なんだかこのところ、ハチの話ばかりでゴメンナサイ!
でも、こりずに今回もまた、ミツバチの話です。ゴメン。
ミツバチは巣分かれする際、こども(新女王)ではなく、親(母女王)がこどもに巣を託して家を出ます。「心優しい思いやりある行為」と受け取ることもできますが、「理にかなっている」との見方もできます。
ところで、今年の春、巣分かれした女王バチ(母女王であることが多い)が新しく作った巣で再び新女王バチを生み、仲間を連れて再び自分が巣からでていくことを孫分蜂といいます。分蜂する女王についていく働き蜂と巣に残る働き蜂はどうやってわかれるのか、気になるところですが、研究が進んでいると言われるミツバチでも、まだ分かっていないことが実はたくさんあったりします。
そしてなぜか、今年は孫分蜂が盛んで、このところは、分蜂したハチの捕獲と巣箱づくりに追われていました。
ハチを極力傷つけず、うまく優しく捕獲し、巣箱に誘導することができると、その群れは人に慣れた優しい群れになるのですが、捕獲に手間取り手荒なことをするはめになったり、あるいはハチをなにかのアクシデントでつぶしてしまったりすると、その群れは攻撃的な群れになる感じがします。
ハチはある種の記憶力が非常によくて、ヒトの個体の同定とそのヒトがどんなことをしたかをしっかり覚えているみたいなんだよなぁ。
というわけで、「ていねいに優しくハチたちをつかまえ、巣箱に誘導するにはどうしたらいいか?」がもっかの課題で、朝から晩まで、起きている間だけでなく寝ているときの夢の中でまで、そのことを考えているという日々が続いていたのでした(バレーボールをしていて私が打ったサーブはもの凄い変化球になりだれもレシーブできないのだけれど、それが実はボールではなく蜂球だということに相手チームはまだ気が付かない、というヘンテコリンな夢をみました)。
そんなわけで(ダイヤモンドヤスリを買いに)100円ショップに行ったときも、ところかまわずあたりをキョロキョロ。あとから考えるとまるで不審者だったろうなぁ。さらには、商品棚とひとり向かい合いながら独り言をブツブツつぶやくヤバいオッサンになっていました(話は違うけど、100円ショップのダイヤモンドヤスリ、あれ、農具などの刃物研ぎに凄くいいですよ)。
ところで蜂球ですが、我が家の場合、すぐ近くに大きなエノキの木があって、蜂球はそのエノキの幹にできます。表面がザラザラな上、凸凹した太枝なので、これまで使っていた志賀昆虫の折りたたみ捕虫網では取りこぼしが多かったのでした。
⇧分蜂群の第一集合場所にできた蜂球。まさにバレーボール大なのです。
で、蜂球ができている枝の曲面にネットの縁をどうやって密着させ、取りこぼし少なくハチをネットの中に取り込むか、それが課題なのでした。
柔軟性があって、しかもある程度コシがあり、ハチを傷つけにくいもの。素材としてはシリコンあたりが良さそうだなぁ、と以前から思っていたのですが、まさにピッタリなものを100円ショップで見つけました。
そしてそれに組み合わせるネットも。
⇩これらがそれ。
⇧シリコン製の洗濯物用バスケットと、背高タイプの扇風機を仕舞っておくときの不織布でできたカバー。いずれも100円(正確には108円)。
洗濯物用のシリコンバスケットは底を切り抜いて使用します(「カエシ」の役もするので底は小さめに切り抜いたほうがいいことがあとで判明)。扇風機のカバーの下から3分の2くらいの位置に、ヒモを上の写真のようにセットします。
不織布のネットに、底を抜いたバスケットを、こんな感じにセットします。
⇧水色のヒモは本来は扇風機にカバーを固定するためのもので、ちょうど都合のいい位置に付いていました。
そして、こんな風にして使います。
⇧ずっしりと重いくらい。すでにほとんどのハチが、ネットの底に落ちています。女王様さえしっかり捕獲できれば、少しくらいは取りこぼしが合っても問題ないのだけれど(取りこぼしがあって、その一部が元巣に戻ることで、そのハチが次の分蜂のときも同じ第一集合場所に誘導してくれる、という説もあります)。
捕まえたら、こんな感じでネットをセットします。この時点では、不織布に取り付けた白いヒモは絞ったままの状態で、巣箱を上にセットしてからヒモを緩めて開放します。すると、ハチたちはスルスルと上の巣箱に登っていってくれるのです。
⇩ネットの上に箱をセットし、ネット内でハチの上昇を阻んでいたヒモを解いているところ。
⇧箱の下にネットをセットできたので、真ん中のヒモをほどいてあげます。すると、かなり素直に巣箱に吸い込まれていくのでした。でもスキマがあるとそこから一部のハチが外に出てしまい、中に入れなくなり混乱するのでした。
そんなわけで捕獲器を少し改良。
スキマができないように、巣箱の底のサイズに合わせて、四角い台を作ってみました。
そしてこれがかなりいい感じ。
こんな感じでセットします。
箱を載せるとこんな感じ。
⇧ひっぱるヒモの部分にも赤いテープを貼り、あわてて違うヒモを引っ張ってしまわないように改良。
おかげで、手際よく取り残しも少なく捕まえることができるようになったのです、が、ニホンミツバチの世界はなんとも奥深くて、スピーディーに作業ができればそれでいいのか? というとどうもそういうことでもないようなのです。
蜂球をネットに落としたあと、すぐに巣箱に移動させず、数時間のインターバルを置いてから巣箱に入れたほうがいい、という説もあって、そうしないと移動場所のリセットができず、最初にみんなで決めた移動場所(←これがまた面白いところなのだけれど長くなるのでまた別の機会に)に移動してしまうことが多いとのこと。
このところの成績は、2勝2敗1分け。うまく定住してくれたのが2群で、翌日までに逃げられてしまったのが2群。そして箱に取り込んだにもかかわらず、どうも元いた巣に戻ってしまった(と思われる)群れが1群。
大切なのは蜂球の中に「女王バチがいる」ということと、取り込んだ巣箱を「気に入ってくれる」ということのようでした。
とはいえ、いつ女王が蜂球に加わったのか?を見極めるのは初心者の私には難しく、一斉に飛び立たれては大変! とついつい早めに取り込んでしまうのでした(蜂球の外側の温度で見極めるという方法もあるそうで、次回は赤外線温度計でやってみようと思っています)。
取り込んだ後は、巣門の高さを3.8ミリに調整し、しばらく女王バチを閉じ込めます。この高さだと、働き蜂は出れるけれども、体の大きな女王バチは出れない、のです。ただ、このサイズだと働き蜂よりもサイズの大きなオスバチも巣門を通ることができず、同じオスとしはちょっと可愛そうに思えてしまって(オスが邪魔で働き蜂たちも迷惑そうなので)、ぎりぎりオスバチも通ることのできるサイズに調整したりもしました。
それが失敗だったのか、和蜂なのに巣門の表示を英語で書いてしまったのがいけなかったのか、この群れは翌朝までにいなくなってしまっていました。
⇧顔が真っ黒なのがオスバチ。働き蜂たちは通れるけれども、3.8ミリだと雄は通れないようで、顔だけ出して「出してくれ~」と必死に訴えるのでした。
しかしそれにしても、飼ってみないと分からないことはたくさんあるものです。オスも分蜂する群の中に混ざっていて一緒に出ていくなんて、思いもよりませんでした。どうやって決まるのかなぁ、出ていく人と残る人。
それともうひとつ。雨が降ったり夜露が降りたりすると、木が膨張して巣門の高さが高くなってしまうという話もあって、上下ともに金属でできている調整式巣門も作ってみました。
準備万端、次は良さそう! と思って待ち構えているのですが、そう思える頃には孫分蜂シーズンも終わりに近づいてしまい、課題は来年まで持ち越しになりそうです。
このところは、ヒマさえあればタイムを株分けし、畑や道のアチラコチラに植えています。「やっとハチから抜け出せた」と家族は思っているのかも知れませんが、クリーピングタイムはミツバチにとっての貴重な蜜源植物なのです。
ヒトはハチをうまくつかまえることができないけれど、ハチたちはヒトの心をしっかりとつかまえなかなか放してはくれません。