井上ひさしの「父と暮らせば」は、明るい暖かな光と、冷たい青い光、その間を白くて静かで優しい光があふれる、心の中の光の色のお話である。
板の間に太陽の光が当たると、それが反射してふたりの顔を下から照らす。ところが突然、太陽の光は雲に遮られ、部屋全体の光のトーンが落ちる。光の変化は、ものがたりの情景とは必ずしも一致していないのだが、それがかえって心をわきたて動揺させる。目は文庫本を片手に朗読劇を演じているシンプルな衣装のふたりを、これ以上ないくらいにしっかりと観ているのだけれども、頭の中にはそれよりさらに強い情景が構築されている。装置や衣装など、芝居はシンプルであればあるほど、イメージの力が心の中で大きく膨らむことを実感した。夜、寝る頃になって、つまりそれが演出なのだということに気が付いた。
チエさん、KUMAさんありがとうございました。ユキノさん、青沼さん、椿さん、そしてななちゃん、ありがとう! 一生忘れられない時間をいただきました。心の奥に、深く強く、刻まれました。