら廃油が入っています。エンジンが冷えているときの始動は軽油で行い、その後、エンジンやラジエターが暖まってきたら、天ぷら廃油に切り替えます。

↑ラジエターの向こう側、ピンク色の燃料ホースから供給された天ぷら廃油は、ラジエターの中を通って暖められます。改造作業としては、この部分、ラジエターのアッパータンクの中に銅パイプを通すというのが作業としては一番難しいところかもしれません。とはいっても素人が身近な材料で自作できるレベルでもあります。というわけで、このあたりは少し詳しく紹介させてもらうことにします。
■熱交換器(天ぷら廃油を暖める装置)のつくり方■

↑①このトラクターではできるだけ経費を抑えるため、写真のようにラジエータのアッパータンクの中を銅パイプを貫通させる方法を採用することにしました。銅パイプは壊れた湯沸かし器やクーラーの配管部などから調達できます。銅パイプは以前拾ったものがたまたま家にあったので、材料費はほとんどかかりませんでした。

↑②次にラジエターのアッパータンクにドリルで穴をあけます。作業自体は簡単! でも、勇気はかなり必要です。

↑③ラジエータのアッパータンク内は空っぽ、だと思っていたのですが、意外なことに障害物がありました(ラジエターホースの接続口が内側にも張り出していたのでした……)。ラジエターの真ん中ではなく、フロント側に少しオフセットして穴をあければまるで問題はなかったのですが……。そんなわけで今回は、銅パイプは簡単には貫通してくれませんでした。よって、こんな大穴が! これではハンダだけでは埋めきれません。ヤバイなぁ。

↑④そこで、銅板を切り抜いてパッチワーク用の板を作り、このパッチ板をハンダで固定することに。ラジエター内は圧力がかかるのでかなりしっかりとした穴埋めが必要で、パテや接着剤ではいずれは漏れてしまうと思われます。その点、ハンダは溶接と同等、とまではいかないまでも、接着剤と比べると数倍高い接着強度が期待できます。実際、ラジエターはコアやタンクなどの真ちゅう製の部品をハンダで融着して作られています。

↑⑤そしてスキマをハンダで埋めて完成。温度をあげ圧力をかけたのですが幸い漏れはありませんでした。また、燃料配管の中の一番高い部分には、エア抜きのバルブを作ります。配管の途中にエアが入った状態だとディーゼルはエンジンがかからないのです。

↑⑥とはいってもエア抜きバルブは簡単なつくり。銅パイプに穴をあけタップを切り、タイヤチューブを切って作ったパッキンをネジで押し付ける構造。

↑左からやってくるのがペットボトルからの軽油で、右からやってくるのがラジエターとエキゾーストマニホールドで暖められた天ぷら廃油。それを三方弁(オレンジ色のレバーの切り替えバルブ)で切り替えます。フィルターは軽油と天ぷら廃油で共用します。

↑切り替えバルブは運転席から手の届くところにあるので、軽油と天ぷら廃油は簡単に切り替えることができます。でも、ときに切り替え忘れることもあります。そんなとき、普通は電磁ポンプのスイッチを入れるのですが……。

↑このトラクターには電磁ポンプは付いていません。燃料の供給は重力落下式です。もしも廃油の加熱が不十分で燃料が供給されにくい場合も(たとえばエンジンを止める前にも軽油に切り替える必要があるのですが、それを忘れ、次の始動の際、かかりにくかったりしても)、タンクに接続されたホースを口にくわえてタンク内に息を強く吹き込むと、タンクが加圧され、燃料が送られてエンジンがかかる、というカラクリです。

↑でも、タンクへの息の吹き込みをやめるとき、注意しないとタンク内からの吹き返しがあり、それを吸い込んでしまうことになります。この吹き返しは腐った天ぷら油が気化した猛烈な臭いのガスなわけで、「最低、最悪、もの凄い臭いだった!」と娘は申しておりました。吹き替えしがあること……言い忘れてた、ゴメン。

とまあ、こうして天ぷら廃油で公道を走れるトラクターは完成したのでした。でもトラクターの場合、公道を走る必要がなければ天ぷら廃油に軽油を半分入れることで、(古いディーゼルだったら)問題なく動かすことができます。ただし勝手に作った燃料で公道を走ってしまうと、それがたとえ天ぷら廃油をベースとした環境に優しい燃料であっても日本の場合は、脱税になってしまいます。
 こうして普通は捨てられてしまう天ぷら廃油を燃料にトラクターを動かせば、燃料代はかからないし、地中深くから掘り出した化石燃料と異なり、植物油はカーボンニュートラルなので地上の炭素総量を増やすこともなく地球温暖化に寄与することもありません。今すでにあるモノ(中古のトラクターだとかポンコツ車だとか)を大切に使い、地球に優しいように改造して使用することが一番のエコロジーであると私は考えます。
 そんなことをしたら、モノが売れなくなり、ますます景気が悪くなって日本は破綻してしまう、というひともいますが、それは本当でしょうか? 中古のトラクターやポンコツ車を修理したり天ぷら油で走れるように改造したりするには手間がかかります。しかもこれらの作業は個々に対応することが必要で、ロボットには出来ない作業でもあるのです。手作業でしか出来ない作業が多く必要になるということは、多くの雇用を生むということでもあると思うのです。
 一方、家の近くに大きなミネラルウォーターの工場が新しく出来ましたが、そのほとんどはオートメーション化されていて、規模のわりにそこで働く人の数は驚くほどに少なく、新しい生産設備ができ、生産量は驚異的に増えたというのに、逆にその会社ではリストラモドキが行なわれています(この地で生まれ育った人が、単身赴任で遠隔地に飛ばされたりしているのです……家族がいるというのに、あまりにひどい)。
 あるいはエコカー減税などと呼ばれる怪しげな補助金をつけて新車を無理やり売っても、貨幣価値がこれほどまでに違ってしまっては、今後、日本に雇用が生まれる余地はありません(産業の空洞化を加速させるだけのように思います)。
 これほどまでに文明が発達し、便利な機械がたくさん登場し、モノを作ったり、あるいはヒトが生活していくための効率は格段にあがったはずなのに、不思議なことに多くの人の暮らしは思ったほどには豊かになりませんでした。これはなぜか?ということを冷静に考えてみる必要があると思うのです。効率や利益優先の企業の論理を最優先し、これまで通り大量生産大量消費の自転車操業を続けていても、資産を元手にマネーゲームに興じる(働かない)人たちにその多くを吸い上げられてしまうだけ……そのシステムの外側で暮らしている者からすると、現代社会はそんな風に見えてしまったりもするのでした。