Blog「自給知足がおもしろい」

自給「知」足と称した、貧乏くさい暮らしを楽しむためのブログです。

完璧な自給自足は目指さず、「テキトー」と「いー加減」をモットーにあまり頑張りすぎない、
そんな暮らし方がこの頃なんだか、とてもオモシロイ!と感じています。
自給「知足」的な暮らしは言いかえると「貧乏臭い・ケチ臭い暮らし」でもあります。

でも「ケチ臭いビンボー暮らし」も、そう捨てたものではありません。
ビンボー暮らしは、お金をそれほど必要としない暮らしとも言えます。
そのため、お金稼ぎの作業や仕事に長時間、拘束されずにすみ、
その分の時間を、ヒトが暮らすための作業に使うことができます。

農的で質素な暮らし方が可能で、それにより身近なことで幸せを感じることができたりもします。
また、昔ながらの農的な暮らしは、ヒトも哺乳類の一種として自然の生態系の中で
虫や草や菌類など他のいきものたちと共に生きる暮らし方だったりもします。

そして、こうしたテキトーでいー加減な自給的な暮らしをうまくやっていくポイントは、「知足」? 
人間の欲望は際限がなくてお金をたくさん得られても、たぶんどんなお金持ちになっても満たされません。
でも逆に、小さなちょっとしたことでも、とても幸せに感じられることがあったりします……不思議です。

日々の暮らしの中から「自給知足的な暮らし」を楽しむためのヒント? 
のようなものを、紹介できたらいいなぁ、と思っています。どうか、よろしく。


キイロスズメバチの引越し

 ニホンミツバチが分蜂することはよく知られていますが、キイロスズメバチが引越しをすることは意外と知られていないようです。キイロの女王バチは、壁の内側だとか、伏せてある大きな植木鉢の中だとか、当初は目立ちにくい場所に隠れるようにして女王ひとりで巣をつくり始めます。そしてその後、働きバチの数がある程度増えると、もっと広くて快適な場所に引越しをします。一方、ミツバチは新しい女王バチが誕生する頃、新女王を残して(なんと)母女王が(!)働き蜂の半分くらいを率いて巣を出て行く巣分かれをするのですが、キイロスズメバチの場合は古い巣を捨て、全員で引越しをします。
 で、その引越しが行なわれました。引越し先がヒトの生活に支障のないところであれば、良かったのですが、車椅子の父がクルマから毎日乗り降りするすぐ上に新しい巣をつくり始めたのでした。「ここはダメだよ」と女王バチが引っ越してくる前に三度ほど作りかけの巣を撤去したのですが、不思議なことに完全に撤去しても毎回同じところに再び巣をつくり始めるのです。巣の土台となる垂木の部分に殺虫剤が染み込むほどにたっぷり吹きかけたりもしたのですが、4度目もやはり同じ場所につくり始めました。しかも引越しの巣作りは多くの働き蜂によって一気に行なわれるので半日でかなり形になってしまいます。そこで仕方なく、引越し元の巣を撤去するため、虫仲間?のY氏に連絡をとったのでした。Y氏は本当はパイプオルガン作家(なんて書くと吉倉さんだってすぐにわかってしまうなぁ、まあいっか?)なのですが、生きもの全般が得意分野で博識で、ハチの巣をとる名人でもあるのです。

↑引越し元の巣は、テラスの上のダンボール箱の中に作られたのでした。しかしこのダンボールには、薪が入っていて大きな巣を作るだけのスペースがなく、早々に引越しを決意したようです。まずはガムテープで出入り口をふさぎ、その後、白いビニール袋で箱全体を包みます。

↑ビニール袋の中ではハチが猛烈に怒ってブンブン飛びまわっています。ここで慌てず騒がず袋の口から、アルコール度数96度のウォッカ「スピリタス」を(もったいないから)少し注ぎます。するとスズメバチはすぐにおとなしくなって……の予定だったのですが、なぜか今回はますます勢いづいてくだを巻いていたので、もったいないけどもう少しお注ぎして、しっかり酔っ払ってもらうことにしました。

ダンボールの中には薪が入っていたのでスペースが狭く、巣は2段しかできていませんでした。成虫はスピリタスで酔っ払って泥酔してしまったというのに、幼虫たちはその後も元気で、カリカリ音をたてエサをねだっています。

スズメバチは肉食で、アオムシなどを狩っている姿をよく目撃します。ところがスズメバチは胸と腹の間が異様なほどにくびれていてそのため、成虫はアオムシを直接食べることができません。そこで肉団子を作って巣に持ち帰り、優秀な消化管を持つ幼虫に一度食べてもらい、幼虫の体内に蓄えます。そして栄養が必要になるとそのたびに幼虫を軽く叩きます。写真は割り箸の先で軽く幼虫を叩いているところ。

↑すると幼虫は口から透明の液体を吐き出されます。写真の真ん中の幼虫から大量の透明の液体を口から吐き出されるのが分かるでしょうか? スズメバチがあの重い体にもかかわらず高速で飛びまわることができる秘密は、この透明の液体にあると言われています。多くの種類のアミノ酸を含み筋肉内に乳酸をためにくいというスペシャルドリンクだそうです。オリンピックのマラソン選手の多くはこれを服用しているとの話もあります(ドーピングの対象外らしい……)。というわけで私たちも舐めてみたのですが、ほんのりと甘い優しい味でした。

スペシャルドリンクをいただいた後は、幼虫もいただきました。炒めたり、炊き込みご飯にして食べるのが一般的ですが、生きている状態のモノを生で食べる人もいます。生で食べる場合は、脱糞をおえているマユの中の白い未熟体が一番クセがなくて食べやすいと思います。幼虫を生で美味しく食べるためには消化管を外すのがコツ。炒って熱を加えれば消化管も問題なく食べることができ、逆に消化管の味がハチの子の独特の風味の元ともいえるのかもしれません。

↑頭を指でつまんだ状態で、歯で体を引っ張ると消化管は抜け出てきます。写真の黒い部分が消化管。少しザラザラした感じで苦味があり、サザエの肝の一部にかなり似た味の部分があります。
 引越し元の巣を撤去した後、引越し先の巣も撤去しました。成虫が3頭しか居なかったので、油断し気を抜いて撤去に取り掛かったらちょっと失敗。2頭はどうにか捕まったのですが、暗い中で1頭の姿を見失ってしまい、しかしどこかでかすかに羽音はする……と思った次の瞬間、ひざの辺りがチクリ。ひざに目をやるとキイロスズメバチが止まっておりました。幸いはれもしなかったので、刺されたのではなく咬まれただけだったのかもしれません。
 というわけで、キイロスズメバチにはちょっとかわいそうなことをしたけど、引越し騒動はどうにか無事、終了。吉倉さん、ありがとうございました。