30分で組み立てられる「石積み式・いい加減・石窯」(作り方編1)の続きです。当初、使っていたのは上の写真のような石窯でした。平屋です。火床で焚き火をして石を加熱し、その後、火を掻き出して、そこにパンを入れて焼く、というもの。ただしこのタイプだと、パンを入れた後、温度は下がっていく一方です。そこで火床を広めにとり、火を掻き出さず、火床の中でオキを横によけて使っていました。これでも結構、良かったのですが、お客さんがたくさんいらして、一日のうちにパンやピザを何回も焼かなければいけない、というようなときは、いったん中断し、石を再加熱する必要がありました。またオキの燻り方によってスモーク臭が強すぎてしまうなどの問題もありました。
そのうち、掻き出したオキを石窯の天井の上に置くようになりました。こうしておくと火床の温度が下がりにくく、しかも上火を効かせることができることに気が付きました。それだったら下でも火を焚けるようにすれば、追い炊き可能な石窯になる……ということで改造されたのが、いい加減石窯改の二階建てタイプです。
↑まず上の写真のように、メインの火床(パンを焼く部屋)で焚き火をします。
↑そしてメイン火室の周囲の石が十分に暖まったら、メイン火室のオキを天井と床下に移し、そこで焚き火を続けます。メインの火室にはパンを入れ、扉を閉めて(ピザの場合は必ずしも扉は不要です)パンやピザを焼きます。
↑すると、こんな感じのパンが焼けます。平屋だった頃は、あとで熱が足りなくなるのを防ぐため、メインの火床をかなり高温になるまで加熱していたので、オーブンペーパーが燃えてしまったり、表面だけ焦げて内部がまだ焼けていなかったりしたのですが、二階建てにしてからはあとからの上下の追い炊きで調整できるので、写真のようにオーブンペーパーもほとんど焦げずじっくりと時間をかけて中まで火を通すことができるようになりました。また上火と下火を別々に調整できるので、最初下火を強くし、釜伸びさせたあと、最後に上火を強くしてクープのあたりをキツネ色に焼き上げるなどという小細工もできるようになったのでした。
二階建てとは言っても構造はとてもシンプルです。上の写真のように、平屋タイプの下にもうひとつ部屋を作っただけ。ただし、一段目の天井となる御影石の平石は、入口に扉を置くことができるように少し前に出す必要があります。30㎝×60㎝の平石を3枚にすればいいのですが、ケチってレンガを後部にかましています。
また、上の写真では一段目の火床の側面は、コンクリートブロックで密閉されていますが、少しスキマを開けたほうが、火をおこしやすくなります。逆に上部はあまりに解放されすぎだと火が落ちて危険なので、いい加減にレンガなどで縁取りし、風が吹いても薪や火の粉が飛ばないようにしています。それと、実際に使ってみたところ、最下段の高さはもっと低くても良さそうです。
ひとつだけ注意しなければいけないのは、メイン火床の天井となる平石のつなぎ目です。ここにスキマがあると上で火を焚いた際、炭や灰がパンの上に落ちてきてしまいます。このスキマは粘土で埋めてください。紙粘土でもOK。意外なことに紙粘土は簡単には燃えません。逆にそのほかのつなぎ目は、スキマがあっても問題ありません。燃費は少し悪くなりますが、スキマがあったほうが火のつきはよくなります。
パンをおいしく焼くには、火床をできるだけ密閉して、ある程度、湿度が保てる状態を作る必要があります。それには扉が必要。当初のころの扉は上の写真のようなタイプを使っていました。つまり、正方形のレンガを置いただけのもの。これをL字型の道具(写真に写っている道具)を使って横にスライドさせます。床面が広いので可能な扉でもありますが、畜熱性が高く火床温度を保ちやすいなどのメリットがありました。横にスライドできない場合、手前に倒すという方法もありそうです。
その後、二階建て用に作ったのが写真のような木製の扉です。これだと軽いので片手で操作ができて便利です。ただし、木だけだと燃えてしまうので、火床側にはステンレスの薄板が貼ってあります。内側の木にステンレスの板が直接付いてしまうと炭化しやすいので、ビスの頭を少し残したままの状態でビスをねじ込み、ステンレスと木との間に空気層を作ってあります。
石窯ではパンの他にもさまざまなモノを焼いたり乾かしたりすることが出来ます。
まずはパンを焼き、その後の余熱がモッタイナイので、それで調理することも可能です。トマトを入れてひと晩放置すると翌日には、ドライトマトになっていたりします。ヒラタケやクリタケなどのきのこがたくさん取れた際の保存用乾燥機としても使用しています。
このあとは、「石釜を使ってパンを焼くコツ」に続きます。